医薬品が関連した事故・インシデント事例の収集・分析システムの開発に関する研究

文献情報

文献番号
201235066A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品が関連した事故・インシデント事例の収集・分析システムの開発に関する研究
課題番号
H24-医薬-指定-033
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
土屋 文人(国際医療福祉大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 澤田 康文(東京大学大学院薬学研究科)
  • 木村 昌臣(芝浦工業大学工学部情報工学科データ工学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国における薬局ヒヤリ・ハット事例報告システムは平成21年4月から開始され、3年を経過しているにも拘わらず、登録薬局数は当初目標を大きく下回っている。医療機関においてはこの報告制度が平成16年から開始されており、しっかり定着しているのに比して、薬局は平成19年の改正医療法により、医療提供施設に位置づけられ、薬事法の中で医療機関と同様の安全の仕組みが法的に取り入れられたという経緯もあり、医療安全文化が完全には定着していないのが現状と思われる。
しかしながら、医薬分業率が60%を超え、完全に定着したことから、薬局の果たす役割は大きく増加しており、安全文化の徹底した浸透が求められているところである。
そこで、本研究においては薬局ヒヤリ・ハット制度を進展させる方策として、薬局側の要因、データベースの構造に関する要因、報告制度に関わる要因について分析を行い、多くの薬局が参加かつ容易に報告ができるようなシステム構築を行う。
研究方法
研究においては、①薬局側の要因、②データベースの構造に関する要因、③報告制度に関わる要因に分けて検討を行う。①日本薬剤師会DI委員会により、都道府県薬剤師会の情報センターのDI担当者と医療安全関係担当者を対象としたワークショップ「なぜ薬局ヒヤリ・ハット事例報告システムは進展しないのか」を開催し、ヒヤリ・ハット事例収集・解析・提供事業の現状と問題点を把握し、その解決策を探るとともに、ヒヤリ・ハット報告に必要な環境整備と報告システムに求められる機能について考察した。②過去報告された調剤に関するヒヤリ・ハット事例を対象として、その内容を解析した。要因の約8割を占める「確認不足」に対して、自由記載部分とを比較して、確認不足の背景を検討した。③ヒヤリ・ハット事例報告書(平成21年~23年の年報及び第7回、第8回の報告書)を対象に、統計的要素の部分の変化を調査し、また、背景を探るための項目の必要性等の検討を行った。
結果と考察
ワークショップでは、いずれの班においてもヒヤリ・ハット事例収集事業に対する薬剤師の意識や関心の低さが最優先課題として抽出された。また、マンパワーに起因する問題、またヒヤリ・ハット事例報告に対する心理的抵抗も要因としてあげられた。また、システムによる入力が煩雑であることなど、システムの改善も必要であることが示された。これらを解決するためには、職能団体等が会員に対して啓発活動を初めとして積極的に取り組未、安全文化を築いていくことが重要と思われる。
データベース解析では、項目と構造を変更することにより、「確認不足」に分類されているものの背景を顕在化できることがわかった。これに従い、調剤関係部分のデータベース構築を試作した。年報等からの調査では、登録薬局数は増加しているものの、実際報告を行っている薬局数はそれ程多くなく、最近では減少傾向にあった。また、薬局ヒヤリ・ハット事例報告システムは医療機関を対象とした報告制度と共通項目を有しているが、薬局は医療機関とは異なり24時間365日対応ではないことから、営業時間や営業日、あるいは規模や採用薬というような項目については、回答させてもあまり意義が感じられず、一方でこれらの回答を入力することは、ヒヤリ・ハット事例報告が煩雑であるとの印象を増すと思われることから、薬局の背景調査に関する項目は思い切って整理を行い、軽量化をすることも重要ではないかと思われる。
結論
薬局ヒヤリ・ハット事例収集システムは、医薬品のヒヤリ・ハット事例の内容に限定してシステム構築を行うことが必要と思われる。また、入力装置についても、パソコンによる入力のみならず、iPad等のタブレット端末による入力を行う等の利便性についても考慮すべきと思われる。
 報告を行う薬局が少ない事実も、日本薬剤師会等で繰り返し参加登録をするように勧奨した副作用であるかもしれない。しかしながら、報告を義務づけられている医療機関においても、報告件数がゼロあるいは一桁ということが少なからず発生していることから、このことをもって非難を行うことは妥当ではないと思われる。
 後発品使用推進の施策により、処方せん記載方法をはじめとして、2年毎にルールが変更になってしまう事実は、この種のデータベース運用において厳しい条件になる。このように頻繁に制度変化が行われる場合には、柔軟な構造を持ったデータベース構築が必要である。

公開日・更新日

公開日
2013-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201235066Z