生活習慣病の中枢制御に関する研究

文献情報

文献番号
199800157A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣病の中枢制御に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
木山 博資(旭川医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 和田圭司(国立精神・神経センター神経研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
加速的な超高齢化に向かっている日本の社会にとって、高齢者が健康で活力ある生活を送るためには、加齢に伴って多くの人が直面し寿命に多大な影響を及ぼす疾病、成人病を克服しなければならない。肥満、高血圧、脂質・糖代謝障害などのいわゆる成人病は生活習慣にもその原因があるとされ、「生活習慣病」とも云うことができる。最近の遺伝子欠損動物を用いた研究から、脳に限局するペプチド受容体のファミリーメンバーを欠損させると、「生活習慣病」の症状を呈する動物が得られることが明らかになってきた.このことはいわゆる成人病の原因として中枢由来のファクターが関与しうること、すなわち神経ペプチドを中心とした中枢制御の存在が明らかになったことである。脳の老化・加齢により中枢制御がうまく作動しなくなることが、成人病を惹起もしくは増悪させる一つの要因ではないかとの仮説が立てられる.本研究ではこのような仮説に基づいて成人病の中枢制御のメカニズムを解明することにある。解明の糸口として本研究組織で得られたBRS-3欠損動物が有効であると考えられる。また、神経特異的に局在し、かつニューロペプチドに関連する分子を新たに同定し、生活習慣病の中枢制御の新たな機構を解明し、それをモデル動物として生活習慣病の新しい治療法の開発を行うことも目的の一つである。このため3年に及ぶ申請期間のうち初年度にあたる10年度は、ボンベシン、ニューロテンシンなど摂食との関連性が指摘されている神経ペプチド及びその受容体の欠損動物の作成や欠損動物を用いた中枢性制御機構について新たな知見を導き出し、さらに予防・治療薬開発の前身となる物質(リード物質)を見つけだすことを目指した。また、遺伝子探索により得られた視床下部に局在する新規分子の機能探索と欠損モデル動物の作成も開始した。
研究方法
1.ボンベシン受容体の解析を通した生活習慣病の分子機序解明及び予防・治療薬の開発。1)BRS-3の内因性リガンド並びにBRS-3機能に関連した遺伝子群の同定。2)ニューロメジンB受容体(NMBR)欠損マウスの作製と解析。3)新しいボンベシン受容体遺伝子の同定。2.ニューロテンシン受容体の生体機能の解明と老化研究への応用。1)ニューロテンシン受容体(NTR1)欠損マウスの表現型の解析。2)NTR2遺伝子の単離。3.視床下部に局在する新規遺伝子の解析。1)組織学的な脳内発現局在の検索。2)ゲノム遺伝子のクローニングと構造決定。3)ノックアウトベクターコンストラクトの構築。4.アデノウイルスを用いた遺伝子導入法の開発。
結果と考察
ボンベシン受容体(BRS-3)遺伝子欠損マウスの作成によりBRS-3がエネルギー収支、血圧維持において実は極めて重要な分子であることが示され、血圧・エネルギー収支、など生体の恒常性の維持に生理活性ペプチドが重要な役割を担っていることが明らかになった。さらに、ニューロテンシン受容体やニューロメジンB受容体のノックアウトの成功は、神経ペプチドが関与する他の自律機能の解明に大きな手段を提供すると考えられる。BRS-3の内因性リガンドの探索において体重と負の相関にある可能性の高い因子も得られた。さらに、新たな新規のエンドペプチダーゼが極めて特異的に視床下部に存在することの証明は生活習慣病の中枢制御の問題に新たな切れ口が得られたものと考えられる。本遺伝子の欠損動物の作成は現在進行中であり今後の展開が期待される。また、アデノウイルスを用いて遺伝子を生体の神経細胞に導入するシステムが確立したことは、将来的な遺伝子治療の可能性を示しており、本研究が治療法の開発へと展開してゆくうえで極めて重要な進展であると考えられる。
結論
生活習慣病のモデルとなりうるBRS-3欠
損動物のほかに、ニューロテンシン受容体、ニューロメジンB受容体などの欠損動物が得られた。これらの欠損動物に関しては今後の解析結果が待たれる。さらに新たに検出された視床下部に豊富なエンドペプチダーゼについては欠損動物の作成を開始した。

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