慢性疾患における多剤併用と副作用発現との関連に係る疫学調査の手法に関する研究

文献情報

文献番号
201235007A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性疾患における多剤併用と副作用発現との関連に係る疫学調査の手法に関する研究
課題番号
H22-医薬-一般-013
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
樋口 輝彦(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 弘人(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 社会精神保健部)
  • 稲垣 中(公益財団法人神経研究所 向精神薬研究部)
  • 川上 純一(浜松医科大学附属病院)
  • 松田 公子(静和会浅井病院)
  • 伏見 清秀(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
6,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、向精神薬をモデル的にとりあげ、電子カルテ等から得られた臨床データを用いて精神疾患を有する患者の多剤併用状況とそれに伴う副作用の発現状況に関する疫学調査の可能性を示すことである。活用可能なリソースや調査解析を行う上での条件等、予備的調査の実施を含めて検討する。その際、薬剤師の担う役割を明確にしつつ、疫学調査体制や臨床現場における多剤併用の適正使用に向けた体制の整備に資する成果を目指す。
研究方法
1)従来型疫学調査手法による検討:2008年4月に上市されたblonanserin(BNS)の投与継続率に関する検討。
2)電子カルテ等を用いた多剤併用と副作用発生の関連の評価手法の検討:抗精神病薬が処方された患者のうち、錐体外路症状(EPS)の改善に処方される抗パーキンソン病薬の新規処方を検出する方法ならびにEPS発現患者の陽性適中率の算出方法に関する検討。
3)臨床現場における適正使用推進活動の試み:薬剤師の参画等による向精神薬適正使用に向けた推進体制の構築の一環として、統合失調症患者のQTc延長の発現状況ならびに薬剤師を中心とした薬剤適正使用に係るモデルケースの検討。
4)多剤併用と副作用発現の関連に関する分析:DPCデータから、一般身体科入院患者におけるせん妄に対する実態調査と医療的介入状況に関する検討。
5)現存リソースの特徴の分析:抗精神病薬の心臓への影響を明らかにするために、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が公表する医薬品副作用データベース(JADER)の整理、ならびにQTcの平均変化量に関するメタ解析を用いた文献的な検討。
結果と考察
1)上市後半年以内にBNSが投与開始された女性患者では、BNSの投与が中断されやすい傾向を示した。
2)抗精神病薬によるEPSについて抗パーキンソン病薬の新規処方を検出する方法等を提案した。
3)統合失調症患者のQTc延長の発現状況を明らかとするとともに、QTc延長に対する薬剤師の薬学的視点からの介入の有益性を提案した。
4)身体科医師に対して、せん妄治療のガイドライン等の周知を行うことは、見逃されることの多いせん妄に対する治療率の向上や、エビデンスに基づいた薬物療法の推進に寄与できる可能性を提案した。
5)JADERを用いて、抗精神病薬が関係する心臓関連有害事象を整理することができた。また、メタ解析によりリスペリドンとクエチアピンの間には、QTcの平均変化量に有意な差は認めないことを示した。
結論
本研究を通じ、精神疾患を有する患者の多剤併用状況とそれに伴う副作用の発現状況との関連等に関する疫学調査の可能性に関し、新たな知見を得ることが可能と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2013-05-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201235007B
報告書区分
総合
研究課題名
慢性疾患における多剤併用と副作用発現との関連に係る疫学調査の手法に関する研究
課題番号
H22-医薬-一般-013
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
樋口 輝彦(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 弘人(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 社会精神保健部)
  • 稲垣 中(公益財団法人神経研究所 向精神薬研究部)
  • 川上 純一(浜松医科大学附属病院)
  • 松田 公子(静和会浅井病院)
  • 伏見 清秀(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、向精神薬をモデル的にとりあげ、電子カルテ等から得られた臨床データを用いて精神疾患を有する患者の多剤併用状況とそれに伴う副作用の発現状況に関する疫学調査の可能性を示すことである。活用可能なリソースや調査解析を行う上での条件等、予備的調査の実施を含めて検討する。その際、薬剤師の担う役割を明確にしつつ、疫学調査体制や臨床現場における多剤併用の適正使用に向けた体制の整備に資する成果を目指す。
研究方法
1)従来型疫学調査手法による検討:①わが国において薬剤疫学研究に活用できる大規模データベースに関する調査、②抗精神病薬により誤嚥性肺炎をはじめとする重症感染症の発症リスクに関する検討、③2008年4月に上市されたblonanserin(BNS)の投与継続率に関する検討。
2)電子カルテ等を用いた多剤併用と副作用発生の関連の評価手法の検討:①抗精神病薬が併用して処方された患者と副作用発生症例の抽出操作の条件の検討、②抗精神病薬が処方された患者のうち副作用発生症例の抽出方法に関する検討、③抗精神病薬が処方された患者のうち、錐体外路症状(EPS)の改善に処方される抗パーキンソン病薬の新規処方を検出する方法ならびにEPS発現患者の陽性適中率の算出方法に関する検討。
3)臨床現場における適正使用推進活動の試み:①死亡診断書が提出された対象について、精神疾患の有無による平均寿命の比較とQTc延長の発症状況等に関する調査、②薬剤師の参画等による向精神薬適正使用に向けた推進体制構築の一環とした、薬剤師を中心とする薬剤適正使用モデルケースの検討、③統合失調症患者のQTc延長の発現状況ならびに薬剤師を中心とした薬剤適正使用モデルケースの検討。
4)多剤併用と副作用発現の関連に関する分析:DPCデータから、①向精神薬が処方されたデータを抽出しデータベースを構築するための向精神薬マスタの作成、②処方レジメンを加味した向精神薬処方実態の解明、③一般身体科入院患者におけるせん妄に対する実態調査と医療的介入状況に関する検討。
5)現存リソースの特徴の分析:①日・米・欧の規制当局による医薬品の安全対策強化のための医療情報データの二次利用に向けた取り組みに関する調査ならびに向精神薬に関係するKi値とCYPの整理、②抗精神病薬の心臓への影響を明らかにするためのトルサードドポアント(TdP)症例の整理、③医薬品医療機器総合機構(PMDA)が公表する医薬品副作用データベース(JADER)の整理ならびにQTcの平均変化量に関するメタ解析を用いた文献的検討。
結果と考察
1)若年者ではCPZ換算投与量1,000mg/日以上の抗精神病薬を投与した場合に重症感染症の発症リスクが増大することを示し、さらには上市後半年以内にBNSが投与開始された女性患者では、BNSの投与が中断されやすい傾向があることを示した。
2)臨床データベースを用いて抗精神病薬の併用処方患者の抽出、抗パーキンソン病薬の新規処方患者の抽出ならびにEPSを発症した患者の抽出方法を提案した。
3)統合失調症患者の寿命がQTc延長に影響することを明らかにし、さらに薬剤師の介入は処方の単純化や薬剤誘発性QTc延長の改善等に有益性があることを示した。
4)DPCデータを用いた身体科における向精神薬処方の実態が分析可能であることを示し、本成果を基に身体科入院患者ならびにせん妄患者の向精神薬処方実態を明らかにした。
5)向精神薬の薬物動態学的な整理を行うとともに、既存データベースを活用した抗精神病薬の心臓への影響に関する分析を実施し、既存データベースの活用可能性を示した。
結論
本研究結果は、精神疾患を有する患者の多剤併用状況とそれに伴う副作用の発現状況との関連等に係る疫学調査手法の可能性を示している。

