医薬品品質システムにおける医薬品製造・品質管理手法の系統化及び国際調和に関する研究

文献情報

文献番号
201235020A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品品質システムにおける医薬品製造・品質管理手法の系統化及び国際調和に関する研究
課題番号
H23-医薬-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
香取 典子(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部)
研究分担者(所属機関)
  • 檜山 行雄(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部 )
  • 坂本 知昭(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部 )
  • 小出 達夫(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ICH Q8, Q9, Q10の概念と具体的な医薬品製造管理・品質管理との有機的なリンクを達成するために、製剤開発段階から製造管理・品質管理までを包括する医薬品品質特性の解析・評価技術の導入が望まれる。このため、開発段階でより多くの品質特性を解析し、またQbD(Quality bu Design:系統的な開発アプローチ)で示されるような品質頑健性の範囲を決定するための分析評価技術、また製造工程管理・品質管理における適切な評価技術及び的確なデータ解析評価手法の導入アプローチを提案することは重要である。
本研究では、高度分析技術を横断的に適用することによって、分光学的な観点から分子レベルでの製剤の品質特性を解析し、品質システムの構築及びその運用において科学的根拠を与えるためのアプローチを提案することを目的としている。
研究方法
研究班の体制としては、品質システムの評価者である都道府県および医薬品医療機器総合機構の薬事担当者、ならびに製薬企業の研究開発、生産担当、品質保証、業務計画などの専門家、製薬業界団体の協力を得る。また、研究協力者として国内外の大学及び分析機器メーカー開発研究所、並びに製薬会社に属する研究者らと共同研究チームを編成して実施する。高度分析評価装置の測定については,分担研究者が所属する機関に所有する装置の他,共同研究チームに参加する研究者らが所属する機関が所有する装置を用いて測定及び解析を行う。
結果と考察
品質システムに関する研究:
平成23度は『製薬企業経営陣への品質システムに関する調査結果』、日本開催ICH教育研修会からのフィードバックを基に、国内外の調査、広報活動を行った。その結果、議論の中心が欧米の大企業の状況を踏まえた問題が中心であることが判明した。一方、国内では医薬製造工場の立場から知識管理についての検討について聞き取りを行った。日本PDA製薬学会においては既存製品へのQbD適用事例が検討され、生産関係の部署だけではなく、研究部門・薬事部門など他部門との連携が必須であることが示された。24年度においてはPMDAおよび日薬連の協力の下に、定期の品質照査などGMPの新たな要件を含め、品質システムの実践導入にいて考慮すべき点に関する文案を作成した。さらに、GMP施行通知の主に「安定性モニタリング」の項の作成を行い、合わせて事例集の改訂を行った。
高度品質分析・評価技術に関する研究:
平成24年度では、遠赤外/テラヘルツ領域の電磁波を用いて医薬品製造工程において起こり得る主薬成分の水和または脱水等の疑似結晶形転移現象の経時的解析を行った。工程における擬似結晶形転移現象は、溶出性など物性の変化を引き起こす可能性があり、製剤開発及び製造工程において重要な管理項目の1つである。本研究において、遠赤外/テラヘルツ領域の電磁波を用いることで工程中における主薬成分等の物性の変化に結びつく分子分光情報を得ることが可能であることを示すことができた。
品質システムの実践・導入に関する研究:
製剤のイメージングシステムを医薬品品質管理に導入するための適切な手法の検討を行った。多くのメーカーより販売されており一般的な製剤であるクラリスロマイシン錠について、近赤外イメージングシステムを用いて含有成分の分布の測定を行い製剤均一性などの品質特性解析を行った。これまでに様々なイメージング解析手法が提案されているが、近赤外イメージング解析の場合には近赤外分光法を用いた定量などに用いられる多変量解析とは異なる手法が必要とされることから、実際の運用において基準物質の確保や解析結果の解釈などに問題のあるケースが見られる。本研究ではPCA及びPLS の2種類の多変量解析を用い、単独では得られない情報を得ることによりこの問題を解消できることを明らかとした。
結論
これまでの厚生労働科学研究の成果に基づき、医薬品の品質に系統的に影響を与えるのは、研究開発と生産組織の有機的な協働体制に最も重要な医薬品品質システムであると結論した。本研究では、医薬品品質システムの実践のためには企業の経営陣の意識向上など多くの課題解決を念頭に置き、定期品質照査・安定性モニターなどGMPの新要件に想定される項目に重点をおいた、より具体的なGMP施行通知作成に寄与した。
また、分光学的新評価技術の品質システムへの取り込みを通じ、具体的な新評価技術の導入及びデータ評価アプローチを提案することで、企業へのイノベーションへの姿勢を向上させ、さらには、国際調和を更に進める土台つくりとなり、国際的な医薬品の安定供給及び医薬行政機関間の共同関係を推進することが期待された。

公開日・更新日

公開日
2013-05-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201235020Z