違法ドラッグの構造類似性に基づく有害性評価法の確立と乱用実態把握に関する研究

文献情報

文献番号
201235041A
報告書区分
総括
研究課題名
違法ドラッグの構造類似性に基づく有害性評価法の確立と乱用実態把握に関する研究
課題番号
H24-医薬-一般-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
舩田 正彦(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 栗原 正明(国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部)
  • 富山 健一(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所薬物依存研究部)
  • 浅沼 幹人(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科神経情報学分野)
  • 嶋根 卓也(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所薬物依存研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)である合成カンナビノイドおよびフェネチルアミン系化合物の中枢作用および細胞毒性の評価を行い、その化学構造と作用発現強度の関連性を検討した。また、違法ドラッグの評価に関する基礎資料を提供する目的で、クラブ利用者を対象に、違法ドラッグを含む薬物乱用実態に関する疫学調査を実施した。
研究方法
既に麻薬に指定されているJWH-018 (1-pentyl-3-(1-naphthoyl)indole) に着目して3-(1-naphthoyl)indole構造を有する物質に関する有害作用予測の妥当性を検討した。有害作用予測にあたって、実効性の高い評価方法を確立するため、文献値及びコンピュータシミュレーション法による予測値を効果的に用いることで有害作用の解析を試みた。行動解析:脱法ハーブに多く含まれている合成カンナビノイドのうち、3-(1- naphthoyl)indole構造を有する化合物に関して、運動抑制作用について検討を行った。また、コンピュータシミュレーション法により、運動抑制作用の発現強度に関して、カンナビノイドCB1受容体親和性との相関性を検証した。細胞毒性の評価:マウス脳由来初代培養神経細胞、ドパミン系培養神経細胞CATH.a細胞およびセロトニン系培養神経細胞B65細胞を用いて細胞毒性を検討した。疫学調査:クラブイベント来場者における脱法ドラッグ使用状況および脱法ドラッグ使用者の特徴を把握するために、ノートパソコンを用いた無記名自記式調査を実施した。計2回のクラブイベントで、151名を対象に実施した。
結果と考察
行動解析:3-(1- naphthoyl)indole構造を有する合成カンナビノイドにより、著しい運動抑制作用が確認された。この作用は、カンナビノイドCB1受容体拮抗薬のAM251前処置によって完全に抑制された。合成カンナビノイドによる運動抑制作用の発現と、CB1受容体に対する親和性強度に関する相関性を検討したところ、正の相関が認められた。これらの作用は、大麻の精神活性成分であるTHCと比較して、非常に強力であった。合成カンナビノイドの作用強度を比較する場合、運動抑制作用は行動薬理学的指標として有用である。細胞毒性の評価:マウス脳由来初代培養神経細胞、B65細胞およびCATH.a細胞において、合成カンナビノイド、5MeO-DALT、 エトカチノン、PCA暴露により、細胞毒性が発現した。疫学調査:脱法ドラッグの生涯経験率は、ハーブ系21.7%、パウダー系7.2%、リキッド系4.3%であった。ハーブ系脱法ドラッグ経験者の多くが大麻経験者でもあり、ハーブ系脱法ドラッグ経験者と大麻経験者は集団属性として類似していることが明らかになった。また、脱法ドラッグの入手経路については、「友人や知人」を通じての入手が多かった。
結論
本研究では、既に麻薬に指定されているJWH-018 (1-pentyl-3-(1-naphthoyl)indole) に着目して3-(1-naphthoyl)indole構造を有する物質に関する有害作用予測の妥当性を検討した。行動解析、細胞毒性およびコンピュータシミュレーション法による解析により、CB1受容体に対する親和性強度が高い化合物は、特に強力な有害作用を発現する危険性がある事が示された。また、初代培養神経細胞およびモノアミン系培養神経細胞株を利用した化学発光による細胞毒性評価は、低濃度のドラッグの暴露早期における細胞障害性を迅速かつ感度良く、定量的に評価できる方法として有用であることが確認された。脱法ドラッグに関する実態調査から、脱法ドラッグの生涯経験率は、ハーブ系21.7%、パウダー系7.2%、リキッド系4.3%であり、脱法ハーブの乱用が拡大していることが示唆された。また、脱法ドラッグの入手経路は「友人や知人からもらった」が多く、友人・知人といった身近な存在からの誘いが、脱法ドラッグ使用開始のリスクファクターとなっている可能性がある。本研究のカンナビノイドCB1受容体に対する作用強度を解析する評価システムは、違法ドラッグの中枢作用および有害作用発現の迅速な評価法として有用であり、得られる科学データは規制根拠として活用できると考えられる。脱法ハーブを筆頭に、いわゆる脱法ドラッグの乱用拡大は依然として深刻な状況であり、乱用防止のため一層の啓発が必要である。

公開日・更新日

公開日
2013-05-16
更新日
-

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収支報告書

文献番号
201235041Z