食品中の毒素産生微生物及び試験法に関する研究

文献情報

文献番号
201234025A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の毒素産生微生物及び試験法に関する研究
課題番号
H23-食品-一般-012
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
池原 強(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 安元 健(日本食品分析センター)
  • 玉那覇 康二(沖縄県衛生環境研究所 )
  • 鈴木 穂高(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 宮良 恵美(琉球大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
7,111,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
シガテラはサンゴ礁域に生息する魚類に起因する自然毒食中毒であり、年間2~6万人の被害が推定されている。我が国では沖縄県で多く発生しており、近年は他県での発生も増加している。また、輸入魚の検査に分析法が必要となるが、定量法開発に必要な標準毒のないことが障害となっていた。さらに、原因毒のシガトキシン類(CTXs)は、渦鞭毛藻によって生産され、食物連鎖によって移行するので、個体変化と地域差が大きく、有毒魚の蒐集も困難だった。本研究の目的は、CTXs毒組成既知の標準毒混合試料とCTXs主要成分の標準毒を作製し、LC-MS/MS分析法によるCTXsの同定・定量法を確立することにある。
研究方法
以下の項目の検討を行った。
①毒組成の解明
②CTXsの抽出・精製
③純度・含量の検定
④精製された標準毒の生物学的特性
結果と考察
沖縄、宮崎、南鳥島、ハワイで漁獲された8種の代表的シガテラ魚の毒組成を解明した。沖縄のフエダイ類、ハタ類ではCTX1Bを主体とし、54-deoxy類縁体が共存した。南鳥島産のバラフエダイとハワイ産のカンパチではCTX1B型とCTX3C型が共存していた。イシガキダイの毒組成は特異的で、沖縄では非酸化型のCTX4A/4Bを主体とし、宮崎産試料ではCTX3Cとその酸化体が主体であった。沖縄諸島の各地や過去20年間に蒐集した魚の毒組成は一定していた。この結果、沖縄諸島ではCTX1B型が、九州以北ではCTX3C型の標品が必要と判断された。
CTXsの抽出・精製の検討のため、沖縄産試料魚の抽出物について液-液分配、フロリジル、ODSによる処理を行った。一方、過去の低純度と判断された試料からも、CTX1Bのdeoxy体、CTX3Cの酸化体を微量ながら得ることができた。最も重要なCTX1BとCTX3Cは、0.1 mg前後の精製品を得ることができた。LC-MS に使用するCTX標準液は100 ppb (100 ng/mL)以下の濃度で良いので、現段階での精製品でも有用である。CTX1BとCTX3Cの精製品については、1H NMRとLC-MSで純度を検定し、単一であることを確認した。
結論
シガテラ食中毒対策を講ずる上で、マウス毒性試験の代替法としてLC-MS/MS分析法の活用・普及が期待されるが、それに必要な毒組成情報や調製法に関する基礎資料および主要成分のCTX標準試料を得ることができた。特に重要なCTX1BとCTX3Cについては精製標準品を一定量得た。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201234025B
報告書区分
総合
研究課題名
食品中の毒素産生微生物及び試験法に関する研究
課題番号
H23-食品-一般-012
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
池原 強(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 安元 健(日本食品分析センター)
  • 玉那覇 康二(沖縄県衛生環境研究所)
  • 鈴木 穂高(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 宮良 恵美(琉球大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
シガテラは、熱帯・亜熱帯域に生息する魚類に起因する自然毒食中毒である。国内では、従来の主発生地である沖縄から九州・本州沿岸域にまで拡大しており、食品衛生上の問題となっている。世界的にも水産物流通の拡大・多様化によって発生地が拡大し、推定患者数は毎年2~10万人に達している。シガテラ分析は、我が国を含む多くの国でマウス毒性試験法が用いられているが、精度や迅速性、動物愛護など問題が多いため機器分析などへの移行が望まれている。しかし、CTXs標準品の入手が困難であるため、代替法の研究および普及が進まないのが現状である。さらに、原因毒のシガトキシン類は、有毒渦鞭毛藻によって生産され、食物連鎖によって移行するので、個体変化と地域差が大きく、有毒魚の蒐集も困難だった。そこで、本研究の目的は、CTXs毒組成既知の標準毒混合試料(H23年度)とCTXs主要成分の標準毒を作製し(H24年度)、LC-MS分析法によるCTXsの同定・定量法を確立することにある。
研究方法
以下の項目の検討を行った。
1.毒組成の解明
2.シガテラ毒魚の蒐集
3.シガテラ魚の処理法の検討とシガテラ毒の有無の検査、CTXsの抽出・精製
4.純度・含量の検定
結果と考察
1.毒組成の解明:沖縄、宮崎、南鳥島、ハワイで漁獲された8種の代表的シガテラ魚の毒組成を解明した。沖縄のフエダイ類、ハタ類ではCTX1Bを主体とし、54-deoxy類縁体が共存した。南鳥島産のバラフエダイとハワイ産のカンパチではCTX1B型とCTX3C型が共存していた。イシガキダイの毒組成は特異的で、沖縄では非酸化型のCTX4A/4Bを主体とし、宮崎産試料ではCTX3Cとその酸化体が主体であった。沖縄諸島の各地や過去20年間に蒐集した魚の毒組成は一定していた。この結果、沖縄諸島ではCTX1B型が、九州以北ではCTX3C型の標品が必要と判断された。

