ナノマテリアルのin vitro評価系構築に向けた基礎研究

文献情報

文献番号
201236014A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノマテリアルのin vitro評価系構築に向けた基礎研究
課題番号
H23-化学-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
伊佐間 和郎(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 吉田 緑(国立医薬品食品衛生研究 安全性生物試験研究センター病理部)
  • 宮島 敦子(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部)
  • 花方 信孝(物質・材料研究機構 ナノテクノロジー融合ステーション)
  • 河上 強志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 戸塚 ゆ加里(国立がん研究センター 国立がん研究センター研究所)
  • 中江 大(東京都健康安全研究センター 薬事環境科学部)
  • 渡邉 昌俊(横浜国立大学 大学院工学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
17,187,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 単純化された培養細胞系において、十分にキャラクタリゼーションされたナノマテリアルによる細胞応答を捉え、ナノマテリアルの化学組成、サイズ、物性等が細胞応答に及ぼす影響を解明することを目的とする。
研究方法
 金属酸化物等を対象に、細胞に暴露するナノマテリアルの物理化学的特徴を把握し、細胞内動態を明らかにした上で、細胞毒性・遺伝毒性発現メカニズム、バイオインフォマティクスによる遺伝子発現及び共存化学物質との相互作用による細胞機能影響をそれぞれ解析する。さらに、有用ナノマテリアルの遺伝毒性を低減化する物理的及び化学的な手法を検討する。
結果と考察
(1)Tween80及び遊星ボールミル型粉砕機を用いて、NiOやCuO等では超音波破砕機よりも二次粒子径の小さい懸濁液が作成できた。NiOでは異なる径のジルコニアボールを用いて二次粒子径の異なる懸濁液が作成できた。懸濁液中の各金属イオン濃度を測定した。(2)電子顕微鏡による細胞内動態解析において、細胞障害性を有するが可能な限り低い曝露量が望ましく、細胞形態を壊さないために掻き取りによる細胞採取が必要であることが確認できた。(3)A549細胞を用いた小核試験において、明らかな遺伝毒性が観察されたのは酸化亜鉛のみであった。物理化学的性質の異なる酸化亜鉛において、遺伝毒性強度と細胞毒性強度には関連がなかった。(4)酸化亜鉛ナノ粒子(ZnO NPs)のヒト肺上皮細胞への毒性は、細胞死の誘導よりも細胞増殖を抑制するものであった。ZnO NPsの毒性はカルシウムにより低減され、それは細胞周期の進行を回復させるためであった。(5)TiO2ナノ粒子共存下で金属塩8種類の細胞毒性は変化しなかったが、SiO2ナノ粒子共存下でAlCl3、CuCl及びCuCl2の細胞毒性は増強した。SiO2ナノ粒子共存下でCuCl及びCuCl2を曝露すると、V79細胞内への銅の取り込み量は増加した。(6)産地の異なるカオリンのROS産生量を比較したところ、RAW264.7ではkaolin-UによるROS産生細胞数がkaolin-Kに比べ約3倍多かったが、A549ではどちらも低かった。A549のROS産生及びDNA損傷性は、RAW264.7供培養下で増強された。(7)マグネタイトの肺発がんイニシエータ活性の有無と背景機構を明らかにするため、ラット2段階肺発がんモデルを用いた検索を行った結果、マグネタイトは明らかな発がんイニシエータ活性を発揮しなかった。(8)非修飾磁性体ナノ粒子に比べ、カルボキシル基修飾磁性体ナノ粒子は、細胞内取込みが落ち、ROS産生及び8-OHdG生成量が減少することを明らかにした。
結論
 二次粒子径の異なる金属酸化物ナノ粒子懸濁液を作成した。さらに、懸濁液中の各金属イオン濃度を測定した。電子顕微鏡による細胞内動態解析において、最適な曝露量、細胞固定方法、細胞採取方法を検索した。小核試験で明らかな遺伝毒性が観察されたのは酸化亜鉛のみであった。物理化学的性質の異なる酸化亜鉛において、遺伝毒性強度と細胞毒性強度には関連がなかった。酸化亜鉛ナノ粒子のヒト肺上皮細胞への毒性は、細胞死の誘導よりも細胞増殖を抑制するものであり、その毒性はカルシウムにより低減された。SiO2ナノ粒子は、共存する一部の金属塩化物の細胞内取り込み量を増加させることによって、細胞毒性を増強させた。RAW264.7ではkaolin-UによるROS産生細胞数がkaolin-Kに比べ約3倍多く、A549のROS産生及びDNA損傷性はRAW264.7供培養下で増強された。マグネタイトは明らかな発がんイニシエータ活性を発揮しなかった。カルボキシル基修飾磁性体ナノ粒子は、細胞内取込みが落ち、ROS産生及び8-OHdG生成量が減少した。平成243年度の目標は概ね達成した。

公開日・更新日

公開日
2013-05-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201236014Z