食中毒調査の精度向上のための手法等に関する調査研究

文献情報

文献番号
201234022A
報告書区分
総括
研究課題名
食中毒調査の精度向上のための手法等に関する調査研究
課題番号
H23-食品-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
砂川 富正(国立感染症研究所 感染症情報センター)
研究分担者(所属機関)
  • 春日 文子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 小沢 邦寿(群馬県衛生環境研究所)
  • 野田 衛(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 徳田 浩一(東北大学病院医療環境安全部)
  • 杉下 由行(東京都健康安全研究センター)
  • 窪田 邦宏(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 八幡 裕一郎(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 脇田 隆字(国立感染症研究所)
  • 岡部 信彦(川崎市健康安全研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 広域食中毒に関連する様々なエビデンスの収集、及び食中毒調査の方法論の整理・開発を有機的に連携させ、広域食中毒調査の精度向上のためのガイドライン策定を目指す。さらに、自治体・国における食品安全課題の優先順位付けや、広域食中毒事例探知の方法論開発へとつながる成果を提供することを目的とする。
研究方法
 まず、広域食中毒に関連する様々なエビデンスに関連して、食品媒介感染経路の占める比率と原因食品の推定として、(1)食中毒の原因となる食品の寄与率(アトリビューション)の推定方法の検討、 (2)自治体レベルでの食品の寄与率(アトリビューション)の検討、(3)宮城県および全国におけるCampylobacter、Salmonella、Vibrio parahaemolyticusに対する積極的食品由来感染症病原体サーベイランスならびに下痢症疾患の実態把握、(4)ノロウイルス食中毒事例調査の精度向上のための塩基配列データと疫学情報の共有化、(5)食中毒統計,NESFD情報および遺伝子型別結果を利用したノロウイルス食中毒事例の原因食品におけるカキの寄与率の推定、(6)東日本大震災の食中毒発生への影響に関する検討、(7)ノロウイルスゲノムの分子進化に関する塩基配列情報及び流行情報の日台比較、(8)地域における原因食品推定法の検討として、食鳥処理場で処理された鶏から分離される大腸菌の疫学調査、市販食肉におけるアルコバクターの汚染調査、牛肝臓からのEHECおよびカンピロバクター保菌調査を行った。
 また、広域散発食中毒事例の効率的な調査方法の開発・実施について、(9)広域食中毒疫学調査ガイドラインの作成の端緒として、自治体向けに広域食中毒調査票に関する利用マニュアル(案)を作成し、利用方法を検討するとともに、(10)英国における広域食中毒検出の仕組み(HPzone)に関する視察を行った。
結果と考察
 (1)においては十分に加熱した牛肉、十分に加熱した豚肉、十分に加熱した鶏肉に腸管出血性大腸菌(O157)感染症の発症と有意な相関が見られ、特に重要に加熱した牛肉への対策が優先的であると考えられた。(2)においては同居家族の健康状態と腸管出血性大腸菌(O157)感染症の発症とに有意な相関が見られ、また、同居家族の健康状態と生野菜の喫食との間にも有意な相関が見られた。(3)では平常時から散発事例等を含めたデータ収集を継続して行うアクティブサーベイランスの有効性およびその必要性が強調された。このようなサーベイランスシステムでは、菌の検出のみならず、下痢症発生率(有病率)、医療機関受診率および検便実施率等の情報も継続して調査を行なうことが有用であり、緊急事例の早期発見につながる可能性がある。(4)では2012/13シーズンのノロウイルスの流行において,流行のピーク前にGII/4の2012変異株の全国的流行拡大の可能性を情報提供出来たことで、食品衛生監視員の食中毒調査時の判断材料として有用な科学的根拠を提供することができたと考えられた。(5)については、食中毒統計から推定されるノロウイルス食中毒の原因食品におけるカキの寄与率は,実際の寄与率と比較して低いと考えられた。(6)では、岩手県においては食中毒発生に関与する震災の明らかな影響は認められなかったが、今後の発生動向や多様な視点(微生物学的、環境学的等)からの解析による、総合的な評価が必要と考えられた。(7)では、アジア近隣地域におけるウイルス感染症流行状況を比較した結果を示した。(8)では、食鳥処理場で処理された鶏から分離される大腸菌の疫学調査、市販食肉におけるアルコバクターの汚染調査、牛肝臓からのEHECおよびカンピロバクター保菌調査を今後も継続・監視していくことにより、地域の食中毒調査における原因食品の推定に寄与できることが示唆された。(9)では、作成した調査票を用いて円滑な調査を実施できることが確認された。(10)では、我が国で広域散発食中毒事例対策のためシステムを構築する際に、迅速な対応をとるために必要な情報を効率よく収集するための仕組みとして、既に一定の成功を収めている英国のシステムから有用な知見を得られたと考えられる。
結論
 様々な視点での疫学情報の収集及び比較と広域散発食中毒事例との対策の検討を相互に有機的に連携させ、全国規模だけでなく各自治体で応用可能な原因食品の特徴把握手法、広域食中毒事例探知方法、ならびに同一データベースの活用に結びつくような成果を提供することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2013-07-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201234022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
17,000,000円
(2)補助金確定額
16,995,000円
差引額 [(1)-(2)]
5,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,756,393円
人件費・謝金 75,000円
旅費 3,654,556円
その他 6,509,278円
間接経費 0円
合計 16,995,227円

備考

備考
自己資金227円

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-