毒性評価を目的としたナノマテリアル分類システムの構築

文献情報

文献番号
201236025A
報告書区分
総括
研究課題名
毒性評価を目的としたナノマテリアル分類システムの構築
課題番号
H24-化学-若手-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小泉 直也(昭和薬科大学 薬剤学研究室)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、ナノマテリアルの開発と製造および利用が安心して進められるため、ナノマテリアル安全性における分類システムを構築することを目的としており、3カ年の計画でその分類評価項目の選定と妥当性の検討および既存のナノマテリアルを用いた分類システムの評価を行う。初年度においては、粘膜上皮細胞への慢性毒性を反映する評価系を開発し、これまで毒性の有無について報告のあったナノマテリアルを用いて、評価系の妥当性について検討することを目的とした。
研究方法
粘膜組織への慢性毒性能を反映する簡便な評価系を確立するため、in vivoでの組織障害性、およびナノマテリアル毒性評価の基礎研究に汎用されている蛍光ナノシリカを用いた細胞毒性評価系の検討を行った。本検討では、おおくのナノマテリアルを用いた毒性評価を行うことを想定し、より簡便なin vitroでの慢性毒性評価系について基礎的な検討を行った。また、この評価系におけるナノマテリアルの細胞内分布を調べるため、共焦点レーザー顕微鏡を用いてナノマテリアルに標識した蛍光を観察した。
結果と考察
通常の培養細胞を用いた場合、ナノマテリアルを作用させることで濃度依存的な細胞障害性が観察された。この細胞障害性はマテリアル粒子径が300nmとなることで著しく低下したことから、ナノマテリアルにおける急性細胞毒性能を検出可能であると考えられた。また、細胞膜に存在するタンパク質をトリプシン処理にて一部除去した後に、細胞内へナノマテリアルを分布させることで急性細胞毒性を回避することが可能であることを見出した。さらに実験系において70 nmの蛍光シリカ作用により経時的な細胞増殖能の低下が観察され、この細胞増殖抑制効果は300 nmの蛍光ナノシリカに比べ顕著であった。また、この評価系におけるナノマテリアルの細胞内分布を調べたところ、細胞核周辺への集積が観察され、この分布は急性細胞障害を誘導する際とは異なる分布であった。よって、トリプシン処理細胞を用いた本評価法は、経時的な慢性毒性の評価が可能な実験系ではないかと考えた。

結論
初年度においては、上記に示した検討を行いin vivo慢性毒性評価に対応する培養細胞を用いた慢性毒性評価系を構築した。これまでのin vitroナノマテリアル毒性評価系においては、急性毒性を指標としたものが主流であったが、実際にヒトへの毒性として問題となる長期的なナノマテリアル慢性毒性を解析可能な評価系ができたと考え、本評価系を用いてナノシリカ以外のナノマテリアル、特にOECDにおいて日本の関わるナノマテリアルについて順次検討を行う。

公開日・更新日

公開日
2013-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-11
更新日
-

収支報告書

文献番号
201236025Z