医薬部外品・化粧品に含有される成分の安全性確保に関する研究

文献情報

文献番号
201235045A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬部外品・化粧品に含有される成分の安全性確保に関する研究
課題番号
H24-医薬-指定-014
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
手島 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 代謝生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 安達 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 代謝生化学部)
  • 伊東 祐二(鹿児島大学大学院 理工学研究科)
  • 福冨 友馬(独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
  • 板垣 康治(北海道文教大学 人間科学部)
  • 海老澤 元宏(独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
  • 五十嵐 良明(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 松永 佳世子(藤田保健衛生大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、まず小麦加水分解物に注目し、その製造工程の違いによって生じるアレルギー反応の惹起性について、動物モデルによる生体反応の解析と、ファージディスプレイ法及びショットガンMS法による網羅的抗原性解析等を実施し検討を行う。次いで、小麦同様、他の原材料による健康被害の発生も予想されることから、国内外の健康被害の状況を調査の上、小麦加水分解物で得られた知見を基に、アレルギー反応の誘起性や成分規格の改定についての検討を行うことを目的とする。
研究方法
本年度は、小麦加水分解物に着目し、成分の物性に関する研究を手島班員が担当し、免疫学的反応についての動物モデルに関する研究を安達班員が担当し、ファージディスプレイを用いた網羅的抗原性の解析を伊東班員が担当し、小麦加水分解物を含有する石鹸の使用によるアレルギー発症の事例調査並びに事後の経過観察を松永班員及び福富班員が担当し、小麦加水分解物によるアレルギー発症のアンケート調査を板垣班員が、国内外のアレルギー発症事例の文献調査を海老澤班員が担当し、小麦加水分解物の物性を考慮した成分規格の検討を五十嵐班員が担当した。
結果と考察
酸加水分解グルテン試料(HWP 0.5h~HWP 24h)についてGE Superdex 200x1を用いるサイズ排除(分子篩)クロマトグラフィー(SEC)及びSDS-PAGEにより、分子量分布の測定を行った。その結果、グルテンの酸加水分解物(30分処理, HWP 0.5h)で高分子から低分子まで、スミア状の分子量パターンを示すことが明らかになった。また、酸加水分解処理時間が長くなるに従って分子量は低下し、3時間(HWP 3h)以上の処理で、それより短い処理時間のものに比べ大きくパターンが異なり、ピーク位置の低分子側へのシフトが顕著となった。別途行ったマウス経皮感作試験において、 HWP 0.5hには感作能があるが、HWP9hには感作能がないという結果が得られており、酸加水分解グルテンの場合、タンパク質の分子量が感作性に関与することが示唆された。
小麦加水分解物を含有する石鹸の使用によるアレルギー発症の事例調査並びに事後の経過観察による結果からは、2013年2月20日時点の確実例は1808例で、女性1733例(95.9%)、男性 75例(4.1%)であった。なお、当該石鹸は、2011年5月に自主回収が行われたが、石鹸中止後の経過を医師にアンケートして回収できた111例の結果から、石鹸使用中止後6か月では60%、3年では80%の症例がコムギを摂取していることが明らかとなった。
結論
人体に影響を及ぼす化合物やアレルゲンを含有する医薬部外品・化粧品が国内外で製造されており、国内での小麦加水分解物含有石鹸の使用によるアレルギー発症の事例調査並びに医中誌、PubMedの文献検索によっても、これらによる健康被害の起きる場合のあることが明らかになった。天然成分は比較的安全に使用できるというイメージをもたれることが多いが、小麦加水分解物含有石鹸などの事例を考慮すると、必ずしも安全ではないことが判明した。これら食物含有医薬部外品、化粧品を使用する以前から当該アレルゲンに対する食物アレルギーを有する患者に対しては引き続き注意喚起することが必要であるとともに、新たなアレルギー発症事例を防止するためには、医薬部外品・化粧品タンパク質由来成分の規格試験法の設定にはタンパク質の処理の仕方や分子量を加味した十分な検討が必要であると思われた。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201235045Z