ウイルス等感染性因子安全性評価に関する研究

文献情報

文献番号
201235060A
報告書区分
総括
研究課題名
ウイルス等感染性因子安全性評価に関する研究
課題番号
H24-医薬-指定-029
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
川崎 ナナ(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
研究分担者(所属機関)
  • 遊佐 敬介(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 新見 伸吾(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 橋井 則貴(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 前田 洋助(熊本大学 生命科学研究部)
  • 清水 則夫(東京医科歯科大学 難治疾患研究所)
  • 山口 照英(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 生田 和良(大阪大学 微生物病研究所)
  • 萩原 克郎(酪農学園大学 獣医学群)
  • 菊池 裕(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
有効な治療法がない疾患などを対象として,細胞組織加工医薬品や新規なバイオ医薬品などの開発・臨床研究が進められている.研究成果の早期実用化に向けて,ウイルス等感染性因子の安全性確保は最優先課題である.ウイルス等による感染が,国民の健康を著しく損ねる危険性があることは周知の事実であるが,ウイルス等の特性が十分に解明されていないこと,現在の科学水準では検出に限界があることを理由に,ウイルス等感染性因子を一律厳格に規制することは,国民が新たな治療の機会を失うことにもつながる.ウイルス等感染性因子安全性は,感染リスクの特定,分析,評価,対応,管理,コミュニケーションを適切に実施することにより共有される. 本研究は,細胞組織加工製品及びバイオ医薬品の開発,治験,承認申請・審査,適正使用の環境整備に向けて,(1) 細胞組織加工製品ウイルス安全性評価研究,(2) バイオ医薬品ウイルス安全性評価研究,及び(3) プリオン安全性評価研究を実施するものである.
研究方法
(1)では,細胞組織加工製品におけるウイルス感染リスク要因の抽出,感染性リスク分析及びリスク評価を実施し,リスク評価結果を考慮した対応法策を例示する.また,医師・薬剤師・患者間のリスクコミュニケーションのあり方について提言する.(2)では,これまでに蓄積された知識・データ・技術を基に,製薬業界等とともにウイルスクリアランス ケーススタディを実施し,推奨されるモデルウイルスとその組み合わせの提示,ウイルスクリアランス目標値の考察,及びスケール変更時の外挿性妥当性評価とウイルスクリアランス試験手順の作成を行う. (3)では,国際動向調査,及びin vivo, in vitro高感度異常プリオン検出法の開発を行い,調査結果及び高感度検出法により得られたデータに基づき,現在の異常プリオン評価基準を科学的見地から検証する.
結果と考察
(1)細胞組織加工製品のウイルス安全性評価研究
ウイルス感染に関連する文献,PMDA等安全性情報・国内外の指針等を参考として,リスク要因をウイルス,患者,ドナー等原材料,工程及び製品特性ごとに考察した.高リスクに位置づけられているHBV, HCV, HIV, HTLV以外に感染可能性のあるウイルスをリスト化した.また,患者側の要因として免疫抑制剤の使用に着目し,感染した場合の重篤度,感染頻度,感染の不確かさを調査した.また,リスク分析・評価に向けた臨床検体からのデータ収集,ウイルス汚染が起きた場合に想定されるウイルスの非宿主細胞への馴化の基礎的な解析,及びウイルス受容体のプロテオミクスの実施に向けた高感度分析条件の設定,並びにリスク対応策としての網羅的ウイルス検出方法の開発を行った.
(2)バイオ医薬品のウイルス安全性評価研究
バイオ医薬品のウイルスクリアランスの評価に用いるモデルとしては,X-MuLVとMVMを基本とすること,さらに,ゲノムの型,エンベロープの有無,サイズを考慮して第3のウイルスを選択し,これらを組み合わせることが妥当であることを明らかにした.また,抗体医薬品の精製プラットホームにおいて推奨されるLRVの具体的な目安を考察した.さらに,バイオ医薬品の培養工程におけるウイルス汚染の実例を基に,具体的な対処について明らかにした.
(3)プリオン安全性評価研究
現在のリスク評価基準を科学的根拠に基づいて見直すため,ヒトプリオンタンパク質を高発現している培養細胞等を用いた『高感度異常プリオン検出法』の開発を行った.この細胞に異常プリオンを感染させ,in vitroで増幅させたプリオンが,異常プリオンとしてマウスへの感染性を有していることを確認した.また,異常プリオンのリスク評価に関する海外の情報や文献等を調査した.
結論
細胞組織加工製品のウイルス安全性に関して,感染可能性のあるウイルスリストの作成,その他リスク要因の抽出,並行して,NAT,ウイルス濃縮と質量分析法,DNAチップやSISPA等を用いたリスク評価及び対応方策の例示のためのデータ取得及び手法開発を行った.バイオ医薬品のウイルス安全性確保のためのリスク対応として,ウイルスクリアランス試験の具体化に向けたモデルウイルスと除去/不活化率目標値の提案,及び事例を参考とした対応策の考察を行った.プリオン安全性研究においては,過去のリスク評価結果の検証に向けた国際的動向調査,及び再リスク分析を行うためのヒト細胞や抗体を用いた高感度試験法の開発,並びにリスク対応策の一つとしてプリオン除去膜の開発を行った.これらの結果は相互に役立つものであり,最終年度のリスクマネジメントプロセスの例示に向けて,今後も計画通りに研究を進める予定である.

公開日・更新日

公開日
2013-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-11
更新日
-

収支報告書

文献番号
201235060Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
25,000,000円
(2)補助金確定額
25,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 19,453,568円
人件費・謝金 5,156,737円
旅費 179,510円
その他 212,020円
間接経費 0円
合計 25,001,835円

備考

備考
預金利息1,835円

公開日・更新日

公開日
2015-06-24
更新日
-