食品中の化学物質および食品中の化学物質と医薬品との相互作用による肝毒性ならびに発生毒性の新規評価系の構築

文献情報

文献番号
201234051A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の化学物質および食品中の化学物質と医薬品との相互作用による肝毒性ならびに発生毒性の新規評価系の構築
課題番号
H24-食品-若手-019
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
中村 和昭(独立行政法人国立成育医療研究センター 研究所薬剤治療研究部実験薬理研究室)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品中の化学物質と医薬品との相互作用は、医薬品との飲み合わせの観点から医薬品相互作用と同様の基準で評価される必要がある。しかし、食品中の化学物質の発がん性等に関する動物や微生物等を用いた評価は行われているものの、医薬品との相互作用の観点に基づいたヒトを試験対象とした実験的な検討は十分に行われていない。本研究では、肝移植手術の際に生じる摘出肝から肝細胞の単離・培養を行い、ヒト肝細胞を用いた食品中の化学物質による肝機能への影響の評価系および食品中の化学物質単独あるいは医薬品との併用による肝細胞毒性試験系を確立し、食品と医薬品の飲み合わせにおける食品の安全性評価系を構築する。
研究方法
1)ヒト新鮮肝細胞の継続的な分離・培養・保存
国立成育医療研究センター病院・臓器移植センター及び臨床研究センター・先端医療開発室と連携し、肝移植時の摘出肝からの肝細胞の分離・保存を行った。
2)食品中の化学物質による肝機能への影響評価法の確立
薬物動態へ影響を与え、医薬品の薬効の増減・副作用発現に影響を及ぼすモデル物質としてセントジョーンズワート(西洋弟切草)の活性成分であるヒペルフォリンやイチョウ葉エキス成分であるビロバリド、ギンコリドA、B、Cをモデル物質として、ヒト肝機能への影響をヒト肝初代培養系と定量PCR法により包括的に評価する系を構築した。肝機能は、第I相反応の薬物代謝酵素に関する遺伝子の発現変化を指標とした。
3)食品中の化学物質による肝細胞毒性試験系の確立
ヒペルフォリンおよびビロバリド、ギンコリドA、B、Cをモデル物質として肝細胞毒性試験系を構築し、食品中の化学物質による細胞生存率を指標とした肝障害リスク評価系を確立した。
4)食品中の化学物質による発生毒性試験系の確立
食品中の化学物質による発生毒性を検討可能な試験系を構築するために、ヒペルフォリンをモデル物質として、その発生毒性をマウスES細胞を用いた発生毒性試験法であるEmbryonic Stem Cell Test(EST法)により検討した。
結果と考察
1)ヒト新鮮肝細胞の継続的な分離・培養・保存
本年度、当センターにて施行した小児肝移植症例数は41例であり、このうち33例(胆道閉鎖症肝15例、先天代謝異常症4例、ドナー余剰肝8例、その他6例)の肝検体より、肝組織及び肝細胞の分離・培養・保存を行った。
2)食品中の化学物質による肝機能への影響評価法の確立
 本研究により単離を行った新鮮初代肝細胞ならびに市販ヒト凍結肝細胞を用いて、肝機能評価系の構築を行った。西洋弟切草の成分であるヒペルフォリンを用いた検討から、ヒペルフォリンによるCYP3A4発現亢進作用が認められた。また、イチョウ葉エキスの成分であるビロバリド、ギンコリドA、B、Cの評価をおこない、ギンコリドBによるCYP3A4発現亢進を認めた。
3)食品中の化学物質による肝細胞毒性試験系の確立
本研究により単離を行った新鮮初代肝細胞ならびに市販ヒト凍結肝細胞を用いて、肝細胞毒性評価系の構築を行った。ヒペルフォリン、ビロバリド、ギンコリドA、B、Cは、いずれも健常成人由来肝細胞においては肝細胞毒性を示さなかった。一方、ヒペルフォリンは小児由来肝細胞において細胞毒性を示す可能性が考えられた。
4)食品中の化学物質による発生毒性試験系の確立
 ヒペルフォリンによる発生毒性評価を発生毒性試験法であるEST法にて行った結果、ヒペルフォリンは胎児モデルであるES細胞および成人モデルである繊維芽細胞に対して細胞生存率を減少させたが、繊維芽細胞に対してはアポトーシスを誘導し、一方、ES細胞に対しては細胞周期を停止させることにより細胞生存率を減少させ、細胞種によってその作用が異なると考えられた。また、組織特異的遺伝子発現解析から、ヒペルフォリンはES細胞の分化を抑制すると考えられた。通常用量の西洋弟切草あるいはヒペルフォリンの摂取において催奇形性は極めて低いものの、過剰摂取には留意する必要があると考えられた。
 
結論
本研究の成果により食品中の化学物質による肝機能への影響の評価系および食品中の化学物質の肝細胞毒性試験系ならびに発生毒性試験系の確立が可能であると考えられ、今後これら試験系を発展・活用・提供し、食品の安全性確保の一助としていきたい。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-11
更新日
-

収支報告書

文献番号
201234051Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
5,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,710,650円
人件費・謝金 0円
旅費 110,360円
その他 25,990円
間接経費 1,153,000円
合計 5,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
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