セルフケア・セルフチェックを支援する医療提供体制と一般用医薬品の役割に関する研究

文献情報

文献番号
201235032A
報告書区分
総括
研究課題名
セルフケア・セルフチェックを支援する医療提供体制と一般用医薬品の役割に関する研究
課題番号
H23-医薬-指定-030
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
望月 眞弓(慶應義塾大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 生活者が自らの健康に関心を持ち自己管理するには、生活習慣の適正化に加え、定期健診も重要である。しかし、健診の結果、治療が必要な域にあっても未治療で放置する患者は多いとされる。また、若年の専業主婦層では健診の機会を持たない割合も高いと言われる。こうした患者予備軍又は潜在患者への対策は、今後の日本の医療の大きな課題の1つである。その対策の1つとして、セルフチェックや未病段階でのセルフケアの普及が考えられる。生活者がセルフチェックにて正常域になかった場合、その解釈やその後の行動を支援する体制が不可欠であり、医師、薬剤師、保健師、栄養士等医療関係者の適切な関わりが重要である。患者予備軍又は潜在患者を掘り起こし、セルフケアや受療に導くには対象者とこれらの医療関係者間の連携がとれていなければならない。
 本研究では、このセルフチェック・セルフケアを支援する新しい医療提供体制の例とそのために必要な人材、インフラ、教育、物(一般用医薬品や検査薬)などをまとめ提案することを目的とする。
研究方法
 平成24年度は、連携が機能する複数の地域をモデル地域として5地区を選定し、それらの実態を分析した。さらに欧州における地域薬局のセルフケアに関する活動の調査を行った。
(1)欧州、NZにおけるセルフケア・セルフチェックの支援体制に関する調査
 欧州(フィンランド、デンマーク、フランス、ドイツ、スイス)について、書籍や文献などによる調査ならびに、各国の薬剤師会(デンマークはファルマコン)あるいは先進的薬局へのインタビュー調査を行った(スイスは平成24年12月10日、その他は平成25年3月11日~16日に実施)。また、ニュージーランドについても、オークランド大学薬学部のNatalie Gauld氏に調査項目を送付し回答を得た。
(2)セルフケア・セルフチェックを支援する医療連携体制モデル地区の分析
 平成23年度の調査から支援体制を積極的に構築している薬局として選定された5地区(北海道、神奈川県、福井県、長野県、高知県)に加えて、東京都および徳島県の薬局で糖尿病のセルフチェックを行う取り組み(糖尿病診断アクセス革命プロジェクト)の6地区(地域)の取り組みについて、活動の中心となる下記の研究協力者からのレポートとそれに基づく討議から情報を整理した。
結果と考察
 その結果、欧州5カ国では、薬局を医療インフラの一つとして位置づけ、すべての薬局で均一なサービスを地域住民へ提供することを目指していた。来局者の多くは、かかりつけ薬局として利用し、薬局は、店頭に非常に多種類の一般用医薬品やサプリメントを陳列し、来局する地域住民の相談機会を増やす工夫を行っていた。また、いずれの国も薬局内に相談用のエリアを設ける方向に移行し、一部では血圧測定や自己採血での血液検査がプライバシーの確保されたエリアで行われていた。ニュージーランドにおいては、インフルエンザワクチンの接種がはじめられ、一部の薬局では薬剤師が採血をして検査を行っていた。さらに、各国の薬剤師会は、薬局での健康相談や医療消費者の自己検査の支援に関する教育プログラムを提供するとともに、薬局でのサービス内容を国民に広く周知する活動を行っていた。
 わが国のセルフケア・セルフチェックの支援体制を構築している6地区で活動に参画している薬局も欧州諸国と同様に、調剤業務に特化せず処方せん薬から一般用医薬品、健康食品・サプリメント、衛生用品に至るまで幅広い商品を取り揃えた地域密着型の薬局が多かった。医薬分業が確立している欧州諸国では医師と薬剤師は独立してそれぞれの役割を果たすということができる環境にある。一方で、日本ではむしろ医師と薬剤師が連携して地域で一体化した医療消費者支援を目指している地区が多い。薬局の役割として調剤を超える役割を確立するとともに、その際、地域の医療関係者との連携にも配慮した日本型の地域薬局のあり方が必要と考える。
結論
 日本においても欧州諸国で見られたように、調剤業務に限定しない、地域医療に貢献できる薬局の役割を明確にすることが急がれる。そのためには、薬剤師の資質向上のための研修、医師等との連携が不可欠である。そして、処方薬のみならず一般用医薬品や健康食品・サプリメントも取扱い医療消費者との接触の機会を増やすことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201235032Z