製薬企業におけるコンプライアンス体制の実態把握と実効上の問題抽出に関する研究-特に子会社、グループ企業、委託先のコンプライアンス確保について

文献情報

文献番号
201235019A
報告書区分
総括
研究課題名
製薬企業におけるコンプライアンス体制の実態把握と実効上の問題抽出に関する研究-特に子会社、グループ企業、委託先のコンプライアンス確保について
課題番号
H23-医薬-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
白神 誠(日本大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬事法違反を犯した製薬企業の社外調査委員会委員として、コンプライアンス体制が十分に機能していないことを明らかにした。同時に、他の製薬企業においても、緊急時にはコンプライアンス体制が機能せず同様なことが起こるのではないかとの危惧を抱いた。そこで、製薬企業にインタビューを行い、各社のコンプライアンス体制の実態を把握し、問題点を明らかにするとともに、他社の模範となる事例については積極的に紹介していく。
重大なコンプライアンス違反を犯すと、ユーザーの信頼を失うことになる。企業にとって、信頼を回復することが急務であるが、当局を満足させるための対策となったりしている。また、対策を講じたことは説明できても、成果をあげたかについては、的確な評価が行われていない。そこで、より有効な信頼回復対策を実施するために、BSCを活用することを検討した。
製薬企業が医薬品を紹介する内容が、PMDAによる評価と異なっていたとしたら、ユーザーが誤った認識を持ってしまい、患者に不利益を生む可能性が考えられる。そこで、製品情報概要の内容をPMDAの審査報告書と比較し、データの評価において相違がないか調査した。
研究方法
1 製薬協に加盟する製薬企業に対し、詳細なインタビューを行う。
2 製薬企業が策定した信頼回復へ向けての対策をBSCの戦略マップとスコアカードに落とし込むことにより、BSC活用の有用性を検討した。
3 新有効成分含有医薬品の製品情報概要の「特徴」、「臨床試験」の記載を審査報告書の内容と比較し、疑問点について企業の見解を求めた。
結果と考察
1 48社に対しインタビューを行った。社員に求める行動憲章等でコンプライアンスを取り上げていても複数の項目がありコンプライアンスが最優先であることは示されていない。コンプライアンス・ガイドライン等を定め全社員に配布している企業が多いが、強制的にそれを読む機会を提供することが必要である。営業部門におけるコンプライアンスを営業部門に任せている企業もみられたが、リスクマネジメントの面から問題である。
コンプライアンス違反が会社の重大な損失につながることをコンプライアンスの必要性の説明しているところが多いが、実感しにくいのではないかと感じた。コンプライアンス違反がユーザーの信頼を失うこと、失った信頼を回復するのは容易ではないことを説明するのがよいのではないか。
内部通報システムが整備されており通報者の保護のための工夫もされているが、あまり有効に活用されていないとの印象を受けた。内部通報制度以外の方法でも情報を収集する工夫が必要である。
子会社や取引先のコンプライアンスに特別な配慮を行っている企業はあまり見られなかったが、子会社や取引先のコンプライアンス違反で、責任を問われるケースが出てきており、見直しが必要である。
2 企業の考えた信頼回復に向けての対策を戦略マップに落とすことで、不足している対策や不必要な対策を明らかにすることができる。また,各対策の因果関係が明らかになり、社員は自分の取組みが、どう信頼回復につながっているのか理解できる。さらに、それぞれの部署で、全社的な戦略マップでの戦略を下方展開し、各部署のマップを作成することで、社員のより主体的な取り組みが可能となる。また、スコアカードを作成し適切な業績評価指標を考えることで、対策の実施状況を把握でき、当局に対しその成果を説明することも容易になる。
3 2009年/2010年に発売された新有効成分含有医薬品66種類のうち、PMDAの評価で認められなかった申請者の主張を製品情報概要に記載したものが10成分12項目あった。このような逸脱を防ぐためには、製品情報概要作成部署が承認申請に係る部署と十分に連携することが第一であるが、逸脱をチェックする仕組みを企業内に設けることも必要である。また、業界としても、各企業への啓発活動を行い、チェック体制を構築することが必要である。さらに、医療関係者もこういう問題があることを十分認識し、自ら審査報告書で確認することも必要である。
結論
インタビューを通して、他社の参考となるような先進的な取り組みをしている企業も多々見られた。そのような企業では、過去の経験を生かしながら、より良いものに変えてきており、コンプライアンスにおけるPDCAサイクルによる見直しが必要である。
信頼回復のための対策を考える際に、BSCの手法を活用することで、不足している対策や不必要な対策を明らかにすることができ、対策の実施状況や成果を的確に把握し、当局や外部に対して説明できることが示唆された。
製品情報概要の作成にあたって、審査報告書の内容を把握していなかったのではないかとの印象を受けた。また、業界としても検討する必要があるのではないかと感じた。

