院内製造PET薬剤の合成装置を用いた核医学診断技術に係る規制体系、臨床応用に関する諸外国の状況調査に関する研究

文献情報

文献番号
201235030A
報告書区分
総括
研究課題名
院内製造PET薬剤の合成装置を用いた核医学診断技術に係る規制体系、臨床応用に関する諸外国の状況調査に関する研究
課題番号
H23-医薬-指定-027
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
井上 登美夫(横浜市立大学 大学院医学研究科放射線医学)
研究分担者(所属機関)
  • 本田 憲業(埼玉医科大学総合医療センター 画像診断・核医学科)
  • 伊藤 健吾(独)国立長寿医療研究センター 脳機能画像診断開発部)
  • 千田 道雄(公益財団法人先端医療振興財団 先端医療センター研究所)
  • 細野 眞(近畿大学高度先端総合医療センター 核医学)
  • 久下 裕司(北海道アイソトープ総合センター 放射性薬品化学)
  • 藤林 康久(行政法人放射線医学総合研究所分子イメージング研究センター 分子イメージング)
  • 木村 裕一(近畿大学 生物理工学部 システム生命科学科)
  • 脇 厚生(独立行政法人放射線医学総合研究所分子イメージング研究センター 標準化推進・品質保証室)
  • 齊尾千絵子(独立行政法人放射線医学総合研究所分子イメージング研究センター 標準化推進・品質保証室)
  • 栗原 宏明(国立がん研究センター中央病院 放射線診断科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
3,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
欧米においては、cGMP(Current Good Manufacturing Practice)等のPET薬剤の特性に着目した薬剤製造基準を策定し、各PET薬剤合成施設全体のプロセスを承認し管理することによりPET薬剤の品質を担保している。一方、我が国におけるPET薬剤の製造に関しては、合成装置に対し薬事承認をとることによりPET薬剤の品質を担保する扱いとなっている。この日本独自の方式により多くのPET施設において保険診療導入が可能となり、PET診療の普及に大きく貢献してきた。しかしながら、新たなPET薬剤合成装置の治験を行う際は、元来販売台数が少ないので、コストの観点から合成装置の製造企業は治験に積極的でなく、メチオニンなど医療ニーズの高い新規PET薬剤の早期導入においても、合成装置の薬事承認に関連してさまざまな問題が指摘されている状況である。

本研究では、
1. 院内製PET薬剤の合成装置を用いた核医学診断技術の規制体系やイメージング技術の標準化を含めた臨床応用について、国内外広く状況調査を行うこと
2. 我が国における院内PET薬剤製造の技術水準を向上させるため、PET薬剤の特性を考慮した日本版PET薬剤製造基準(日本版cGMP)を作成すること
3. 関連する学会と連携して日本版cGMPの教育プログラム充実や日本版cGMP監査、認定制度の導入など、技術水準向上のために有効な制度の提案をすること を目的とする。 また、関連する学会と連携して日本版cGMPの教育プログラムを実施かつ充実させ、日本版cGMPに則した監査、認定制度の導入など、技術水準向上のために有効な制度を試験的に実施し、今後国内で実施するために必要な体制の構築を準備する。
研究方法
本研究においては、諸外国の状況調査と論点整理、院内製造PET薬剤に関する基
準案の熟成(PET薬剤合成基準、PET薬剤の非臨床安全性基準、PET薬剤の臨床評価基
準)、イメージングの品質管理・標準化案など技術水準向上のために有効な制度を提案
することに主眼をおき、下記の分担研究体制で日本核医学会分子イメージング戦略会
議の活動と連携して研究を進めた。

②ソフトウェアの薬事承認のあり方の検討と海外動向調査
②自動合成装置の薬事承認のあり方の検討と海外動向調査
③PET検査における標準化と撮像施設認証
④院内製造PET薬剤の標準化のあり方の検討と海外動向調査
⑤PET薬剤製造並びに撮像に関する標準化対応
⑥PET画像品質の確保と保証に関する検討と海外動向調査
⑦院内製造PET薬剤の品質確保に必要な基準・手順についての検討
⑧米国のPET医薬品規制および承認審査のあり方に関する調査
⑨ガイドライン作成
これらの研究過程にて得られた知見や成果を踏まえ、院内製造PET薬剤の合成装置を利用した核医学検査に関わる制度として、日本版cGMPの教育プログラムを関連する学会と連携して実施した。また、日本版cGMPに則した監査、認定制度を試験的に導入した。
結果と考察
1. 平成23年度に公表したPET薬剤合成基準、PET薬剤の非臨床安全性基準、PET薬剤の臨床評価基準に対する、関連する学会員からのパブリックコメントを集約し、各基準に反映させ、必要な追補を行った。
2. 個別のPET薬剤製造基準としてC-11メチオニンの薬剤基準を作成した。
3. PET薬剤製造施設の監査・認証制度を試験的に実施し、今後国内で実施するために必要な体制、必要な人員などを検討した。
4. PET薬剤製造施設の技術水準向上のために、関連学会との協力のもと、製造・品質管理技術者の育成のための教育プログラムを実施し、内容を充実させた。
5. PET薬剤製造並びに撮像に関する標準 化を普及させるために、PET薬剤の臨床応用やPET検査の撮像法などに関する情報の共有・データベース作成が 有用であることを明らかにした。
結論
院内PET薬剤製造の規制体制については、欧米がPET特有のcGMP製造基準を中心とした制度であることに対し、我が国はPET薬剤合成装置を医療機器として承認することで、診療上の安全性を担保する体制となっている。この体制は、サイクロトロン保有施設の多い我が国において、効率的な体制であり、今後も規制体制の基本的な骨格として維持すべきであると考えられる。しかし今後開発される新たな院内合成PET薬剤においては、国際的な動向を配慮して安全性を担保することも必要であり、今回作成した学会ガイドラインやPET薬剤製造施設認証・PET撮像施設認証、施設監査などを活用し、現状の制度と合わせてより安全かつ合理的な院内製造PET薬剤に関わる薬事行政を施行すべきである。

