文献情報
文献番号
201236018A
報告書区分
総括
研究課題名
妊娠中の化学物質による、子どもの行動・情動への影響評価に関する臨床的・基礎的・疫学的研究
課題番号
H24-化学-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
成田 正明(三重大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 田代 朋子(青山学院大学 理工学部)
- 定松 美幸(金城学院大学 人間科学部)
- 成田 奈緒子(文教大学 教育学部)
- 横山 和仁(順天堂大学 医学部)
- ソウケ島 茂(三重大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
母親のばく露により引き起こされる情動・認知行動への影響について、これまでの研究代表者のサリドマイドによる自閉症モデル動物で見られた神経伝達物質セロトニンの異常の解析結果が、他の化学物質にも発展応用可能か調べる。最終的なエンドポイントとしては、どの化学物質が、妊娠のどの時期に、どのくらいまでのばく露なら安心かを科学的に確定する。このことで妊婦の魚介類摂取の目安に科学的裏付けを与えることになる。さらにDNAマイクロアレイによる遺伝子発現プロファイルでバイオマーカー確定を目指す。同時にばく露による健康評価法として、近赤外線酸素モニターでの脳機能評価の有効性を当該年度は症例数を増やし臨床現場での運用に持ち込む。当初の3年間で行ってきた疫学調査(毛髪・乳歯からの有害化学物質検出と発達・行動面との関連調査)の解析を進める。
以上により有害化学物質による次世代への影響を把握し、未然に防ぎ、誰にでもできる早期発見法を確立することで、厚生労働行政に資することを目的とする。
以上により有害化学物質による次世代への影響を把握し、未然に防ぎ、誰にでもできる早期発見法を確立することで、厚生労働行政に資することを目的とする。
研究方法
①ヒトでの化学物質の事象(サリドマイドによる自閉症)を動物で再現したモデル動物をはじめその他(予防接種中に防腐剤として含まれるチメロサール(有機水銀))の化学物質ばく露動物の解析、②化学物質ばく露の有無の診断のためのバイオマーカー確定(発現遺伝子網羅的解析)、③ヒトでの生後の情動・認知行動異常の評価のための臨床的診断法の確立(近赤外線酸素モニターを用いて)、④疫学的検討、即ち有害化学物質と情動・認知行動の異常との関連、を研究協力者から検体収集、調査質問票回収。
結果と考察
化学物質ばく露モデル動物(=上述の自閉症モデルラット=情動認知行動異常を伴う)での、セロトニン系(=情動に深く関連する神経)の異常のほか、他の脳内物質(ドーパミン)の異常も確認した。現在ノルアドレナリン系の異常の有無を確認中である。このセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンは行動異常を抑制する薬剤の標的でもあり病態解明に直結することが期待される。また、昨年度に引き続き有機水銀にも着目、その妊娠中の投与で児にセロトニン神経の異常が生じることを見出した。並行して化学物質ホルムアルデヒドと健康との関連の研究にも着手した。それらの成果は次のような形で国民に公表した。
・“Brain and Development” 誌(日本小児神経学会機関誌)での論文発表、日本解剖学会シンポジウム
・クジラやイルカは有機水銀含有量が他の魚より多いが、それらの食習慣のある和歌山県太地町における有機水銀摂取の影響、とくに妊婦や子どもに対する影響について、マスコミより意見を求められ誌上でわかりやすく解説した(2012年6月1日読売新聞)。
・国民への分かりやすい活動として、NHKテレビ “視点論点”「妊娠中の化学物質と子どもの発達」(2011年8月21日放映)に出演。
さらに「妊娠中の環境放射線と子どもの発達」(2011年6月23日放映)、「化学物質ホルムアルデヒドと健康」(2012年6月15日放映)という内容でも“視点論点”に出演した。
臨床研究では、発達障害児では、事前の教示がないほど、また事前の練習があるほど、難易度の高いタスクに呼応した前頭前野機能の賦活が見られやすいことが明らかになった。
研究分担者の田代朋子は神経化学者として、動物の神経系に特徴的な遺伝子の発現態様を網羅的、効率的に解析する手法(シナプトアレイ)を確立し、1期目の3年間の研究でばく露のバイオマーカー候補となる遺伝子の絞り込みを行った。
これまでの3年間で、生体試料として全国の研究協力者から乳歯・毛髪を提供して頂き、鉛・カドミュウムなどの重金属・有害物質の測定を行うとともに、詳細な発達歴と突き合わす全国大規模疫学調査計画を行ってきた。今年度の検討では毛髪中の微量元素濃度について、発達障害スコアが高い児に特定の微量元素が低値となる傾向がみられ、その元素種には男女差がみられることがわかった。
・“Brain and Development” 誌(日本小児神経学会機関誌)での論文発表、日本解剖学会シンポジウム
・クジラやイルカは有機水銀含有量が他の魚より多いが、それらの食習慣のある和歌山県太地町における有機水銀摂取の影響、とくに妊婦や子どもに対する影響について、マスコミより意見を求められ誌上でわかりやすく解説した(2012年6月1日読売新聞)。
・国民への分かりやすい活動として、NHKテレビ “視点論点”「妊娠中の化学物質と子どもの発達」(2011年8月21日放映)に出演。
さらに「妊娠中の環境放射線と子どもの発達」(2011年6月23日放映)、「化学物質ホルムアルデヒドと健康」(2012年6月15日放映)という内容でも“視点論点”に出演した。
臨床研究では、発達障害児では、事前の教示がないほど、また事前の練習があるほど、難易度の高いタスクに呼応した前頭前野機能の賦活が見られやすいことが明らかになった。
研究分担者の田代朋子は神経化学者として、動物の神経系に特徴的な遺伝子の発現態様を網羅的、効率的に解析する手法(シナプトアレイ)を確立し、1期目の3年間の研究でばく露のバイオマーカー候補となる遺伝子の絞り込みを行った。
これまでの3年間で、生体試料として全国の研究協力者から乳歯・毛髪を提供して頂き、鉛・カドミュウムなどの重金属・有害物質の測定を行うとともに、詳細な発達歴と突き合わす全国大規模疫学調査計画を行ってきた。今年度の検討では毛髪中の微量元素濃度について、発達障害スコアが高い児に特定の微量元素が低値となる傾向がみられ、その元素種には男女差がみられることがわかった。
結論
化学物質ばく露モデル動物の解析では、胎生期有機水銀ばく露ラットでセロトニン初期発生異常を認めた。サリドマイドやバルプロ酸投与と共通する所見ともいえるが、合同の所見ともいえない。ばく露モデル動物における発現遺伝子網羅的検索では、発現上昇、発現低下している遺伝子群が確認され、病態解明・診断への応用を目指す。ヒトで、近赤外線酸素モニターを用いれば、情動・認知行動の異常(アスペルガー症候群など発達障害)を鑑別しうる。有害化学物質の生体中蓄積と情動認知行動異常との関連を、研究協力者からの.抜けた乳歯・毛髪提供により、全国規模での調査で、関連の有無を調べてきたが、最終的な結論を出すにはより多くのサンプル数の確保が望まれる。
公開日・更新日
公開日
2013-05-24
更新日
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