医薬品の製造・品質管理の高度化と国際化に対応した日本薬局方の改正のための研究

文献情報

文献番号
201235002A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品の製造・品質管理の高度化と国際化に対応した日本薬局方の改正のための研究
課題番号
H22-医薬-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
川西 徹(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 奥田 晴宏(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 川崎 ナナ(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 丸山 卓郎(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 阿曽 幸男(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 四方田 千佳子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 栗原 正明(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
5,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本薬局方(日局)に収載されている通則,総則や一般試験法などについて,医薬品製造・品質管理の国際化・高度化に対応した改正を行うための研究を行った.
研究方法
日本薬局方の改正作業を行っている日本薬局方原案作成委員会を構成する委員会の中で代表的な8つの委員会関連の課題において,日局16第ニ追補以降さらに改正が必要と考えられる項目について調査を行うととも,実験による検証を行った.
結果と考察
1.局方国際調和関連:策定した方針に従い日米欧三薬局方調和検討会議(PDG)において局方国際調和を進めた結果,調和対象としている項目数に対して平成24年度末で国際調和した項目数は,一般試験法では35項目中28項目、医薬品添加物各条では62項目中43項目となった;2.化学合成医薬品関連:医薬品の純度試験としてのNMR法の有用性について検討し,特別な前処理を必要とせずに,残留溶媒等の揮発性の有機化学物質の混入の定量に応用可能であることを示した;3.生物薬品関連:市販の各種エポエチン製剤を例として検討を行い,LC/ESI/MSは遺伝子組換え糖タンパク質の糖鎖不均一性の試験法として有用であることを明らかにした;4.生薬関連局方優先収載候補品目であるベラドンナ総アルカロイドの各条規格の検討を行い,性状,TLC 法による確認試験を設定するとともに,純度試験として重金属及びヒ素の規格を設定し,さらに,HPLC 法による定量法を設定し,含量規格値案をまとめた;5.医薬品添加剤関連:医薬品添加物各条で国際調和対象となっている乳糖水和物について,EPが提案しているドラフト案の純度試験法(澄明性試験)の問題点を明らかにするとともに,改良法を提案した;6.理化学試験法関連:純度試験の金属測定法の改正にむけて,改正試験法のモデルとなりうるUSPの元素不純物試験法を用いて本邦の市販医薬品および添加物について測定を行ったところ,良好な分析が可能であることが明らかとなった;7.製剤関連:ヒト抗体医薬品において、凝集体が一種類であり単量体と凝集体の粒子径とその相対光散乱強度の関係が明らかになっている場合,動的光散乱は凝集体の相対含量の推定に有用であることを示した;8.医薬品名称:日本薬局方名称データベース(JPDB)の利用状況の調査を行い、活発に利用され,日本内外から多数のアクセスがあることを明らかにするとともに,JPDBの今後の改良にむけた課題を考察した.
結論
日局の一般試験法(NMR法, LC-MS法,あるいは製剤試験法),参考情報(高次構造解析手法,ICP-MS法),および各条規格(高分子医薬,生薬,医薬品添加物,製剤)の改正のための検討を行うとともに,国際調和に向けた課題をまとめた.さらに化学薬品等の名称の改正の課題をまとめた.本研究の成果は日局16第一追補,日局16第二追補,並びに日局17への改正に直接反映される.

