ヒトノロウイルス培養細胞の探索と食品からのノロウイルス検出に関する研究

文献情報

文献番号
201234049A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトノロウイルス培養細胞の探索と食品からのノロウイルス検出に関する研究
課題番号
H24-食品-若手-017
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
上間 匡(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ノロウイルス(NV)は、最も重要な食中毒原因物質の一つであり、2006/07および2012/13シーズンはGII/4遺伝子型NVが大流行を記録した。厚生労働省の食中毒統計によれば,平成10年移行食中毒発生事件数は減少傾向を示しているのと対照的に,ウイルスによる食中毒事件数は増加傾向を示しており,その対策の重要性は非常に大きくなっている。
 しかし、NVには培養細胞や実験動物を利用した感染・増殖系が無いために、環境中のウイルス動態や、食品・環境からのウイルス検出や感染性ウイルスの不活化処理についての研究は代替のネコカリシウイルス(FCV)やマウスノロウイルス(MNV)や感染性の無いウイルス様分子VLP等で行われており、実際の感染性NVの検出や不活化、制御等に関する詳細は不明であり、NV制御に向けた、感染・増殖系の確立が世界的に望まれている。
 本研究は、FCVの再構築系を応用しNVのカプシド蛋白を持つ組換えFCVを作成し、NV感受性細胞の網羅的スクリーニングを行い、NVの感染・培養系の確立を目指すものである。組換えFCVはNV由来カプシドを持つために環境中での動態や感染時の細胞侵入などのウイルス性状が感染性NVに近似することが予想され、従来の代替ウイルスと比較してよりNVの実態に近い環境中動態や、ウイルス不活化方法について検証可能になり、NV食中毒リスク低減や、食品におけるウイルス規格基準の策定への貢献が期待できる他,研究目的の均一なウイルスの入手の点でも,組換えFCVは実験室内での大量調整が期待でき、NV感受性細胞の網羅的スクリーニングを効率的に行うことができるだけでなく、食中毒患者や医療関係者その他の人的負担や倫理的配慮の煩雑さを大幅に軽減することで、NV制御に向けた研究の進歩に大いに貢献できると期待される。
研究方法
組換えFCV再構築系に向け,FCVおよびGII4遺伝子型NVのウイルスゲノム全長をクローニングのための対象ウイルスはFCV F9およびF4株と,GII4遺伝子型NV4株とし,これらの抽出RNAを用いた。ウイルスゲノム全長のPCR増幅条件の検討を行った。ウイルスゲノムのクローニングを確認後,哺乳類細胞内での再構築のため,プロモーターにEF-1aを導入した組換えゲノムプラスミドの作成を行った。作成した組換えウイルスゲノムプラスミドをCRFK細胞へ遺伝子導入して,組換えウイルスの再構築の確認を行った。
結果と考察
FCVおよびGII4遺伝子型NVのウイルスゲノム全長のPCR増幅条件について,まずプライマー長の比較を行った結果,FCVとGII4遺伝子型NVについてはプライマー長を40塩基程度の長さに設定することにより,厚労省通知に基づくウイルス遺伝子検出法で例示されているEX Taq(TAKARA)を用いて特異的なゲノム増幅が確認できた。これによりプライマーの設定により,各地の検査機関等でも新たに試薬等を導入することなくウイルスゲノム検出系を導入できる可能性がある。また,組換えウイルスゲノムプラスミドの組換えにIn-Fusion法を導入し,制限酵素サイトのゲノムへの挿入がなく,制限酵素を使用しない組換え方法でのゲノムプラスミド作成が可能になった。組換えウイルスの作出に関してはまだ確認できておらず,条件を検討中である。プライマー長の比較に加え,ウイルスゲノムPCRに用いるPCR酵素の比較を,行った。11種類の酵素の比較を行った結果,TOYOBO社のKODポリメラーゼが比較的優れた増幅結果を示した。FCVおよびGII4遺伝子型NVの他,他遺伝子型NVやサポウイルス,A型肝炎ウイルス等食品からの高感度なウイルスゲノム検出PCRについても応用可能か検討を行なっている。同時にアガロースゲル電気泳動の染色試薬の比較によりエチジウムブロマイドよりも安全性が高く,泳動像も明瞭な染色の利用により,現在通知法にて行われている食品等からのウイルス遺伝子検出法の高感度化が見込める結果が得られた。
結論
・FCVおよびNV GII4のウイルスゲノムのクローニングを行った。
・組換えウイルスのゲノムプラスミドの構築を行った。
・組換えウイルスのゲノムプラスミドの制限酵素を用いない,PCRベースの組換え法(In-Fusion法)を導入した。
・FCVおよびNV GII4についてはワンステップRT-PCRによるウイルスゲノム全長の増幅条件を見出した。
・PCR酵素の比較により,TOYOBO社KODポリメラーゼを用いることで現在の通知法よりも高感度にウイルスゲノムを検出できる可能性を示した。
・GelRed等による染色が従来のEtBrよりも, PCR後の微弱バンドの確認に優れており,PCR酵素の選択との併用で現在のウイルス遺伝子検出法を高感度化出来る可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-11
更新日
-

収支報告書

文献番号
201234049Z