文献情報
文献番号
201234020A
報告書区分
総括
研究課題名
生鮮食品を共通食とする原因不明食中毒の発症機構の解明
課題番号
H23-食品-一般-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大西 貴弘(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部第4室)
研究分担者(所属機関)
- 小西 良子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
- 鎌田 洋一(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
- 野崎 智義(国立感染症研究所 寄生動物部)
- 黒田 誠(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析センター)
- 八幡 裕一郎(国立感染症研究所 感染情報センター)
- 佐藤 宏(山口大学 農学部)
- 久米田 裕子(大阪府立公衆衛生研究所 細菌課)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
近年、生鮮魚介類もしくは獣肉を共通食とする原因不明食中毒が増加している。これまでの申請者らの研究から、生鮮魚介類の場合ではKudoa septempunctataが、獣肉、特に馬肉の場合ではSarcocystis fayeriが原因微生物の一つであることを明らかにしている。本研究ではこれらの寄生虫の毒性メカニズムを明らかにし、原因不明食中毒の発症防止策を策定することを目的とする。
研究方法
K. septempunctataおよびS. fayeriによる食中毒の発生を防止するためには、食中毒発生メカニズムを明らかにすることが必要である。そのために本研究課題では、これらの食中毒発生メカニズムを細胞生物学的、遺伝子生物学的解析から明らかにしようと試みた。また、これらの食中毒では本格的な疫学研究はほとんどなされていない。そこで、疫学的調査・解析もあわせて行った。さらにK. septempunctataによる食中毒発生を防ぐためには、養殖場へ感染稚魚が侵入することや感染ヒラメが養殖場から出荷されるのを阻止するのが有効な対策として考えられるため、誰にでも使用できる免疫学的迅速検査法の開発も昨年度より継続して行った。また、ヒラメ以外の魚にもクドア属に属する粘液胞子虫が寄生していることが知られている。そこで、K. septempunctata以外のクドア属の寄生実態に関しても調査を継続して行った。
結果と考察
K. septempunctataに関する進捗状況
K. septempunctataがヒト腸管細胞に侵入する過程で、未知の物質がK. septempunctataもしくは腸管細胞から放出され、この物質が腸管のクロム親和性細胞に作用し、この細胞がセロトニンを放出することにより嘔吐が引き起こされることを示唆する結果が得られた。今後この未知の物質の同定を進める。また、乳のみマウス試験の結果、K. septempunctata胞子による腸管内液体貯留(FA)値の上昇は投与後30分には始まり、その上昇は一過性であることがわかった。さらに抗クドア抗体を用いた免疫染色の結果、胞子は腸管内に到達するとすぐに腸上皮に接着・侵入すると考えられた。また、K. septempunctataの虫体成分がToll-like receptor2を刺激し、自然免疫系を活性化することを明らかにした。また現場からの要望が強かった患者便からの K. septempunctata 遺伝子検出法を確立した。K. septempunctataに対する抗体作製をさらに進め、免疫学的迅速診断法の開発を行っている。さらに疫学的解析に必要な情報収集を継続的に行い解析している。メジマグロの生食による食中毒が増加しているため、食中毒残品のメジマグロの網羅的DNA解析を行ったが、明確な病原体は存在しないことを確認した。また今年度中にK. septempunctataとメジマグロに寄生するK. neotuneゲノム配列の概要を決定できる見込みである。クロマグロやキハダマグロに寄生するK. neothunniについて遺伝学的分類を行ったところ、海域もしくは宿主による複数の系統の存在が確認された。また、マグロやマサバ等に寄生する4つの極嚢をもつKudoa種について、更に複数の未確認種の存在が示唆されており、これらの特徴づけを行っている。淡水産魚類からのHenneguya-Myxobolus属について種確認を進め、生活環についての解析する実験室解析を目指した。平成25年度は日本国内で消費される生鮮魚類寄生のKudoa種の更なる網羅を目指して研究と、交替宿主(環形動物)特定による生活環解明への調査を手がけたい。
S. fayeriに関する進捗状況
馬肉による食中毒の原因であるS. fayeriの毒素タンパク質の培養腸管上皮細胞への細胞毒性を検討した。同タンパク質は直接的な細胞毒性を示さず、毒素の作用は間接的になされて下痢が誘発するものと考えられた。また、最近問題になっているシカ肉を喫食しての有症苦情事例を解析したところ、加熱不十分なシカ肉中に3種類の住肉胞子虫を確認した。それらが原因で下痢症状を誘発するものと考えられた。また、生馬肉からザルコシストを単離しライブラリを作成し、ゲノム解析を進めている。
K. septempunctataがヒト腸管細胞に侵入する過程で、未知の物質がK. septempunctataもしくは腸管細胞から放出され、この物質が腸管のクロム親和性細胞に作用し、この細胞がセロトニンを放出することにより嘔吐が引き起こされることを示唆する結果が得られた。今後この未知の物質の同定を進める。また、乳のみマウス試験の結果、K. septempunctata胞子による腸管内液体貯留(FA)値の上昇は投与後30分には始まり、その上昇は一過性であることがわかった。さらに抗クドア抗体を用いた免疫染色の結果、胞子は腸管内に到達するとすぐに腸上皮に接着・侵入すると考えられた。また、K. septempunctataの虫体成分がToll-like receptor2を刺激し、自然免疫系を活性化することを明らかにした。また現場からの要望が強かった患者便からの K. septempunctata 遺伝子検出法を確立した。K. septempunctataに対する抗体作製をさらに進め、免疫学的迅速診断法の開発を行っている。さらに疫学的解析に必要な情報収集を継続的に行い解析している。メジマグロの生食による食中毒が増加しているため、食中毒残品のメジマグロの網羅的DNA解析を行ったが、明確な病原体は存在しないことを確認した。また今年度中にK. septempunctataとメジマグロに寄生するK. neotuneゲノム配列の概要を決定できる見込みである。クロマグロやキハダマグロに寄生するK. neothunniについて遺伝学的分類を行ったところ、海域もしくは宿主による複数の系統の存在が確認された。また、マグロやマサバ等に寄生する4つの極嚢をもつKudoa種について、更に複数の未確認種の存在が示唆されており、これらの特徴づけを行っている。淡水産魚類からのHenneguya-Myxobolus属について種確認を進め、生活環についての解析する実験室解析を目指した。平成25年度は日本国内で消費される生鮮魚類寄生のKudoa種の更なる網羅を目指して研究と、交替宿主(環形動物)特定による生活環解明への調査を手がけたい。
S. fayeriに関する進捗状況
馬肉による食中毒の原因であるS. fayeriの毒素タンパク質の培養腸管上皮細胞への細胞毒性を検討した。同タンパク質は直接的な細胞毒性を示さず、毒素の作用は間接的になされて下痢が誘発するものと考えられた。また、最近問題になっているシカ肉を喫食しての有症苦情事例を解析したところ、加熱不十分なシカ肉中に3種類の住肉胞子虫を確認した。それらが原因で下痢症状を誘発するものと考えられた。また、生馬肉からザルコシストを単離しライブラリを作成し、ゲノム解析を進めている。
結論
今年度までの研究結果からK. septempunctataおよびS. fayeriの食中毒発症メカニズムのについてかなりの部分が明らかになってきた。来年度も細胞生物学、遺伝学、ゲノム解析、疫学および検査法構築など多角的な方面から研究を進め、K. septempunctataおよびS. fayeriの食中毒発症メカニズムを明らかにしていきたい。
公開日・更新日
公開日
2013-06-24
更新日
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