血液製剤への核酸増幅検査(NAT)の実施及びその精度管理に関する研究

文献情報

文献番号
201235014A
報告書区分
総括
研究課題名
血液製剤への核酸増幅検査(NAT)の実施及びその精度管理に関する研究
課題番号
H23-医薬-一般-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
内田 恵理子(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田 義昭(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 山口 照英(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
8,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液製剤のウイルス安全性のさらなる向上と合理的な技術適用を図るため、平成16年に制定された「血液製剤のウイルスに対する安全性確保を目的とした核酸増幅検査(NAT)の実施に関するガイドライン」の改定に寄与するための研究と、そのガイドラインへの適合を評価するための技術開発を行うことを目的とする。特に、最新のNAT関連技術の向上に対応するため、新たな技術を導入する際の評価方法の提示やバリデーションの要件を明らかにすると共に標準パネルの作製等の整備を目的とする。
研究方法
1)NATガイドラインの改定に向けた検討として、血液製剤のウイルス検出のためのNAT関連技術の進歩や欧米の規制当局の最新のガイドラインに関して昨年度実施した調査結果をもとに、我が国のNATガイドラインの改定すべき点について専門家を含めた班会議を開催し、検討を進めた。2)NATの評価に用いる参照パネルに関する検討として、作製後長期にわたって保存されてきた既存のHBV、HCV、HIVの各参照パネルについて力価の再測定を行った。3)血漿分画製剤の原料血漿の安全性確保の点から許容できる科学的なパルボウイルスB19のウイルス量を検討するため、原料血漿に含まれるパルボウイルスB19の中和抗体量の推定を行った。
結果と考察
1) 現行のNATガイドラインの改定すべき点として、(1)国際標準品の整備に伴うガイダンスの全体記載のコピー数表示からIU表示への変更、(2)最終製品でのNAT検査の要否についての記載の削除、(3)適用するウイルスの範囲、(4)Ready-to-useのNAT試薬の利用やNATに用いられる機器等の自動化が進んでいることを反映した施設・設備要件の記載事項の整備、(5)定量PCRやMultiplex PCRなどの最新技術の取り込みなどの必要性が指摘された。これらの検討を基に、最終年度には改定NATガイドラインの素案を提示する予定である。また、NATガイドラインに関連して、国内標準品や参照パネルの整備について検討を行った。NATガイドラインは主としてHBV、HCV、HIVを対象とするNAT検査を想定して書かれているが、パルボウイルスB19や北海道で限定的に試行されているHEVのNAT検査、ウエストナイルウイルスのアウトブレイクを想定した対応なども検討する必要があるとの意見が出された。これを受けて、パルボウイルスB19の参照パネル作製の検討を行い、次年度の共同検定によりその評価を行うこととした。
2)ウイルスゲノムのNATによる検出では、そのバリデーションを行うために目的とするウイルスの標準品や参照パネルを用いた評価が必須である。2004年に厚生労働科学研究費で作製されたHBV、HCV、HIVの各参照パネルについて、長期保存後の安定性を評価するため力価の再測定を行った。その結果、極めて低濃度の検体以外は安定に保存されていることが確認された。
3)パルボウイルスB19は、一過性の高いウイルス血症を呈するため、血漿分画製剤の原料血漿の品質管理の上から重要なウイルスである。その一方で供血者の40%から50%が抗体陽性と言われ、血漿分画製剤の原料血漿におけるパルボウイルスB19検出能の設定では中和抗体を考慮する必要がある。原料血漿に含まれるパルボウイルスB19の中和抗体量を推定するため、パルボウイルスB19に高感受性を示す人白血病細胞株を用いて、人免疫グロブリン製剤中の抗B19抗体の中和活性を解析した。製剤中のIgG量と中和活性から原料血漿におけるパルボウイルスB19中和活性を推定した結果、10^5 IU/mL以上のウイルスを中和できる計算になった。従って、原料血漿におけるパルボウイルスB19の規格値である10^4 IU/mL以下という値は、妥当な数値であることが in vitroの実験からも示唆された。
結論
今年度得られた成果は、今後のNATガイドラインの改定を含めた血液製剤のウイルス安全性確保、血液製剤のさらなる安全性の向上に寄与することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2013-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201235014Z