文献情報
文献番号
201234018A
報告書区分
総括
研究課題名
食品を介する伝達性海綿状脳症のリスクと対策等に関する研究
課題番号
H23-食品-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
堀内 基広(北海道大学 大学院獣医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 新 竜一郎(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 北本 哲之(東北大学 医学系研究科 創成応用医学研究センター)
- 坂口 末廣(徳島大学 疾患酵素学研究センター)
- 柴田 宏昭(独立行政法人医薬基盤研究所・霊長類医科学研究センター)
- 堂浦 克美(東北大学 医学系研究科 創成応用医学研究センター)
- 飛梅 実(国立感染症研究所)
- 萩原 健一(国立感染症研究所)
- 福田 茂夫(北海道総合研究機構 畜産試験場)
- 室井 喜景(帯広畜産大学 畜産学部)
- 村山 裕一(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所)
- 横山 隆(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
47,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
大きな社会問題となった定型BSEは、飼料規制などの管理措置により発生は減少している。しかし、非定型BSE、非定型スクレイピー、鹿の慢性消耗病(CWD)など、性質が良くわかっていない伝達性海綿状脳症(プリオン病)が存在する。本研究は、1)動物プリオン病の性状解析によりヒトおよび動物への感染リスクの解明、2)プリオン病の感染・伝播・発病機構の解明、および、3)我が国に存在しない伝達性海綿状脳症への対策、に資する知見を得ることを目的とする。
研究方法
1)非定型BSEの病態および動物プリオン病のヒトへの感染リスクの解明:非定型および定型BSE感染牛およびカニクイザルの運動機能、学習記憶能、および感染病態を解析する。
2)BSEの起源の推定:異常型プリオンタンパク質を増幅可能なPMCAおよびQUIC法を応用して、試験管内でBSE様プリオンの産生について解析する。
3)プリオンの伝播・増殖機構および発病機構の解明:初代神経培養細胞系と感染動物を用いて、プリオンの伝播・増速機構と、神経変性機構を解析する。
4)我が国に存在しない動物プリオン病の対策整備:CWDのサーベイランスを実施するとともに、非定型スクレイピーの診断法を整える
2)BSEの起源の推定:異常型プリオンタンパク質を増幅可能なPMCAおよびQUIC法を応用して、試験管内でBSE様プリオンの産生について解析する。
3)プリオンの伝播・増殖機構および発病機構の解明:初代神経培養細胞系と感染動物を用いて、プリオンの伝播・増速機構と、神経変性機構を解析する。
4)我が国に存在しない動物プリオン病の対策整備:CWDのサーベイランスを実施するとともに、非定型スクレイピーの診断法を整える
結果と考察
1)非定型BSEの病態および動物プリオン病のヒトへの感染リスクの解明
・非定型BSE感染ウシの行動量と聴性脳幹誘発電位の測定を継続してきたが、15ヶ月齢まで特徴的な変化は認められていない。接種後14ヶ月で軽度の蹌踉が認められたが、客観的な臨床症状の記録は難しい。
・非定型BSEのヒトへのリスクを調べる目的で、平成23年度に非定型BSEを経口投与したカニクイザルの経過観察、学習記憶解析を継続している。定期的に、血液、尿、唾液、脳脊髄液の採取を実施している。
・定型BSE牛脳乳剤を経口投与後、7年を経過した未発症サルの解剖時に採取した尿から連続PMCA法によりPrPScが検出できたことから、尿がプリオン病の生前診断に応用できる可能性が示唆された。
2)BSEの起源の推定
・組み換えヒトPrPを使用すると非定型BSEが効率良く増幅し、非定型BSEプリオンを標的としたQUIC法の実施が可能となった。
・定型BSEは増幅するが非定型BSEを増幅しないPMCA法と非定型BSEプリオンを特異的に増幅するQUIC法を組み合わせることで、微量の非定型BSEと定型BSEを区別することが可能になったことから、今後これらを応用して非定型BSEが定型BSEの起源となるかをin vitroで推定する。
3)プリオンの伝播・増殖機構および発病機構の解明
・神経細胞の初代培養細胞が、プリオンの増殖に伴い前シナプスマーカーの発現低下を伴う神経変性が生じることから、プリオン感染に伴う神経変性の培養細胞モデルとなることを見出した。