公開日・更新日

公開日
2013-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201235002B
報告書区分
総合
研究課題名
医薬品の製造・品質管理の高度化と国際化に対応した日本薬局方の改正のための研究
課題番号
H22-医薬-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
川西 徹(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 早川 堯夫(近畿大学薬学総合研究所)
  • 奥田晴宏(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 川崎ナナ(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 丸山卓郎(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 阿曽幸男(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 四方田 千佳子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 宮田直樹(名古屋市立大学大学院薬学系研究科)
  • 栗原 正明(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品製造・品質管理の国際化・高度化に対応して,日本薬局方(日局)の通則,総則,一般試験法,各条,あるいは参考情報を改正するための検討を行った.
研究方法
日本薬局方の改正作業を行っている日本薬局方原案作成委員会を構成する委員会の中で代表的な8つの委員会関連の課題において,日局16第一追補以降さらに改正が必要と考えられる項目について調査および研究を行うとともに,実験による検証を行った.
結果と考察
医薬品の製造・品質管理の高度化,および原料供給・製造・流通の国際化は著しく,我が国の公的医薬品規格基準書である日本薬局方はこのような医薬品を巡る環境の変化に対応した改正が必要である.局方改正原案の作成に中心的に係わっている専門家から研究班を構成し,適宜分野横断的な協力を取り入れながら薬局方改正関連の課題解決のための研究をおこなった.その結果,
1.局方国際調和関連  平成22-24年度の各時点における局方の国際調和の進捗状況,および調和にむけての課題を,進捗に応じてまとめた.24年度末でPDG調和対象とされた全項目数に対する現時点までに国際調和した総計項目数は,一般試験法35項目中28項目,医薬品添加物各条62項目中43項目となった.ICH Q4Bではエンドトキシン試験法がStep4合意署名されるとともに,合計12試験法がStep5に至り,Step4の合意署名を待つ試験は製剤均一性試験法のみとなった.
2.化学合成医薬品関連  医薬品の品質試験としてのNMR法の有用性について検討し,NMR法による (1)アミノ酸のわずかな置換が検出可能なペプチド性医薬品の特性解析手法 (2)高次構造の違いを観測できる分析手法であるNOESYスペクトルの比較による高分子医薬品の高次構造解析手法 (3) 医薬品の純度試験(残留溶媒等)法 を提示した.
3.生物薬品関連  LC-MSを用いたタンパク質性医薬品の試験法の開発と標準化を目的とし,糖タンパク質の糖鎖LC/MS法の要件を明らかにするとともに,局方バソプレシン(化学合成)に適した純度試験および定量法を検討,さらに市販の各種エポエチン製剤を例に遺伝子組換え糖タンパク質の糖鎖不均一性の試験法としてLC/ESI/MSが有用であることを明らかにした.
4.生薬関連  一般用漢方210処方の見直しに合わせ,局方未収載のものについて局方収載による規格化を図るための研究を行い,(1)アキョウの主産地である中国の大手メーカーを現地視察し, 各条設定上の課題をまとめ,(2)アキョウの基原動物種鑑別法としてcytochrome b領域をターゲットとしたPCR法による確認試験を提案,さらに(3)ベラドンナ総アルカロイドの各条案をまとめた.
5.医薬品添加剤関連   国際調和が難航している医薬品添加物の二酸化ケイ素,炭酸カルシウム,D-マンニトール,乳糖水和物について,おのおの調和にあたっての技術的な問題点を整理するとともに,その解決法を提案した.
6.理化学試験法関連  国際調和課題候補である色調の判定の試験法を検討し,色の機器測定は分光光度計に色の解析用ソフトを組み合わせて測定する方法で対応可能との結論を得た.引き続き元素分析法としてICP-MSを日局一般試験法に導入するために,EP, USP,JIS試験法について比較検討するとともに,USPの元素不純物試験法により市販製品の良好な分析が可能であることを明らかにした.
7.製剤試験法関連  日局16での製剤総則の大改正後に残された課題である,(1) 非無菌製剤に関する微生物混入への配慮の考え方をまとめた; (2)容器・包装関連事項について,分類,用語,および試験法等,今後解決を図るべき問題点をまとめた; (3)動的光散乱はヒト抗体医薬品の凝集体の相対含量の推定に有用であることを示した.
8.名称関連  日局収載医薬品の化学名および構造式について,日局16にむけて,国際調和の観点から局方全体の整合性を検討し,修正の必要な項目をまとめるとともに,日本薬局方名称データベース(JPDB)の利用状況の調査を行い,JPDBの今後の改良にむけた課題を考察した.
結論
日局の総則(製剤総則), 一般試験法(NMR法,LC-MS法、あるいは金属試験法), 参考情報(高次構造解析手法,動的光散乱等),および各条規格(高分子医薬,生薬,医薬品添加物,製剤)等の改正のための検討を行うとともに,国際調和に向けた課題をまとめた.さらに,医薬品名称の改正の課題をまとめた.本研究の成果は日局16第一追補,日局16第二追補、並びに日局17への改正に直接反映される.

