化学物質のヒト健康リスク評価における(定量的)構造活性相関およびカテゴリーアプローチの実用化に関する研究

文献情報

文献番号
201236024A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質のヒト健康リスク評価における(定量的)構造活性相関およびカテゴリーアプローチの実用化に関する研究
課題番号
H24-化学-指定-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
研究分担者(所属機関)
  • 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所・総合評価研究室)
  • 小野 敦(国立医薬品食品衛生研究所・総合評価研究室)
  • 山田 雅巳(国立医薬品食品衛生研究所・変異遺伝部)
  • 吉田 緑(国立医薬品食品衛生研究所・病理部)
  • 森田 健(国立医薬品食品衛生研究所・安全情報部)
  • 長谷川隆一((独)医薬品医療機器総合機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
24,783,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
構造活性相関やカテゴリーアプローチの化学物質のヒト健康リスク評価における実用化のため、ヒト健康影響に関するスクリーニング試験であるエームス試験、染色体異常試験、小核試験、反復毒性試験についてレギュレーションへ適用可能な手法の構築および改良を行うとともに、得られた成果を基にしたストラテジーの提案を目的とする。これにより化学物質のヒト健康リスク評価の効率化や動物愛護に貢献する。
研究方法
以下の7つの分担研究に関して、主としてデータベース検索、文献検索、研究機関や大学との委託研究・共同研究を行った。また、データ不足の場合は試験を実際に行いデータギャップを補完した。
①エームス試験データベースの再構築と、TIMESのバリデーションに関する研究
②染色体異常試験における最高濃度低減化に伴う発がん性予測率の推移に関する研究
③代謝を考慮したin vivo遺伝毒性の機序的QSARモデルの開発に関する研究
④In vivo遺伝毒性の知識ベースSARモデルの改良
⑤反復投与毒性を指標にした構造活性相関モデルに関する研究
⑥構造活性相関モデル構築手法の比較と利用に関する研究
⑦類似化合物のカテゴリー化による毒性評価に関する研究
結果と考察
①エームス試験を実施した化学物質約8,000のデータを入力した。そのうち約1,300個については、OECD QSAR toolbox及び、OASIS Database Managerへ移行した。上記1,300個のうち903個の化合物のAmes試験結果を、TIMES-QSARシステムで予測した結果と比較した。②染色体異常試験において、試験最高濃度を10 mMまたは2 mg/mL(従来は5 mg/mL)のいずれか低い方に低減させた場合の発がん性物質予測率に及ぼす影響を、従来濃度および医薬品適用濃度(従来法の10分の1)と比較評価した。これによる偽陽性率の低下は限定的であった。③これまで構築したin vivo小核試験を基に、既存のTIMES反応性モジュールにin vivo代謝シミュレータを組み合わせて、in vivo MNTモデルを開発した。このモデルにin vivo代謝解毒ロジックを導入し予測精度の向上に貢献した。④知識ベースのin vivo 遺伝毒性の予測モデル(DEREK)の開発も行った。1544化合物からなるin vivo小核試験データセットを構築した。in vitro小核試験予測結果は、感度:29.1%、特異性:91.9%であった。⑤肝毒性アラートの修正を行った。本研究により開発されたアラートを含めた肝毒性fullアラートのみによるトレーニングセット化合物群に対する予測精度は、感度:28.6%・特異性:82.7%であった。⑥毒性フェノタイプからの評価モデル構築においては、所見ごとに判別分析による評価モデルを構築して予測精度について検討を行った。その結果、いずれのモデルとも80%以上の評価精度を得る一方で構築した5つ病理所見モデルを組み合わせた肝毒性(病理変化を伴う)評価精度は、内部検証で85.43%を達成した。⑦201農薬のうち145農薬を構造別に26の系に分類した。その結果、4系については共通した毒性プロファイルを見出すことはできなかったが、残る22系では大部分の農薬について構造により共通した毒性が認められた。構造別の農薬の毒性プロファイル解析により、構造別に特徴的な毒性が多くの系で見出されたことから、この構造による分類は化学物質の毒性の予測に資すると期待される。
結論
今後の方向性としては、エームス試験に関しては、予測精度の向上を目指し、世界最大規模のエームス試験データベースの再構築を行う。染色体異常試験については、OECDガイドラインの変更を鑑み、予測モデルを改良し、実用化に貢献する。In vivo遺伝毒性試験に関しては、肝代謝を考慮した新しい毒性発現モデルを構築する。このことは動物愛護にも貢献できる。また、遺伝毒性はヒト健康リスク評価の第一ステップであることから、国民の健康確保の迅速化と、産業育成に大きく貢献することができる。反復毒性については、予測対象の毒性指標を毒性学的な観点から整理してデータベース化し毒性機序の分類を行い、化学構造面の類似性と毒性の類似性について相関解析を行うことで、高精度の予測モデルやカテゴリー評価が可能な候補物質群を構築することで実用化に貢献する。蓄積データについては、OECD等で提案される手法の評価等に再利用可能な既知見情報になり得る。本研究成果をもとにOECDや諸外国との情報交換を行い、最終的に実際の評価過程で、カテゴリーアプローチやQSARを使うための評価ストラテジーを提案し、国際貢献に寄与したい。

公開日・更新日

公開日
2013-06-11
更新日
-

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研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201236024Z