・プリオン病の病態進行に伴うミクログリアの遺伝子発現変化を詳細に解析し、ミクログリアが炎症促進性・組織傷害性の活性化状態にシフトすることを明らかにした。
・プリオン感染により、細胞内のゴルジ装置から細胞膜への小胞輸送が障害されることを明らかにした。
4)我が国に存在しない動物プリオン病の対策整備
・北海道と本州のシカでCWDモニタリングを継続しているがCWD陽性個体は検出されていない。
・CWDと非定型スクレイピーの検査法に関して、カナダ食品検査庁オタワ研究所を (CDWとスクレイピーのOIEリファレンスラボ) 訪問して連携を強化し、モニタリング方法に関する新規知見と技術の提供を受けた。
・非定型BSE感染ウシの行動量と聴性脳幹誘発電位の測定を継続してきたが、15ヶ月齢まで特徴的な変化は認められていない。接種後14ヶ月で軽度の蹌踉が認められたが、客観的な臨床症状の記録は難しい。
・非定型BSEのヒトへのリスクを調べる目的で、平成23年度に非定型BSEを経口投与したカニクイザルの経過観察、学習記憶解析を継続している。定期的に、血液、尿、唾液、脳脊髄液の採取を実施している。
・定型BSE牛脳乳剤を経口投与後、7年を経過した未発症サルの解剖時に採取した尿から連続PMCA法によりPrPScが検出できたことから、尿がプリオン病の生前診断に応用できる可能性が示唆された。
2)BSEの起源の推定
・組み換えヒトPrPを使用すると非定型BSEが効率良く増幅し、非定型BSEプリオンを標的としたQUIC法の実施が可能となった。
・定型BSEは増幅するが非定型BSEを増幅しないPMCA法と非定型BSEプリオンを特異的に増幅するQUIC法を組み合わせることで、微量の非定型BSEと定型BSEを区別することが可能になったことから、今後これらを応用して非定型BSEが定型BSEの起源となるかをin vitroで推定する。
3)プリオンの伝播・増殖機構および発病機構の解明
・神経細胞の初代培養細胞が、プリオンの増殖に伴い前シナプスマーカーの発現低下を伴う神経変性が生じることから、プリオン感染に伴う神経変性の培養細胞モデルとなることを見出した。
・プリオン病の病態進行に伴うミクログリアの遺伝子発現変化を詳細に解析し、ミクログリアが炎症促進性・組織傷害性の活性化状態にシフトすることを明らかにした。
・プリオン感染により、細胞内のゴルジ装置から細胞膜への小胞輸送が障害されることを明らかにした。
4)我が国に存在しない動物プリオン病の対策整備
・北海道と本州のシカでCWDモニタリングを継続しているがCWD陽性個体は検出されていない。
・CWDと非定型スクレイピーの検査法に関して、カナダ食品検査庁オタワ研究所を (CDWとスクレイピーのOIEリファレンスラボ) 訪問して連携を強化し、モニタリング方法に関する新規知見と技術の提供を受けた。
結論
1)非定型BSE感染脳内接種ウシは、接種後14ヶ月より、走行時に若干の後肢の蹌踉が見られ、急速に進行して病末期に陥る経過をたどることを確認した。非定型BSEの経口感染による人へのリスクの解析を進めるため、サルに非定型BSE牛脳乳剤を経口投与し、行動観察と採材を継続している。また、プリオン病の生前診断に尿が応用できる可能性が示唆された。
2)定型BSEは増幅するが非定型BSEを増幅しないPMCA法と非定型BSEプリオンを特異的に増幅するQUIC法を組み合わせることで、非定型BSEが定型BSEの起源となるかをin vitroで推定することが可能となった。
3)プリオン病の病態進行に伴い、ミクログリアが炎症促進性・組織傷害性の活性化状態にシフトすることを明らかにした。大脳皮質由来初代培養神経細胞が、プリオン感染に伴う神経変性の培養細胞モデルとなることを示した。
4)CWDと非定型スクレイピーに関して、特徴的な陽性像や判定の難しい陰性像などを集録した標準標本の資料を作成して、我が国でのモニタリングに活用する必要性を認識した。
2)定型BSEは増幅するが非定型BSEを増幅しないPMCA法と非定型BSEプリオンを特異的に増幅するQUIC法を組み合わせることで、非定型BSEが定型BSEの起源となるかをin vitroで推定することが可能となった。
3)プリオン病の病態進行に伴い、ミクログリアが炎症促進性・組織傷害性の活性化状態にシフトすることを明らかにした。大脳皮質由来初代培養神経細胞が、プリオン感染に伴う神経変性の培養細胞モデルとなることを示した。
4)CWDと非定型スクレイピーに関して、特徴的な陽性像や判定の難しい陰性像などを集録した標準標本の資料を作成して、我が国でのモニタリングに活用する必要性を認識した。
公開日・更新日
公開日
2013-06-24
更新日
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