公開日・更新日

公開日
2013-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201235002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本薬局方(JP)に収載されている試験法や医薬品各条規格などについて、医薬品の製造・品質管理の高度化、および原料供給・製造・流通の国際化に応じた記載内容の検討を行うとともに、改正案の根拠となる試験を行いつつ、改正案の作成、改正案の解説の作成、さらには今後の改正に向けた提言を行うための研究を行った。本研究の成果は、JPの第16改正以降の改正に反映され、またICH(日米欧国際医薬品規制調和会議)やPDG(薬局方調和検討会議)等の国際的な場での日本側の主張に科学的根拠を与えた。
臨床的観点からの成果
本研究成果を反映してJPが改正されることにより、収載医薬品の本質や品質を総合的に保証するための規格及び試験法が正確且つ速やかに医療従事者に周知されることが可能になるとともに、報告書の公表により改正の背景、意図についての医療関係者の理解が深まる。また、JPは、製薬企業が医薬品を承認申請、品質管理する際の規格および試験法の標準書として活用されているため、JPの改正によって医薬品の品質確保がより確かなものとなり、国民の健康確保に大きく貢献する。
ガイドライン等の開発
JP16、JP16第一追補、および一部改正、さらにはJP17の告示および各英語版の作成の原動力となるとともに、日米欧国際医薬品規制調和会議(ICH) のICH-Q4B文書「薬局方テキストをICH地域において相互利用するための評価および勧告」付属文書の作成に反映されている。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果は、JP改正に関する審議を行う局方原案作成委員会(総合委員会、化学薬品委員会、生物薬品委員会、生薬等委員会、医薬品添加物委員会、製剤委員会、理化学試験委員会、物性試験法委員会、医薬品名称委員会、国際調和検討委員会等)での審議に活用され、委員会での議論に科学的根拠を与えるものとなった。すなわち、本研究は、医薬品の承認審査における品質審査の基準、あるいは、監視指導での品質確保の標準書として活用されるJPの改正を通じて、医薬品の品質に関する薬事行政の推進に貢献している。
その他のインパクト
JPの改正を通じて、医薬品の品質に関する情報を国民に適切に伝えることができた。また、国際的学術雑誌や国内の専門誌にも本研究の成果を掲載し、我が国の承認医薬品の品質確保に関する最新動向を広く周知することができた。またWHOの呼びかけによって開始された世界薬局方会議におけるJPの主張の根拠となった。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
22件
その他論文(和文)
27件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
13件
学会発表(国際学会等)
18件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
7件
JP17の告示
その他成果(普及・啓発活動)
5件
JP改正説明会等