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201235030B
報告書区分
総合
研究課題名
院内製造PET薬剤の合成装置を用いた核医学診断技術に係る規制体系、臨床応用に関する諸外国の状況調査に関する研究
課題番号
H23-医薬-指定-027
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
井上 登美夫(横浜市立大学 大学院医学研究科放射線医学)
研究分担者(所属機関)
  • 本田 憲業(埼玉医科大学総合医療センター画像診断・核医学科)
  • 伊藤 健吾(独)国立長寿医療研究センター・脳機能画像診断開発部)
  • 千田 道雄(公益財団法人先端医療振興財団 先端医療センター)
  • 細野 眞(近畿大学高度先端総合医療センター・核医学)
  • 久下 裕司(北海道アイソトープ総合センター・放射性薬品化学)
  • 藤林 康久(行政法人放射線医学総合研究所分子イメージング研究センター・分子イメージング)
  • 木村 裕一(近畿大学 生物理工学部 システム生命科学科)
  • 脇 厚生(独立行政法人放射線医学総合研究所分子イメージング研究センター・標準化推進・品質保証室)
  • 齊尾 千絵子(独立行政法人放射線医学総合研究所分子イメージング研究センター・標準化推進・品質保証室)
  • 栗原 宏明(国立がん研究センター中央病院・放射線診断科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
院内製造PET薬剤の合成装置を用いた核医学診断技術の規制体系やイメージング技術の標準化を含めた臨床応用について、国内外広く状況調査を行い、
1.我が国における院内PET薬剤製造の技術水準を向上させるため、PET薬剤の特性を考慮した日本版PET薬剤製造基準(日本版cGMP)、非臨床安全性基準、臨床評価ガイドライン、個別薬剤製造基準を作成すること
2. 関連する学会と連携して日本版cGMPの教育プログラム充実や日本版cGMP監査、認定制度の導入など、技術水準向上のために有効な制度の提案をすること
3. 関連する学会と連携して日本版cGMPの教育プログラムを実施かつ充実させ、日本版cGMPに則した監査、認定制度の導入など、技術水準向上のために有効な制度を試験的に実施し、今後国内で実施するために必要な体制の構築を準備する。

