食品中の放射性物質濃度の基準値に対する影響に関する研究

文献情報

文献番号
201234054A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の放射性物質濃度の基準値に対する影響に関する研究
課題番号
H24-食品-指定(復興)-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
明石 真言(独立行政法人放射線医学総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 知之(京都大学 原子炉実験所)
  • 青野 辰雄(独立行政法人放射線医学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
23,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成23年3月の東京電力(株)福島第一原子力発電所事故により食品の摂取による内部被ばくが懸念された。厚生労働省は平成24年4月以降、介入線量を年間1 mSvとして、新たな基準値を適用している。 内部被ばく線量に対する放射性セシウム及びその他の核種の寄与率は、環境モニタリングによる土壌中放射性核種濃度や、これまでの環境移行パラメータによって推定されており、その評価は十分安全側と考えられるが、実際に食品中濃度を測定した結果に基づくものではない。そのため、流通している食品について測定・評価を行い、内部被ばくに対する主要核種の寄与率の状況を把握する必要がある。
 本研究では食品(農畜水産物等)中の放射性Cs及びその他の長半減期放射性核種濃度ならびに調理や加工に伴う濃度変化について調査を行い、基準値作成に用いられた濃度比との比較や食品の摂取に起因する内部被ばく線量に対する放射性Csの寄与率の推定から、介入線量を年間1 mSvとした際の食品中の放射性Cs濃度基準値の妥当性の検証を行うことを目的とした。
研究方法
1. 食品加工や調理に伴う食品中の放射性物質の濃度変化に関する研究
 水産物では魚類の丸干しと開きについて原材料との放射性物質濃度の比較を行った。また、農産物ではシイタケについて、乾燥シイタケを作り、原材料と濃度比較を行った。
2. 環境中における放射性物質動態の実態把握に関する研究
 福島県産品の一般流通食品(農畜産物)を購入して、放射性核種濃度を測定し、基準値や過去のフォールアウトによる濃度レベル、規格基準値の導出に用いられた濃度比と比較検討した。
結果と考察
【研究結果】
1. 食品加工や調理に伴う食品中の放射性物質の濃度変化に関する研究
 魚類は、加工(丸干しと開き)によって放射性核種の濃度が減少した。シイタケは商業的に生産される過程に準じた方法で乾燥を行ったところ、実験室レベルでは乾燥キノコへの加工に伴い製品当たりの放射性Cs濃度が平均8.7±3.2(範囲5.0 - 10.9)倍程高くなった。
2. 環境中における放射性物質動態の実態把握に関する研究
 流通食品(農畜産物)試料中放射性Cs濃度(Cs-134+Cs-137)は検出下限値未満から40.2 Bq/kg-生重量であり、一般食品の基準値である100 Bq/kgを超える農畜産物はなかった。また、食品中Cs-137濃度は検出下限値未満から25.2 Bq/kg-生重量であった。放射性Sr-90濃度は、測定が終了した11試料全てにおいて検出下限値未満であった。
【考察】
1. 食品加工や調理に伴う食品中の放射性物質の濃度変化に関する研究
 魚類については、原材料(生魚の状態)からすべて内臓等が取り除かれ、機械乾燥や外干しが行われており、水分量の減少による濃縮よりも、加工工程における内臓部等の除去や洗いによって放射性物質が流出したと考えられた。 シイタケはCsを特異的に吸収・蓄積するが、SrはCsに比べて吸収・蓄積が非常に小さいことから、食品として、放射性Csに対する放射性Srの寄与率は線量評価に用いたものよりも低いと推定することができた。
2. 環境中における放射性物質動態の実態把握に関する研究
  本研究で検出されたCs-137濃度の範囲と、過去のフォールアウトの影響、及び規格基準値の導出に用いられた核種濃度比の比較検討を行った。その結果、今回検出されたCs-137濃度から、規格基準値の導出に用いられた濃度比によって評価されるSr-90濃度は、過去のフォールアウトに起因するSr-90濃度と同等かそれよりも低いレベルであるため、もしSr-90が検出されたとしても、必ずしも本事故の影響であると判断することはできず、より詳細な検討が必要であると考えられた。
結論
1. 食品加工や調理に伴う食品中の放射性物質の濃度変化に関する研究
 魚類では丸干しや開きの加工工程を経ることにより、放射性Csの濃度が減少することが明らかとなった。シイタケは実験室レベルで試験用の乾燥キノコに加工することで放射性Csが8.7±3.2(範囲5.0 - 10.9)倍ほど高くなり、また放射性Csに対する放射性Srの寄与率は線量評価に用いたものよりも低いと推定することができた。
2. 環境中における放射性物質動態の実態把握に関する研究
 流通食品(農畜産物)試料中放射性Cs濃度は、一般食品の基準値である100 Bq/kgを超える農畜産物はなく、Sr-90濃度は、測定が終了した11試料全てにおいて検出下限値未満であった。もしSr-90が検出されたとしても、フォールアウトによるSr-90の影響について、より詳細な検討が必要であることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201234054Z