文献情報
文献番号
201235055A
報告書区分
総括
研究課題名
医師主導治験等の運用に関する研究
課題番号
H24-医薬-指定-024
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 裕司(浜松医科大学 医学部臨床薬理学)
研究分担者(所属機関)
- 景山 茂(東京慈恵会医科大学 薬物治療学)
- 楠岡 英雄((独)国立病院機構 大阪医療センター)
- 藤原 康弘((独)国立がん研究センター 中央病院)
- 小野 俊介(東京大学大学院 薬学系研究科)
- 斉藤 和幸((独)医薬品医療機器総合機構 一般薬等審査部)
- 成川 衛(北里大学大学院 薬学研究科)
- 伊藤 達也(京都大学医学部附属病院 探索医療センター)
- 笠井 宏委(京都大学医学部附属病院 探索医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
3,170,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、被験者の安全性を保護し、データの信頼性を確保しながら、医師主導治験等を我が国で活性化させることを目的とし、医師主導治験等が停滞する要因を抽出し、その問題を解決するためにGCP運用上可能な対策を提案する。国内および海外の医薬品開発や臨床試験の状況を分析し、今後、日本で求められる医師主導治験のあり方を検討するとともに、医師主導治験等の効率化の手段である、治験関連業務のIT化やリスクに基づくSDV等、あるいは共同IRBの活用などについて具体的な対応策を提示する。
研究方法
本研究では、下記の課題について、検討会を通じて、問題を抽出し、最終的には、法令・ガイドラインやその注釈に基づき、コンセンサスメソッドにより対応策を提案した。
なお、一部の課題については、早期・探索的臨床試験拠点、臨床研究中核病院などを対象としたアンケート調査を実施した。また海外の医療施設への実態調査も実施している。
1) 医師主導治験の制度に関する研究:医師主導治験と先進医療の使い分けに焦点を当てて
2) 日本及び世界の臨床試験の実施状況、及び承認申請での活用状況に関する調査研究
3) 治験関連文書における電磁的記録の活用について
4) リスクに基づくSDV等のあり方に関する調査研究
5) 治験における臨床検査等精度管理のあり方に関する研究
6) 共同IRBのあり方に関する研究
7) ヒト初回投与試験の説明、同意取得に関する研究
なお、一部の課題については、早期・探索的臨床試験拠点、臨床研究中核病院などを対象としたアンケート調査を実施した。また海外の医療施設への実態調査も実施している。
1) 医師主導治験の制度に関する研究:医師主導治験と先進医療の使い分けに焦点を当てて
2) 日本及び世界の臨床試験の実施状況、及び承認申請での活用状況に関する調査研究
3) 治験関連文書における電磁的記録の活用について
4) リスクに基づくSDV等のあり方に関する調査研究
5) 治験における臨床検査等精度管理のあり方に関する研究
6) 共同IRBのあり方に関する研究
7) ヒト初回投与試験の説明、同意取得に関する研究
結果と考察
本研究成果の一部は、平成24年12月28日発出された「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」のガイダンスに盛り込まれ、総括報告書は厚生労働省のホームページに掲載され情報提供がなされている。また、治験業務における電磁的記録の活用、リスクに基づくSDV、治験における臨床検査等精度管理、に関した本研究成果は、厚生労働省よりその基本的考え方が発出される予定である。
医師主導治験の実施には、膨大な業務量が要求される。適応外医薬品や、海外既承認かつ国内未承認の一部の医薬品の臨床試験については、先進医療Bなど他の制度を活用し、医師主導治験では、希少疾病用治療薬の臨床開発や、 アカデミアで発見・開発されたシーズを臨床に供するためのトランスレーショナルリサーチ等に注力して、限られたリソースを最大限効率的に活用するべきと思われる。
一方、治験実施場所としての日本の役割は欧米のそれに比して相対的に小さくなりつつあること、日本の企業・研究所で創出されたシーズが減少しつつあること、加えて欧米で開発されたシーズが国際共同開発戦略の一環として日本で臨床開発され、その結果として国際共同治験数が年々増加しているといった研究結果が持つ意味は深刻である。どのように日本での治験環境が整備されたとしても、肝心のシーズが枯渇してしまえば、その意義は失われてしまう。日本発の新薬候補創出をどのように増やしていくかには、日本の研究開発投資のあり方、研究開発税制のあり方、教育・研究制度の改革といった多方面の政策アプローチが必要である。
また、このような状況でこそ、アカデミア発のシーズ探索と、それを臨床の場へトランスレーションする早期探索的な医師主導治験の役割は重要となる。本研究課題となった、治験関連文書における電磁的記録の活用やリスクに基づくSDV、あるいは共同IRBの活用を推進することで効率化が進み、医師主導治験の負担が軽減されることが期待される。
さらに医師主導治験を活発化させるためには、このような効率的なシステムの構築とともに治験に関わる医師をはじめとした人材教育が必要となる。欧米では臨床研究を通じてエビデンスを構築し、新たな医療を創っていくことが医療者の責務であるという意識が浸透している。医薬品臨床開発の質を向上させるためには、今後この分野の医師の卒前・卒後教育が必須の課題となろう。
医師主導治験の実施には、膨大な業務量が要求される。適応外医薬品や、海外既承認かつ国内未承認の一部の医薬品の臨床試験については、先進医療Bなど他の制度を活用し、医師主導治験では、希少疾病用治療薬の臨床開発や、 アカデミアで発見・開発されたシーズを臨床に供するためのトランスレーショナルリサーチ等に注力して、限られたリソースを最大限効率的に活用するべきと思われる。
一方、治験実施場所としての日本の役割は欧米のそれに比して相対的に小さくなりつつあること、日本の企業・研究所で創出されたシーズが減少しつつあること、加えて欧米で開発されたシーズが国際共同開発戦略の一環として日本で臨床開発され、その結果として国際共同治験数が年々増加しているといった研究結果が持つ意味は深刻である。どのように日本での治験環境が整備されたとしても、肝心のシーズが枯渇してしまえば、その意義は失われてしまう。日本発の新薬候補創出をどのように増やしていくかには、日本の研究開発投資のあり方、研究開発税制のあり方、教育・研究制度の改革といった多方面の政策アプローチが必要である。
また、このような状況でこそ、アカデミア発のシーズ探索と、それを臨床の場へトランスレーションする早期探索的な医師主導治験の役割は重要となる。本研究課題となった、治験関連文書における電磁的記録の活用やリスクに基づくSDV、あるいは共同IRBの活用を推進することで効率化が進み、医師主導治験の負担が軽減されることが期待される。
さらに医師主導治験を活発化させるためには、このような効率的なシステムの構築とともに治験に関わる医師をはじめとした人材教育が必要となる。欧米では臨床研究を通じてエビデンスを構築し、新たな医療を創っていくことが医療者の責務であるという意識が浸透している。医薬品臨床開発の質を向上させるためには、今後この分野の医師の卒前・卒後教育が必須の課題となろう。
結論
本研究成果は、医師主導治験のみならず企業型治験の効率化にも大きく資するものである。今後、我が国における医師主導治験等の環境がさらに整備され、その実施数が増加することによって、アカデミア発のシーズの国外流出の抑制、企業への円滑なデータ移行が促進され、国際競争力を持つ医薬品産業が我が国に保持されること、最新かつ質の高い医療を患者に提供する体制が確保されることが期待される。
公開日・更新日
公開日
2013-06-14
更新日
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