ワクチンの品質確保のための国家検定制度の抜本的改正に関する研究

文献情報

文献番号
201235035A
報告書区分
総括
研究課題名
ワクチンの品質確保のための国家検定制度の抜本的改正に関する研究
課題番号
H24-医薬-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 治雄(国立感染症研究所 国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 倉根 一郎(国立感染症研究所 副所長)
  • 脇田 隆字(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 西條 政幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 竹田 誠(国立感染症研究所 ウイルス第三部)
  • 柴山 恵吾(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 加藤 篤(国立感染症研究所 放射能管理室)
  • 板村 繁之(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
  • 柊元 巌(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
  • 内藤 誠之郎(国立感染症研究所 検定検査品質保証室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ワクチンは、感染症を予防し流行を防止するために、乳幼児を含む多くの健康人を対象に接種され、国民の健康を維持し増進する上で大きな役割を果たしている。したがって、その品質を確保することはきわめて重要である。また、ワクチンは、病原微生物などを出発材料として培養法などの生物学的な方法で製造され、その品質を検査する試験法にも生物学的試験法が用いられる医薬品(生物学的製剤)であることから、化学合成により製造される医薬品と比べて、ワクチンの製造と試験には高度な技術と経験が要求される。そこで薬事法においては、ワクチンを保健衛生上特別の注意を要する医薬品に位置づけ、基準(生物学的製剤基準)を定めて国家検定の対象としているところである。世界保健機関(WHO)においても、ガイドラインを示して、各国の規制当局がワクチンのロットリリースを許可する制度(我が国の国家検定はこれに該当する。)を適切に運用することを求めている。今般、実質的に国際標準となっている製造・試験記録等要約書(Summary Lot Protocol; SLP)を審査する制度が、国家検定に導入された。SLP審査制度が導入されたことにより、ワクチンの国家検定を担当している国立感染症研究所(感染研)には、これまで以上に、ワクチンのロットごとの製造情報及び試験情報が集積されることになった。そこで、これらの情報を生かして、さらなるワクチンの「安心、安全」の向上に資することを目的に、我が国の国家検定制度について総合的な調査研究を行った。
研究方法
国家検定制度を中心に、承認審査、GMP調査並びに製造販売後調査にも通暁する人材をそろえ(必要に応じて研究協力者を招聘)、1.全ロット全製品一律試験制度の見直しを含めた国家検定制度の抜本的見直し、2.国家検定とGMP調査の連携のあり方、3.国家検定と製造販売後調査の連携のあり方、4.製造販売承認制度と国家検定制度の整合的運用、5.国家検定における生物基と承認書の位置づけ、6.国際調和の観点からの国家検定制度のあり方、の各論点について調査研究を実施した。ワクチンの国家検定制度と関連する品質保証体制について、EUや米国等の海外における状況と我が国の現状について調査研究を進め、課題を抽出した。
結果と考察
我が国の国家検定制度について、「GMP調査との連携のあり方」「製造販売後調査との連携のあり方」「製造販売承認制度との整合的運用」などの観点を含めて、網羅的かつ抜本的な調査研究を行った。その結果、我が国の国家検定制度と関連する諸制度に関して、幾つかの課題が抽出された。EU、米国等のSLP審査制度を先行して導入している国々の制度を調査したところ、我が国の制度とは異なっている点がいくつか見出された。EUにおける国家検定にあたる制度であるOCABRにおいては、全ロットに対して試験を実施している点は我が国と同様であるが、試験項目をフェーズ1とフェーズ2の2段階に分けて定めていた。また、試験方法の設定については、承認申請の1年以上前から医薬品販売業者と検定実施機関との協議を開始する点において、承認申請後に短期間で承認前検査を実施する我が国とは異なっていた。GMP、製造販売後調査、製造販売承認などの関連する諸制度と国家検定制度との連携についても、欧米諸国においては我が国よりも整備が進んでいる点があると思われた。また、ワクチンに加えて血液製剤についても、欧米諸国においてはSLP審査制度が導入されている実態が明らかになった。以上のように我が国の全ロット試験を基本とする国家検定制度、及び関連するGMP、製造販売後調査、製造販売承認の諸制度と国家検定との連携においては、幾つかの課題があることが明らかになった。
結論
ワクチンの「安心、安全」の向上に資することを目的に、国家検定制度について、「GMP調査との連携のあり方」「製造販売後調査との連携のあり方」「製造販売承認制度との整合的運用」などの観点を含めて、網羅的かつ抜本的な調査研究を行った。EU、米国等のSLP審査制度を先行して導入している国々の制度を調査したところ、我が国の制度とは異なっている点が見出され、我が国の全ロット試験を基本とする国家検定制度及び関連するGMP、製造販売後調査、製造販売承認の諸制度と国家検定との連携における課題が浮き彫りになった。課題の解決に向けて、1) ワクチンの「安心・安全」のさらなる向上の観点、2) 国際調和の推進の観点、3)リソースの最適配分と効率化の観点などから、さらに調査研究を進める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2013-06-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201235035Z