公開日・更新日

公開日
2013-06-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-11
更新日
-

文献情報

文献番号
201235019B
報告書区分
総合
研究課題名
製薬企業におけるコンプライアンス体制の実態把握と実効上の問題抽出に関する研究-特に子会社、グループ企業、委託先のコンプライアンス確保について
課題番号
H23-医薬-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
白神 誠(日本大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
法令違反を起こした製薬企業の社外調査委員会委員として、コンプライアンス体制が十分に機能していないことが問題発生の原因の一つであることを明らかにした。同時に、コンプライアンス体制が整備されているとされている他の製薬企業においても、緊急時にはそれが機能せず同様なことが起こりうるのではないかとの危惧を抱いた。そこで、製薬協会員会社に対して行ったアンケート結果を解析し、その結果を踏まえて製薬企業のコンプライアンス責任者等にインタビューを行い、各社のコンプライアンス体制の実態を把握し、実行性の面からの問題点を明らかにするとともに、他社の模範となる事例については積極的に紹介していくことを目的とする。
研究方法
製薬協が平成22年に会員に対し行ったコンプライアンス体制に関するアンケート調査の回答を入手し解析を行った。その結果を踏まえ、製薬協の会員会社のコンプライアンス担当責任者等に対し、詳細なインタビューを行った。製薬企業が、信頼回復を目指して策定した対応策をBSCの戦略マップとスコアカードに落とし込むことにより、BSCの手法の活用の有用性を検討した。コンプライアンスの一環として、新薬の製品情報概要の「特徴」、「臨床試験」における記載を審査報告書の内容と比較し、生じた疑問点について企業に問い合わせ見解を求めた。
結果と考察
アンケート調査の結果からは、コンプライアンス・プログラムの主要6項目すべてにおいて以前(平成13年)に比べ改善しており、ほぼ全社において形は整ったものとみなせる。しかし、有事に本当に機能するのかという点で、懸念を感じさせる回答が示されていた。また、子会社や取引先のコンプライアンス体制への考慮が十分には行われていなかった。今後、各社においてコンプライアンスがなぜ必要性なのか、またどの程度取り組むべきかを検討し、それと整合性のあるコンプライアンス・プログラムとしていく必要があろう。
48社に対するインタビューから以下のことが明らかとなった。コンプライアンス違反の弁解を許さない取組みが求められ、企業理念等でコンプライアンスの重要性を述べることは、非常に大きな意味を持つ。また、経営トップが繰り返し、コンプライアンスがすべてのことに優先することを発することが必要である。各社で定めているコンプライアンス行動規範等については、強制的にそれを読む機会を提供することが必要であろう。営業部門のコンプライアンスについては、リスクマネジメントの面からいっても営業部門に任せきりにしないことが重要である。コンプライアンスの必要性については、コンプライアンス違反がユーザーの信頼を失うこと、失った信頼を回復するのは容易ではないことを説明するのがよいのではないかと思う。内部通報システムは各社とも整備しており、通報者の保護のための様々な工夫もなされているが、あまり有効に活用されていない。内部通報制度以外の方法でも情報を収集する工夫が必要である。子会社や取引先のコンプライアンスに特別な配慮を行っている企業はあまり見られず、見直しが必要なのではないかと感じた。
企業が考えた対策を、BSCの戦略マップに落とすことで、不足している対策や不必要な対策を明らかにすることができることが明らかとなった。また、スコアカードを作成し適切な業績指標を考えることで、対策の実施状況を把握することができ、また、外部に対しその実施状況を説明することも容易になることが示唆された。
コンプライアンスの事例として、製品情報概要による情報提供の実態を調査した。検討した66成分のうち10成分は、PMDAの評価で認められなかった申請時の主張を記載していた。製薬企業の情報提供活動については、プロモーションコード等業界としての自主規制が設けられており、多くの企業はそれを遵守しているものと思われるが、一部の企業でそれを逸脱していると思われる事例が見出された。
結論
アンケート結果からは、有事にコンプライアンス体制が、本当に機能するのかという点で、懸念を感じさせる。また、昨今頻発している事例を考えたとき、子会社や取引先のコンプライアンス体制への考慮が十分には行われていない。インタビューの結果、他社の参考となるような先進的な取り組みをしている企業も多々見られた。そのような企業では、過去の経験を生かしながら、コンプライアンス体制をより良いものに変えてきており、PDCAサイクルによる見直しが重要である。信頼回復のための対策を考える際に、BSCの手法を活用することで、不足している対策や不必要な対策を明らかにすることができ、対策の実施状況を的確に把握し、当局をはじめとして外部に対しても説明できることが示唆された。製品情報概要を、審査報告書の内容を把握せずに作成しているのではないかとの印象を受けた。業界としても検討する必要があるものと思われた。

公開日・更新日

公開日
2013-06-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201235019C

成果

専門的・学術的観点からの成果
製薬企業のコンプライアンス体制のあり方について多くの示唆を得た。他社の参考となる先進的な取り組みをしている企業も多々見られた。しかし、子会社や取引先のコンプライアンス・プログラムの考慮が十分には行われていなかった。
信頼回復のための対策を考える際に、BSCを活用することで、不足している対策や不必要な対策を明らかにすることができ、対策の実施状況を的確に把握し、外部に対しても説明できることが示唆された。
臨床的観点からの成果
該当なし。
ガイドライン等の開発
該当なし。
その他行政的観点からの成果
該当なし。
その他のインパクト
該当なし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201235019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,000,000円
(2)補助金確定額
575,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,425,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 510,892円
人件費・謝金 0円
旅費 2,520円
その他 62,468円
間接経費 0円
合計 575,880円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2014-05-30
更新日
-