2.有毒個体の蒐集:沖縄諸島で代表的なシガテラ魚81個体446.7 kgの試料魚を蒐集した。バラフエダイ、バラハタ、アカマダラハタでは92~100%の個体にCTX1Bが検出された。ただし、筋肉の毒含量は低く、CTX1Bが1 ppbを超える個体は少数であった。このため、精製の最終段階に達する前に各成分を同定・定量し、二次標品として使用可能な状態とした。

3.CTXsの抽出・精製:沖縄産試料魚の抽出物は、液-液分配、フロリジル、ODSによる処理を行った。一方、過去の低純度と判断された試料からも、CTX1Bのdeoxy体、CTX3Cの酸化体を微量ながら得ることができた。最も重要なCTX1BとCTX3Cは、0.1 mg前後の精製品を得ることができた。LC-MS に使用するCTX標準液は100 ppb (100 ng/mL)以下の濃度で良いので、現段階での精製品でも有用である。

4.純度・含量の検定:CTX1BとCTX3Cの精製品については、1H NMRとLC-MSで純度を検定し、単一であることを確認した。
結論
平成23年度は、54個体(総重量334.4kg)のシガテラ魚を蒐集した。抽出・精製のためのシガテラ魚の処理時間を従来の4~5分の1程度に短縮し、作業効率を著しく高めることができた。蒐集した魚について、LC/MS/MSによる分析を行った結果、92.5%の個体でCTXsが検出されたことから、CTXs標準毒混合試料作製に必要な原材料を効率よく確保することが出来た。標準毒混合試料作製に適した抽出、精製法としては、溶媒分配後のフロリジル、C18逆相カラム処理が有効なことを確認した。
 シガテラ食中毒対策を講ずる上で、マウス毒性試験の代替法としてLC-MS/MS分析法の活用・普及が期待されるが、平成24年度は、それに必要な毒組成情報や調製法に関する基礎資料および主要成分のCTX標準試料を得ることができた。特に重要なCTX1BとCTX3Cについては精製標準品を一定量得た。毒組成の解明によって、沖縄諸島ではCTX1B型が、九州以北ではCTX3C型の標品が必要と判断された。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201234025C

成果

専門的・学術的観点からの成果
沖縄、宮崎、南鳥島、ハワイで漁獲された8種の代表的シガテラ魚の毒組成を解明した結果、沖縄諸島ではCTX1B型が、九州以北ではCTX3C型の標品が必要と判断された。シガテラ食中毒対策を講ずる上で、マウス毒性試験の代替法としてLC-MS/MS分析法の活用・普及が期待されるが、本研究によって、それに必要な毒組成情報や調製法に関する基礎資料および主要成分のCTX標準試料を得ることができた。特に重要なCTX1BとCTX3Cについては精製標準品を一定量得た。
臨床的観点からの成果
平成24年中に沖縄県内で発生したシガテラについて、LC-MS/MS法と現在の公定法であるマウス毒性試験法を比較したところ、公定法を実施する前にLC-MS/MS分析により毒性値を推定することにより、マウス毒性試験法を補完する可能性を示唆する。また、原因食品廃棄物中の少量の魚肉検体からCTXsを検出したことから、食品残渣の少ない事例の場合、公定法の代替法となる可能性を示唆する。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
EUではシガテラ中毒をEmerging marine toxin に指定する一方、マウス試験法の廃止を決定した。本研究を参考に対策を検討すべく班員の安元健博士を加盟国研究員講習会及びAOACとの合同国際学会の演者に招聘し、将来の普及への方策を討議した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
13件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yogi, K.; Sakugawa, S.; Oshiro, N.et al
Determination of toxins involved in ciguatera fish poisoning in the Pacific by LC-MS
J. AOAC , 97 (2) , 398-402  (2014)
原著論文2
安元 健
海産自然毒中毒の最近の傾向
Mycotoxins , 63 (1) , 73-84  (2013)
原著論文3
與儀健太郎、大城直雅、松田聖子、佐久川さつき、松尾敏明、安元 健
奄美大島・加計呂麻島におけるシガテラ原因魚の毒組成解析
食品衛生学雑誌 , 54 (6) , 385-391  (2013)

公開日・更新日

公開日
2014-06-02
更新日
2018-07-03

収支報告書

文献番号
201234025Z