妊婦における医療用医薬品の安全性に関するエビデンスの構築のための薬剤疫学研究の基盤整備および実践

文献情報

文献番号
201235016A
報告書区分
総括
研究課題名
妊婦における医療用医薬品の安全性に関するエビデンスの構築のための薬剤疫学研究の基盤整備および実践
課題番号
H23-医薬-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
栗山 進一(東北大学 災害科学国際研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 赤沢 学(明治薬科大学)
  • 八重樫 伸生(東北大学)
  • 眞野 成康(東北大学)
  • 大久保 孝義(滋賀医科大学)
  • 目時 弘仁(東北大学)
  • 小原 拓(東北大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 妊婦における医療用医薬品使用の安全性に関して、レセプト情報を用いた薬剤疫学研究の実施可能性について検討すること。
研究方法
 今年度は、ポピュレーションベースの妊婦コホートの推進、レセプト研究実施に向けて昨年度に抽出された問題点の克服、レセプト研究に必要な情報(アウトカム)に関する評価、妊娠中の医薬品使用と奇形との関連に関する薬剤疫学研究の試みを行った。
結果と考察
 『1.ポピュレーションベースの新規妊婦コホート研究(エコチル調査)』においては、東北大学が宮城ユニットセンターとしてエコチル全体調査に追加して実施する薬剤詳細調査を推進した。平成25年1月29日現在で、6,287名の妊婦が宮城ユニットセンターを通してエコチル調査に参加し、本研究課題で実施している薬剤詳細調査に関しては、2,116名に対して調査の説明を実施し、1,713名が同意し、そのうちの298名の妊婦が出産に至っている。データ入力を終えている対象者218名において、薬剤使用状況を集計した結果、妊娠初期に最も多く使用されている薬剤は解熱・鎮痛・感冒薬(17.9%)であり、次いで、鎮咳・去痰薬(8.3%)が多く使用されていた。また、妊娠中期から後期にかけて最も多く使用されていた薬剤は鉄剤(15.1%)であり、次いで、子宮弛緩薬(11.9%)が多く使用されていた。

 『2.保険組合のレセプトを用いたデータベース研究(レセプト研究)』においては、昨年度に抽出された2つの課題「同月内の処方日がすべてレセプト請求日にまとめられてしまうため、児の誕生月内の産後の医薬品処方が妊娠中の医薬品処方として集計に含まれてしまう可能性がある」・「用いているレセプトデータベースに付与されているATCコードが、欧州医薬品市場調査協会(EphMRA)のATC分類に基づいているため、薬剤疫学研究の世界標準であるWHO-ATC分類に基づくATCコードを付与する必要がある」に関して、その改善策を講じた上で、妊娠中の医療用医薬品使用と児の奇形との関連に関する薬剤疫学研究の実践を試みた。
 1,277,034名分のレセプトデータより、誕生年月と同月に保険に加入した15歳以下の児38,169名を同定し、最終的に妊婦15,115名の正期産妊婦(平均年齢31.5 ± 4.4歳:17.1-50.1歳)を同定した。妊娠36週までに一度でも医療用医薬品を処方されたことのある妊婦は13,742名(90.9%)であった。一般名別では、妊娠初期、中期、後期いずれにおいても、クエン酸第一鉄ナトリウムの処方が最も多かった(初期:15.4%、中期:15.0%、後期:5.2%)。さらに、明かに催奇形性リスクが高いとされている抗てんかん薬のカルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウム、フェニトイン、フェノバルビタールは、妊娠初期にそれぞれ5名、18名、2名、10名の妊婦に処方されていた。
 1,277,034名分のレセプトデータより、誕生年月と同月に保険に加入した15歳以下の児38,169名を同定した上で、児における先天奇形に関する傷病名を集計した。認められた先天奇形に関する傷病名は多指症(13.4名/万)であり、次いで、口唇裂(12.1名/万)、口唇裂のない口蓋裂(8.5名/万)、二分脊椎症(6.9名/万)の順であった。
 妊娠36週までの医薬品処方状況の評価が可能であった正期産妊婦15,115名の出生児における奇形は1,425名に認められ、妊娠初期に抗てんかん薬を処方されていた妊婦35名の出生児における奇形は4名に認められ、妊娠初期に抗てんかん薬を処方されていた妊婦の出生児における奇形の有病オッズ比は1.21であった。
 妊娠中にSSRIを処方されていた事例の処方傾向を調査した結果、処方傾向としては、大きく、1)出産まで断続的に処方されていたケースと、2)妊娠中に処方中止となったケース、そして3)一旦中止したものの、再開したケースの3つのパターンがみられた。
結論
 今年度は、妊婦コホートにおける妊娠中の薬剤使用状況に関する詳細調査を順調に拡大・継続した。また、レセプトを用いて、妊娠中の医薬品使用状況の評価、および出生児の奇形病名の評価を行ったうえで、妊娠中の医薬品使用と児の奇形との関連に関する薬剤疫学研究の実践を試みた。その結果、妊婦の医薬品使用状況と児の奇形情報との連結によって、妊娠中の各種医薬品使用による出生児の奇形リスクの評価が可能となることが示唆された。来年度は、出生児の奇形情報の精査および最終的な解析方法に関する検討を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201235016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,600,000円
(2)補助金確定額
2,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 329,863円
人件費・謝金 576,620円
旅費 451,400円
その他 642,636円
間接経費 600,000円
合計 2,600,519円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
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