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kadoya, S., Fujii, K., Izutsu, K. et al.
Freeze-drying of proteins with glass-forming oligosaccharide-derived sugar alcohols
Int J Pharm , 389 , 107-113  (2010)
原著論文2
Yamada K, Hyodo S, Kinoshita M, et al.
Hyphenated technique for releasing and MALDI MS analysis of O-glycans in mucin-type glycoprotein samples
Anal Chem. , 82 , 7436-7443  (2010)
原著論文3
Kinoshita M, Kakoi N, Matsuno YK, et al.
Determination of sulfate ester content in sulfated oligo- and poly-saccharides by capillary electrophoresis with indirect UV detection
Biomed Chromatogr. , 24 , 2066-2112  (2010)
原著論文4
A. Ohno, N. Kawasaki, K. Fukuahra, et al.
Complete NMR analysis of oxytocin in phosphate buffer
Magn. Reson. Chem. , 48 , 168-172  (2010)
原著論文5
Izutsu, K., Yomota, C., Kawanishi, T.
Stabilization of liposomes in frozen solutions through control of osmotic flow and internal solution freezing by trehalose
J. Pharmaceut.Sci. , 100 , 2935-2944  (2011)
原著論文6
Miyazaki, T., Aso, Y., Kawanishi, T.
Feasibility of Atomic Force Microscopy for Determining Crystal Growth Rates of Nifedipine at the Surface of Amorphous Solids with and Without Polymers
J. Pharmaceut.Sci. , 100 , 4413-4420  (2011)
原著論文7
Izutsu, K., Yomota, C., Kawanishi, T.
Impact of heat treatment on the physical properties of noncrystalline multisolute systems concentrated in frozen aqueous solutions,
J. Pharmaceut.Sci. , 100 , 5244-5253  (2011)
原著論文8
Sakai-Kato, K., Ota, S., Takeuchi, T., et al.
Size separation of colloidally dispersed nanoparticles using a monolithic capillary column.
J. Chromatogr A. , 1218 , 5520-5526  (2011)
原著論文9
Miyazaki, T., Aso, Y., Yoshioka, S. et al.
Differences in crystallization rate of nitrendipine enantiomers in amorphous solid dispersions with HPMC and HPMCP
Int J Pharm, , 407 , 111-118  (2011)
原著論文10
川西 徹
バイオ後続品の開発状況とその評価
ジェネリック研究 , 4 , 5-18  (2011)
原著論文11
川西 徹
製剤総則の改正概要とその影響
ファームテクジャパン , 27 , 15-22  (2011)
原著論文12
川西 徹
第16改正日本薬局方の主な改正点
日本薬剤師会雑誌 , 62 , 2633-2638  (2011)
原著論文13
四方田千佳子
一般試験法の改正・理化学試験法
薬局 , 62 , 58-64  (2011)
原著論文14
Ohno A, Kawanishi T, Okuda H, et al.
A new approach to characterization of insulin derived from different species using 1H-NMR coupled with multivariate analysis
Chem. Pharm. Bull , 60 , 320-324  (2012)
原著論文15
Shibata H, Saito H, Kawanishi T, et al.
Comparison of particle size and dispersion state among commercial cyclosporine formulations and their effects on pharmacokinetics in rats
Chem Pharm Bull. , 60 , 967-975  (2012)
原著論文16
Yamaki T, Ohdate R, Nakadai E, et al.T
Component crystallization and physical collapse during freeze-drying of L-arginine-citric acid mixtures,
Chem Pharm Bull. , 60 , 1176-1181  (2012)
原著論文17
Ryosuke Kuribayashi, Noritaka Hashii, Akira Harazono, et al.
Rapid evaluation for heterogeneities in monoclonal antibodies by liquid chromatography/ mass spectrometory with a column-swiching system.
J. Pharm. Biomed. Anal., , 56 , 821-826  (2012)
原著論文18
S. Nakazawa, N. Hashii, A. Harazono, et al.
Analysis of oligomeric stability of insulin analogs using hydrogen/deuterium exchange mass spectrometry
Anal. Biochem. , 420 , 61-67  (2012)
原著論文19
川西 徹
日本薬局方の今とこれから
ファルマシア , 48 , 118-123  (2012)
原著論文20
川西 徹
医薬品の品質を巡る話題 -化学合成医薬品に関わるレギュラトリーサイエンス-
レギュラトリーサイエンス誌 , 2 , 67-73  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
2017-05-29

収支報告書

文献番号
201235002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,600,000円
(2)補助金確定額
5,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,009,160円
人件費・謝金 0円
旅費 1,113,050円
その他 478,299円
間接経費 0円
合計 5,600,509円

備考

備考
預金利息 509円

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-