文献情報
文献番号
199800156A
報告書区分
総括
研究課題名
長寿科学の基礎分野に関する研究(肥満、糖尿病、胆石症の新しい関連遺伝子、コレシストキニンーA受容体遺伝子)
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
宮坂 京子(東京都老人総合研究所)
研究分担者(所属機関)
- 船越顕博(国立病院九州がんセンター)
- 大久保賢治(東京都老人医療センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
生活習慣病は、遺伝的要素と生活習慣の相乗または相加効果によって発症し増悪する。また、生活習慣病は、単一遺伝子異常によって生じる遺伝子病ではない。今回我々が提起したCCK-A受容体遺伝子異常という病態も、単一の原因とはなりえないと思われるが、運動不足、過食などが重なった場合、または、別の遺伝子異常が存在した場合、生活習慣病の発症頻度が増加する可能性が高い。この異常を早期に発見し、適切な指導をおこなうことにより、疾患の発生を予防することができれば、本人、家族、社会にとって、非常に有意義である。さらに遺伝子ターゲッティングマウスの作成に成功したので、病因、病態の追及の手段としても用いる。
研究方法
CCKA受容体遺伝子の開始コドンATGのAを+1としたときの、プロモーター領域と思われる、-9から-556の間をPCRで増幅、クローニングし、塩基配列解析を行った。予備的検討からプロモーター領域2ヵ所に塩基配列置換を認めていることから、大規模疫学調査を行うために、より簡便なミスマッチプライマーを用いるPCR-RFLP法を開発し、末梢血白血球DNAでの遺伝子多型のスクリーニングを確立した。また、遺伝子ノックアウトマウスを繁殖中である。
結果と考察
住民検診40-70才代162人の検診の結果、CCKA受容体遺伝子多型は約40%に認められ、体脂肪量増加、血清レプチン濃度上昇との有意の相関が認められた。一方で、CCK-A受容体遺伝子多型例は、18才時の体重はむしろ有意低下を示していた。この事実は、CCK-A受容体遺伝子多型を持つ個体は、若い頃やせていても中年期以降に肥満を生じやすい、という可能性を示唆している。超高齢者では、多型の発生頻度が低い傾向にある。II型糖尿病患者50例の検討では、CCK-A受容体遺伝子多型を有する患者では、有意に高コレステロール血症を認め、特にLDLコレステロールの上昇が示唆された。
結論
CCK-A受容体多型を有する個体は、成人後の肥満を生じる可能性が高く、糖尿病での高脂血症の危険因子である可能性がある。今後モデル動物でのメカニスムのさらなる検討が必要である。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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