研究方法
本研究においては、諸外国の状況調査と論点整理、院内製造PET薬剤に関する基準案の熟成(PET薬剤合成基準、PET薬剤の非臨床安全性基準、PET薬剤の臨床評価基準)、イメージングの品質管理・標準化案など技術水準向上のために有効な制度の試験的運用、に主眼を置き、日本核医学会分子イメージング戦略会議の活動と連動する形で調査・検討を進めた。
結果と考察
1. PET医薬品規制及び承認審査に関する国外調査結果
米国食品医薬品局(FDA)、米国薬局方(USP)、米国国立がん研究所(NCI)、米国核医学分子イメージング学会(SNMMI)、国際核医学認証委員会(ICANL)、PETNET Solutions社につき訪問調査を行った。
PET薬剤の合成装置については、以下のような情報が得られた。
①PET薬剤合成装置については、USP(United States Pharmacopeia、米国薬局方)においてUSP1015として項目が立てられ、品質管理の着眼点について記載されているが、それ以外に追加的な規制はなく、PET用医薬品特有のGMP体制の中で、製造プロセスの一環として管理されている。
②米国連邦行政規則(Code of Federal Regulations:CFR)の中に、通常の医薬品のCurrent Good Manufacturing Practice (CGMP)の項目に加えて、PET医薬品用CGMP規則(以下「PET-CGMP」)を21 CFR 212として作成し、そのガイダンスが作成された。このPET-CGMP規則とガイダンスは、2009年12月に最終化され、施行期限が2012年6月12日とした。このPET医薬品GMP規則の内容は、本研究事業の他の分担研究の成果物として、日本の治験薬GMPと包含する形で、日本核医学会におけるガイドラインの中に取り入れられた。
2. 日本における学会基準の作成
日本核医学会に設置された分子イメージング戦略会議にて協議を重ね、PET薬剤合成基準(案)、PET薬剤の非臨床安全性基準(案)、PET薬剤の臨床評価基準(案)を公表し、関連学会員からのパブリックコメントを集約し、各基準に反映させ必要な追補を行い、日本核医学会の理事会の承認を得た。
薬剤基準の作成は、
①米国FDAのcGMP for PET DrugsおよびUSP823の内容の精査
②上記cGMPに適合した米国PET施設の実地調査
③上記cGMPと日本のGMP省令、治験薬GMP等との比較と重要事項の抽出の手順で、
PET薬剤製造基準案(学会製造基準)を作成した。さらに、PET薬剤製造基準妥当性検証と監査方法の検討を行った。
PET薬剤製造基準の準拠に関する監査方法の構築
監査方法は、1)Walk Through監査による施設内立入調査 2)製造基準監査チェックシートによる書面調査 の2つの方法で行うこととした。
PET画像品質の確保と保証及び撮像施設認証に関する検討
日本核医学会と協同でPET撮像施設認証の仕組みを構築することを図った。本研究班では、C-11メチオニンの脳腫瘍診断を想定したPETカメラの性能を評価するため、撮像施設認証のためのファントムを製作した。
結論
現状の我が国の体制は、サイクロトロン保有施設の多い我が国において、効率的な体制であり、今後も規制体制の基本的な骨格として維持すべきであると考えられる。しかしながら、今後開発される新たな院内合成PET薬剤においては、米国をはじめとする国際的な動向を配慮して安全性を担保することも必要である。今回院内製造PET薬剤の規制に関する国際的動向を視野に入れて作成した学会ガイドラインやPET薬剤製造施設認証・PET撮像施設認証、施設監査などの体制を活用し、現状の制度と合わせてより安全かつ合理的な院内製造PET薬剤に関わる薬事行政を運用されることが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201235030C

成果

専門的・学術的観点からの成果
院内製造PET薬剤の合成装置を用いた核医学診断技術の規制体系やイメージング技術の標準化を含めた臨床応用について、国内外広く状況調査を行った。その結果、PETが日常の診断においてのみでなく、治療薬の創薬研究・開発のツールとして、すなわちイメージングバイオマーカとしての利用も重要視されていることが明らかとなった。米国核医学会ではそのための臨床ネットワークの国際的な展開を図っており、今後我が国においても動向を注視していくべきである。
臨床的観点からの成果
我が国における院内PET薬剤製造の技術水準を向上させるため、PET薬剤の特性を考慮した日本版PET薬剤製造基準(日本版cGMP)、非臨床安全性基準、臨床評価ガイドライン、個別薬剤製造基準を作成し、日本核医学会と連携して日本版cGMPの教育プログラム充実や日本版cGMP監査、認定制度の導入の試験的運用など、将来臨床に使われる新しい院内PET製剤が日常診療の中で安全かつ信頼できる結果を提供するための基盤を作成した。
ガイドライン等の開発
我が国の院内PET薬剤製造の規制体制は、合成装置を医療機器として承認することで、診療上の安全性を担保する体制となっている海外にない独自の体制であることが確認された。この体制は、サイクロトロン保有施設の多い我が国において、効率的な体制である。平成23年11月2日に行われた“医療ニーズの高い医療機器に関する検討会”において、本研究班で日本核医学会と共同で作成していた日本版PET薬剤製造基準(日本版cGMP)、非臨床安全性基準、臨床評価ガイドラインを作成していくことを補足説明した。

その他行政的観点からの成果
現状の我が国の体制は、サイクロトロン保有施設の多い我が国において、効率的な体制であり、今後も規制体制の基本的な骨格として維持すべきである。しかし今後開発される新たな院内合成PET薬剤においては国際的な動向を配慮して安全性を担保することも必要である。今回院内製造PET薬剤の規制に関する国際的動向を視野に入れて作成した学会ガイドラインやPET薬剤製造施設認証・PET撮像施設認証などの体制を活用し現状の制度と合わせてより安全かつ合理的な院内製造PET薬剤に関わる薬事行政を運用されることを提言した。
その他のインパクト
第52回日本核医学会学術総会において下記のプログラムで合同シンポジウムを実施した。
「PET検査の質の向上を目指して:薬剤合成から検査・診断まで」
1.趣旨説明:なぜ標準化が必要か:千田 道雄(先端医療センター) 2.標準的な診断から:栗原 宏明(国立がん研究センター中央病院) 3.PET薬剤院内製造の標準化:脇 厚生(放射線医学総合研究所) 4.PET撮像の標準化:松本 圭一(京都医療科学大学) 5.行政の立場から:高江 慎一(厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室)

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
20件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
16件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201235030Z