国際的整合性を踏まえた医薬品情報・安全性情報の交換に関する研究

文献情報

文献番号
201235047A
報告書区分
総括
研究課題名
国際的整合性を踏まえた医薬品情報・安全性情報の交換に関する研究
課題番号
H24-医薬-指定-016
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 美保子(川崎医療福祉大学医療福祉マネジメント学部医療情報学科)
研究分担者(所属機関)
  • 小出 大介(東京大学医学部附属病院)
  • 佐井 君江(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,720,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品安全性報告に関する国際的ガイドラインとして、ICH E2B「個別症例安全性報告(Individual Case Safety Reports: ICSR)」がある。国内では2003年10月からICH準拠の医薬品電子副作用報告(企業報告)が実施されている。また2003年より「医薬品辞書のためのデータ項目及び基準」(ICH M5)の検討がなされいる。一方、ICHではE2BおよびM5を対象として、電子仕様の開発を標準開発団体(SDO)に委ね、SDO規格に基づいてICH実装ガイド(Implementation Guide: IG)を策定するプロジェクトが進められている。本研究は、こうした状況を踏まえて医薬品情報・安全性情報の交換に関する国際標準の国内導入に向けての課題を整理し、円滑な導入を支援することを目的として3年計画で実施する。平成24年度は、ICSRについてはICH IGのStep 4に向けての課題を検討し、欧米における実装に向けての独自要件を調査した。医薬品辞書に関してはICH M5の活動状況を調査し、国内導入を円滑に進める上での課題を明らかにしながら、今後の取り組むべき検討事項を整理した。またICH SDOプロセスの状況を調査した。
研究方法
 ICH福岡会合(2013年6月2日~6月7日)、サンディエゴ会合(2013年11月10日~15日)、および国際電話会議に出席し、資料を収集するとともに、討議へ参加した。ICSRについては、ICH E2B(R3) IGの構成およびメンテナンス、HL7 Common Product Model (CPM)のバージョン、HL7およびISOのコピーライトの検討等を行った。またE2B(R3)のメンバーにてブレイン・ストーミングの方法でSDOプロセスについて利点と課題をまとめた。さらに欧州、米国の研究者から情報提供を受けて欧州・米国におけるICSRの仕様に関わる独自要件を調査した。医薬品辞書については、国際会議におけるM5の議論を調査し、M5の国内導入における課題を整理した。またSDOプロセス全般に関わる活動を整理した。
結果と考察
 ICH ICSR IGは2012年11月最終的なStep 4に到達した。CPMについてリリース1.1とリリース2のいずれを用いるか検討した結果、ISO/HL7 ICSRで用いられている1.1を用いることとした。SDOプロジェクトについては国際的要件に適う規格が開発された一方、進捗管理、技術面、人的・時間的リソースの増加などの課題がみられた。欧州および米国の仕様に関して調査した結果、それぞれ独自の地域要件がみられた。
 M5については2012年11月、ISOで5つの辞書規格(IDMP)が制定された。ICH IG草案についてレビューがなされたが、全般的な未完成度が指摘された。伝送モデルとしてHL7/SPLが提案され、各リージョンでαテスト(紙面上での確認)を行った結果、MPIDとPhPIDについてはHL7/SPLの使用の可能性があることが確認された。その他については検証は未完了である。メンテナンスに関しては、米国、欧州の既存の組織やシステムの利用を中心に検討された。国内導入にかかるコストは国内で附番が必要なMPIDメンテナンスに係る費用と他の4つの辞書をメンテナンスするための費用となることが明確となった。各辞書の利活用法などもあわせて検討し、コスト/ベネフィットのバランスも考察する必要があるものと考える。
 ICH IGのメンテナンスは、改訂に関わる要素・要因が多様であり組織立てを含めメンテナンスをいかにマネジメントしていくかが大きな課題となっている。
結論
 ICH E2B(R3) IGのCPMリリースバージョンは1.1となった。欧米のICSR仕様の独自要件については、欧州でコードがコンフリクトしている点は実装前に解決を図る必要があると示唆された。米国はワクチンによる安全性情報を如何に盛り込むかという点のみが明らかとされた。M5の導入は国際的な医薬品情報交換、ファーマコビジランス推進に有用な役割を果たすものとの期待から日本でも検討してきたが、SDOプロセスの導入に伴い、内容の複雑化や活動主旨に対する各極の考え方の違いなどが生じている。M5の活動自体が見直されることとなったが、今後も情報収集を続け、国際的な医薬品情報の交換や安全対策への応用が可能となるシステムについて、検討を継続していく予定である。ICH SDOプロセスに関しては経験・知見が蓄積され、ベストプラクティスとして整理されつつある。SDO規格に基づいたICH IGの各地域における継続的運用を維持する上で、メンテナンスの精緻な検討が必要不可欠である。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201235047Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,720,000円
(2)補助金確定額
4,720,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,444,851円
人件費・謝金 936,270円
旅費 1,355,930円
その他 3,990円
間接経費 0円
合計 4,741,041円

備考

備考
当初の計画通りに支出を行ったが、消耗品費が少々増加したため不足分は自機関研究費より20977円自己資金より64円を補填した。

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
-