違法ドラッグに関する分析情報の収集及び危害影響予測に関する研究

文献情報

文献番号
201235042A
報告書区分
総括
研究課題名
違法ドラッグに関する分析情報の収集及び危害影響予測に関する研究
課題番号
H24-医薬-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
花尻 瑠理(木倉 瑠理)(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
研究分担者(所属機関)
  • 合田 幸広(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 栗原 正明(国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部)
  • 関野 祐子(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
  • 内山 奈穂子(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 豊岡 利正(静岡県立大学 薬学部)
  • 裏出 良博(大阪バイオサイエンス研究所 分子行動生物学部門)
  • 和田 光弘(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,指定薬物制度に対応し,具体的な化合物や植物を指定薬物として指定する際に考えられる問題点を科学的に解決し,規制化に必要な評価手法及び科学的データを監視指導・麻薬行政に提供することを目的とする.厚生労働省は深刻化する違法ドラッグ問題に対し,規制強化の一環として,平成24年度に指定薬物61化合物(2化合物は後に麻薬に指定),麻薬12化合物を新たに指定した(平成25年4月公布分を含む).また合成カンナビノイドのうち,ナフトイルインドール骨格に特定の置換基を有する化合物群759化合物(既規制化合物を除く)を包括的に指定薬物として指定した.本研究では,これら違法ドラッグの規制強化に対応するために,より迅速にかつ的確に危害影響を予測しうる迅速分析法及び活性評価手法の検討に主点をおいた.
研究方法
違法ドラッグ製品の流通実態調査を行うと共に,新規流通違法ドラッグの構造決定,分析用標品の調製及び分析法の開発を行った.また,ヒト肝ミクロゾームを用いた代謝実験を行った.活性未知成分については,in silico, in vitro及びin vivoによる活性評価法を検討した.さらに,いわゆる脱法ハーブ製品に使用される植物の遺伝子解析による基原種調査を行った.
結果と考察
違法ドラッグ製品の流通実態調査を行い,計43種類の新規流通違法ドラッグ成分を同定した.そのうち18化合物が平成24年度(平成25年4月公布分含む)に指定薬物に指定された.平成24年度に初めて導入された包括指定に対応し,規制前後の合成カンナビノイド流通変化について調査した結果,少なくとも包括範囲公開後は,今まで流通の主流であったナフトイルインドール骨格を有する新たな合成カンナビノイドの出現は認められなかった.しかし,従来流通していた化合物とは異なる骨格を有する合成カンナビノイドの出現が顕著であり,また,同一製品中から,作用の異なる複数の化合物が検出される事例が増加した.合成カンナビノイドについて,規制範囲化合物である可能性を判断するためのGC-MS及びLC-MS分析によるスクリーニング法を提示した.ヒト肝ミクロゾーム画分を用いて,違法ドラッグ28化合物の代謝実験を行い,LC-TOF/MSによる分析データを蓄積した.一方,QSAR(定量的活性相関)を中心とした手法により3種類の活性未知新規流通違法ドラッグ成分の活性予測を行った.さらに,11種類のカチノン系及びフェネチルアミン系化合物について,ラット脳より調製したシナプトソーム画分を用いて,モノアミン再取込に対する阻害作用を検討した.また,15種類の合成カンナビノイドに対して,カンナビノイド受容体に対する親和性を測定した結果,平成24度に多くの健康被害を引き起こしたMAM-2201は,極めて強いCB1受容体親和性を示した.MAM-2201については,マウス小脳スライス標本をモデルとし,小脳の平行線維-プルキンエ細胞間のグルタミン酸作動性興奮性神経伝達の指標であるEPSCに対する抑制作用についても検討したところ,陽性対照薬WIN 55,212-2と同等の非常に強い中枢作用性を有することが明かとなった.また,単独使用及び併用時における薬物の危険性評価を目的として,MAM-2201,α-PVP,またその混合物をそれぞれラットに投与し,脳波及び自発運動量の変化について検討を行ったところ,両化合物を混合投与した場合,先にα-PVPの作用が発現し,その後遅れてMAM-2201の作用が発現した.さらに,代表的な乱用薬物であるMDMA 及びメタンフェタミンについて,マイクロダイアリシス法により各投与時のラット脳内におけるモノアミン及び薬物濃度をモニタリングした結果,これら薬物を併用すると健康被害が増悪する可能性が示唆された.いわゆる脱法ハーブ製品に使用されている植物の基原種を調査した結果,多くは欧州や日本などでもハーブティーなどに利用される植物であることが明らかとなった.
結論
平成24年度は,合成カンナビノイドやカチノン誘導体の他に,25I-NBOMeや2C-C-NBOMeのように極めて強いセロトニン受容体活性を有するフェネチルアミン系化合物,さらにMT-45やAH-7921のようにオピオイド受容体に強いアゴニスト活性を示し依存性形成の恐れがある化合物が新たに出現した.引き続き,違法ドラッグ流通に対し,厳重な監視体制が必要である.本研究成果の一部は,平成24年度に5回行われた薬事・食品衛生審議会指定薬物部会の審議資料として用いられ,また分析データは監視指導・麻薬対策課長通知として発出された.今後も問題となる薬物を随時指定薬物として指定し規制していくことになるが,本研究結果はこれらの規制化に有用な情報を提供し,国の監視指導行政に直接貢献するものである.

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201235042Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
17,000,000円
(2)補助金確定額
17,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 10,723,608円
人件費・謝金 4,889,800円
旅費 853,090円
その他 534,685円
間接経費 0円
合計 17,001,183円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
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