公開日・更新日

公開日
2013-05-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201235007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究成果により、精神疾患を有する患者の多剤併用状況とそれに伴う副作用の発現状況との関連等に係る疫学調査手法の可能性を示すことができた。特に、薬剤師の担う役割を示しつつ、疫学調査体制や実臨床における抗精神病薬の適正使用に向けた体制の整備に資する一定の成果を得ることができた。
臨床的観点からの成果
本研究においてモデル的に用いた向精神薬は、精神科医療のみならず高齢者医療など広範に用いられる薬剤群である。本研究成果は医療関係者に幅広く役立つとともに、本成果の普及は国民の保健医療福祉の向上に直結すると考えられる。さらには本研究を通じ、薬剤師の役割の重要性とその貢献の具体的な方向性を提示することができた。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Okumura Y, Higuchi T.
Cost of depression among adults in Japan.
Prim Care Companion CNS Disord , 13 , e1-e9  (2011)
10.4088/PCC.10m01082.
原著論文2
Ito H, Okumura Y, Higuchi T et al.
Open Journal of Psychiatry
Open Journal of Psychiatry , 2 , 340-346  (2012)
10.4236/ojpsych.2012.224048.
原著論文3
池野敬, 石黒智恵子, 比嘉辰伍 他.
日本神経精神薬理学雑誌
抗精神病薬の心臓関連有害事象に関する報告の分析-医薬品医療機器総合機構 医薬品副作用データベース(JADER)-  (2013)

公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
2018-06-21

収支報告書

文献番号
201235007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,580,000円
(2)補助金確定額
8,580,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,999,749円
人件費・謝金 1,212,778円
旅費 1,248,140円
その他 1,139,333円
間接経費 1,980,000円
合計 8,580,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-