小児がんの臨床評価に関する研究

文献情報

文献番号
201235056A
報告書区分
総括
研究課題名
小児がんの臨床評価に関する研究
課題番号
H24-医薬-指定-025
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
菊地 陽(帝京大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 富澤 大輔(東京医科歯科大学 医学部)
  • 小川 淳(新潟県立がんセンター 小児科)
  • 米田 光宏(大阪府立母子保健総合医療センター 小児外科)
  • 小川 千登世(福島県立医科大学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
1,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児がんは稀少疾患であるが、5~14歳の病死の原因の第一位であり、継続的な治療開発と新規薬剤の導入が必要かつ有効な疾患である。本研究は、小児がんに対する適切な抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法を記載したガイドラインを作成することで、小児がん用の医薬品の薬事承認への道筋を明らかにし、ガイドラインに沿った臨床試験の実施によって、小児がん分野で使用できる薬剤を増やし、小児がん患者の予後及び生活の質の改善に寄与することを目的とする。

研究方法
ガイドラインの作成の基礎資料の収集を行う。
1)我が国の薬事行政と臨床試験の現状についてレビューし、小児がんの新薬開発が進まない原因について検討する。
2)海外における小児がん用薬剤の開発と薬事行政の仕組みを調査する。
3)小児がん治療に必要であるが、日本で承認のない薬剤について、海外での開発状況を調査する。
4)既存の「抗悪性腫瘍薬の臨床評価に関するガイドライン」、「小児集団における医薬品の臨床試験に関するガイダンス(ICH-E11)」の内容を検討し、ガイドラインに盛り込むべき内容を議論する。
結果と考察
小児がんの新薬開発は稀少疾患であるがゆえに本邦では非常に遅れている。日本には新薬開発のための手段が製薬会社の治験・医師主導治験・公知申請の枠組みしかないことが主な要因であり、自主臨床試験を先進医療として実施し、薬事承認につなげたいという医療者側の希望も強いが、審査資料は治験データのみとする規制当局の方針から、この研究班では現行制度下での新薬開発の促進を目指すこととなった。この目標達成のため、小児がんに対する抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法を記載したガイドラインを作成し、製薬企業に対しても自ら治験を実施する医師に対しても、小児がん用の医薬品の薬事承認への道筋を明らかにすることによって治験推進を図るという方向性が共有された。海外に目を向けると、米国においては、国家(国立がん研究所:NCI)の主導で新薬のシーズを開発し、それを用いて研究者グループ(小児腫瘍学グループ:COG)が第I相試験、第II相試験を数多く実施しており、その中で一定の有効性を示すものは治療オプションとして実地診療に用いられると共に、特に有望なものについては薬事承認につながっている。一方、欧州においては規制当局(欧州医薬品庁:EMA)の管理の下、新薬の治験申請時、小児に使用される可能性がある薬剤については、予め小児の開発を含めて計画した上で治験が実施されなければならない(Pediatric Investigation Plan: PIP)などの制度が整備されており、小児がんに対する新薬開発の推進力になっている。このような欧米2つのモデルの導入可能性については、本班研究の範囲を超えるものであるが、議論としては継続していくこととなった。小児がん治療に必要であるが、日本で承認のない薬剤について、海外での開発状況の調査はクロファラビン・ソラフェニブ・ビノレルビンについて分担研究者が行った。我が国では今までに抗悪性腫瘍薬の新規開発に関連して「抗悪性腫瘍薬の臨床評価に関するガイドライン」が提示され、小児に対する医薬品の新規開発に関連して「小児集団における医薬品の臨床試験に関するガイダンス」が提示されているが、各疾患が稀少で生命に重大な影響を及ぼす小児がんの臨床評価を行うための手順としては不十分であり、小児がんに特化した薬物開発の手順およびその指針の整備が必要である。我が国の薬事承認制度に即し、かつ実地診療に必要な薬剤をいち早く届けるためには、海外臨床試験結果等のエビデンスの質と量に応じて、我が国で必要な臨床試験のサンプルサイズや試験デザイン(小児固形腫瘍という一括りを対象として早期開発の臨床試験を考える可能性など)を定め、臨床試験の結果解釈の方法も含めて一定のガイドライン案を作成することが必要であると考えられた。

結論
我が国の現行制度下において、製薬企業に対しても自ら治験を実施する医師に対しても、小児がん用の医薬品の薬事承認への道筋を明らかにし、治験を推進する目的で、小児がんに対する医薬品の臨床評価方法を記載したガイドラインの作成について検討した。次年度以降も調査や研究を継続し、ガイドラインの完成を目指す。

公開日・更新日

公開日
2013-05-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201235056Z