食品添加物等の遺伝毒性発がんリスク評価法に関する研究

文献情報

文献番号
201234043A
報告書区分
総括
研究課題名
食品添加物等の遺伝毒性発がんリスク評価法に関する研究
課題番号
H24-食品-一般-011
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
研究分担者(所属機関)
  • 續 輝久(九州大学大学院・医学研究院生体制御学講座)
  • 安井 学(国立医薬品食品衛生研究所・変異遺伝部)
  • 山田雅巳(国立医薬品食品衛生研究所・変異遺伝部)
  • 増村健一(国立医薬品食品衛生研究所・変異遺伝部)
  • 鈴木孝昌(国立医薬品食品衛生研究所・遺伝子細胞医薬部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝毒性は重要な発がんメカニズムの1つであり、遺伝毒性の有無と、性質(DNA反応性、もしくは非DNA反応性)は、食品添加物等の化学物質の発がんリスク評価を大きく左右する。すなわち、非DNA反応性発がん物質であれば一般に閾値があると考えられ、ADIの設定が可能であるが、DNA反応性発がん物質と評価された場合は、使用を禁止するか、許容リスクレベルを考慮した管理が必要となる。しかしながら、我が国においては、食品添加物に対して後者の手法は十分に開発されていない。遺伝毒性試験データを発がんリスク評価に利用するためには、試験結果の適切な量的評価が不可欠である。本研究では遺伝毒性試験データをヒト発がんリスク評価に利用するために、遺伝毒性の量的反応性を考慮した手法の開発を目指す。
研究方法
これまでの発がん物質のリスク評価の際に用いられてきた「遺伝毒性」と「閾値」に関するこれまでの議論をまとめた(本間)。DNA損傷1分子をゲノムに導入することで低用量暴露を模擬する実験系を最近確立した。1分子だけでなく、2分子の8-OxodGをゲノムに導入し、付加体の分子数と突然変異誘発頻度の関係性を定量的に明らかにした(安井)。Mutyh遺伝子欠損マウスでは自然発がんと、臭素酸カリウムに対する発がん誘発性が高い。遺伝毒性、発がん性に対する閾値形成機構について検討するために、比較的低用量域の臭素酸カリウムを経口投与して発がん実験を行った(續)。復帰突然変異試験(Ames試験)結果の定量化を目指す。発がん性物質が多く含まれる構造クラスの中で芳香族アミンを選び、発がん性とAmes試験の強さの相関を調査した(山田)。トランスジェニック齧歯類遺伝子突然変異試験(TG試験)のデータベースを基に定量的解析法の開発、および発がんリスク評価への利用を目的とし、既存のTG試験のデータベースを構築し、TG試験データと発がん性との相関を検討した(増村)。また、TG試験の定量的解析に有用な指標の開発を行った(鈴木)。
結果と考察
発がんリスク評価の際の「遺伝毒性」「閾値」「定量的評価」に関するこれまでの国際的議論をまとめた。閾値の有無にかかわらず遺伝毒性を定量化し、リスク評価に適応することが今後の主流になるものと考えられる。閾値の存在に関しては、酸化的DNA損傷の一つである8-OxodGの突然変異誘発には閾値は存在せず、数に比例した突然変異に誘発が確認された。一方、Mutyh遺伝子欠損マウスの実験から、臭素酸カリウムの発がん性に関して「閾値」が存在することを示唆する結果を得た。化学構造と遺伝毒性に関する調査では、変異原性を示す芳香族アミンと発がん性の強さは相関性が高いことが分り、構造クラスを考慮に入れることで定量的評価が可能になることが示唆された。TG試験の報告がある118の発がん性物質、22の非発がん物質についてデータベースに作成した。発がん性との相関はSensitivity: 71.2%、Specificity:68.2%であった。小核試験のSensitivity:46%、Specificity:54%であることを考えると(NIHSデータ)、TG試験は発がんリスク評価に適している。In vivo変異原性と発がん性の定量的相関について検討した。TG試験の定量的解析は、投与量あたり陰性対照群におけるバックグランド値の何倍に増加させたかにあたるFold-Increase /total doseをパラメータとして用いることにより、発がんとの定量的相関性を適切に比較することが可能となることが明らかとなった。
結論
今後の遺伝毒性リスク評価のための研究の方向性としては、以下の点が重要と考えられる。
①試験データからMode of Action (MOA)による閾値の決定
②試験データの重み付け(Weight of Evidence; WOE)
③In vivo試験データ(TG試験)の定量化
④化学構造による重み付け
⑤遺伝毒性試験データから発がん性への外挿
これらを考慮し、今後、遺伝毒性の量的反応性を考慮した発がんリスク評価手法の開発を目指す。


公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201234043Z