食品用器具・容器包装及び乳幼児用玩具の安全性向上に関する研究

文献情報

文献番号
201234012A
報告書区分
総括
研究課題名
食品用器具・容器包装及び乳幼児用玩具の安全性向上に関する研究
課題番号
H22-食品-一般-015
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
河村 葉子(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 六鹿 元雄(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 阿部 裕(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
9,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 食品用器具・容器包装及び乳幼児用玩具は、食品衛生法の食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示370号)によりその安全性が担保されているが、制定されてから長い年月が経過し様々な課題がみられる。そこで、それらの規格基準の見直しや規格基準改正の基礎となる調査研究を行う。
研究方法
 国内外の法規制や文献等を収集するとともに、器具・容器包装や玩具の材質や溶出に関する試験法の開発、試験条件の設定、各種製品の試験検査等を行った。
結果と考察
 合成樹脂製器具・容器包装の安全性向上では、規格基準のうち溶出規制の根幹となる蒸発残留物試験について、使用温度区分、標準的な溶出試験条件、食品分類、試験溶液調製法、キャップ用密封材試験法、溶出量表記、規格値、脂肪性食品の溶出量補正係数等について検討を行ってきた。今年度は、蒸発残留物試験の試験条件の最終案をまとめるとともに、欧州規格EN1186のオリブ油総溶出量試験法をもとに改良法を加味した植物油総溶出量試験法を作成した。また、過マンガン酸カリウム消費量試験から全有機炭素試験への切り換え、ポリカーボネート個別規格の全面的な見直し、ポリ塩化ビニリデンのバリウム規格の削除を提案した。さらに蒸発残留物試験以外の溶出試験についても溶出試験条件の見直しを行った。これまでの研究成果をもとに、食品、添加物等の規格基準のうち合成樹脂製器具・容器包装に関わる規格の改正原案を作成した。
 ゴム製器具・容器包装の安全性向上では、今年度は食品衛生法におけるゴムと合成樹脂の区分について検討を行い、「ゴムとは、熱可塑性がなく、化学的共有結合(化学架橋)によりゴム弾性を示す高分子物質であり、化学架橋のために配合した添加剤も含む」という定義を提案した。また、熱可塑性エラストマーの実態を調査してそれらの区分を明確にし、蒸発残留物試験以外の溶出試験について試験条件の見直しを行った。さらに、これまでの研究結果をもとに、食品、添加物等の規格基準のゴム製器具及び容器包装に関わる規格の改正原案を作成した。
乳幼児用玩具の安全性向上に関しては、改定欧州玩具指令で強化された有害物質規制のうち、これまでに17種類の有害元素、発ガン性、変異原性及び生殖毒性を有する物質(CMR物質)のカテゴリー1A及び1Bに属する塩化ビニルモノマー、1,3-ブタジエン、アクリロニトリル等を試験した。今年度はカテゴリー1A、1B及び2に属する芳香族第一級アミン類28種類について、市場に流通するポリウレタン、ナイロン及び繊維製玩具を試験した。さらに繊維製玩具については、EN71で規格が定められている着色料15種類も試験した。それらの大部分は残存が認められず、残存していても残存量はEUが設定する限度値を大幅に下回っており、水への溶出量も微量であり、安全性に懸念は認められなかった。
 器具・容器包装及び玩具に残存する化学物質に関しては、金属製焼き網皮膜中の亜鉛、クロム、ニッケル、銅などの金属類の含有量及び溶出量の分析を行った。また、ナノ銀抗菌剤の使用実態を調査するとともに、含有される銀、亜鉛等の含有量及び溶出量を測定し従来の銀抗菌剤と比較した。さらに、我が国の国産及び輸入缶詰食品中のビスフェノールA含有量を調査し、国産缶詰中のビスフェノールA含有量が輸入品やこれまでの報告と比較して低いことを明らかにした。
結論
 以上の研究成果は、我が国の器具・容器包装及び玩具の安全性向上と食品衛生行政の発展に大きく貢献するものと考える。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201234012B
報告書区分
総合
研究課題名
食品用器具・容器包装及び乳幼児用玩具の安全性向上に関する研究
課題番号
H22-食品-一般-015
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
河村 葉子(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 六鹿 元雄(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 阿部 裕(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 食品用器具・容器包装及び乳幼児用玩具は、食品衛生法の食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示370号)によりその安全性が担保されているが、制定されてから長い年月が経過し様々な課題がみられる。そこで、それらの規格基準の見直しや規格基準改正の基礎となる調査研究を行う。
研究方法
海外や国内の法規制や文献等を収集するとともに、器具・容器包装や玩具の材質や溶出に関する試験法の開発、試験条件の設定、各種製品の試験検査等を行った。
結果と考察
 合成樹脂製器具・容器包装の安全性向上では、規格基準のうち溶出規制の根幹となる蒸発残留物試験の見直しを行い、使用温度区分、溶出試験条件、食品分類、試験溶液調製法、キャップ用密封材試験法、溶出量表記、規格値、脂肪性食品の溶出量補正係数などの改正について提案を行うとともに、植物油総溶出量試験法を作成した。また、過マンガン酸カリウム消費量試験から全有機炭素試験への切り換え、ポリカーボネート個別規格の全面的な見直し、ポリ塩化ビニリデンのバリウム規格の削除、蒸発残留物試験以外の溶出試験の試験条件の見直しについても提案した。これまでの研究成果をもとに、食品、添加物等の規格基準のうち合成樹脂製器具・容器包装に関わる規格の改正原案を作成した。
 ゴム製器具・容器包装の安全性向上では、これまで試験が困難であったシリコーンゴム製品中のカドミウム及び鉛試験法を確立した。さらに蒸発残留物試験の試験条件について検討した。また、今回提案している試験条件は現行よりかなり厳しくなることから規格値は200μg/cm2が妥当と結論した。食品衛生法におけるゴムの定義や合成樹脂との区分、蒸発残留物試験以外の溶出試験について試験条件の見直しを行った。さらに、これまでの研究結果をもとに、食品、添加物等の規格基準のゴム製器具及び容器包装に関わる規格の改正原案を作成した。
 乳幼児用玩具の安全性向上に関しては、2009年に大幅改正された欧州玩具指令における有害物質規制の対象物質について、我が国の市場流通玩具を試験し実態調査を行った。17種類の有害元素ではアルミニウム、ホウ素、亜鉛の溶出量の高いものが散見された。一方、発がん性等でカテゴリー1A、1Bまたは2に分類される塩化ビニルモノマー、ベンゼン、1,3-ブタジエン、アクリロニトリル、芳香族第一級アミン類等では、大部分の化合物は検出されず、残存がみられた物質も残存量はEUの限度値を大幅に下回っており、水への溶出量も微量であり、安全性に懸念は認められなかった。
 器具・容器包装及び玩具に残存する化学物質に関しては、試験法、製品中の残存量、溶出量、食品への移行量等の調査を行い、それらの実態を明らかにした。ポリメタクリル酸メチル製品中の揮発性化合物の溶出量、ラミネートフィルム中のイソシアネート及びアミン類の残存量、金属製焼き網皮膜中の6価クロム及び金属類、シリコーンゴム製調理器具から食品への環状ポリジメチルシロキサンの移行、ポリカーボネート製品中のトリエチルアミン及びトリブチルアミン分析法、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いた合成樹脂に含まれる有害金属の分析法、ナノ銀抗菌剤の実態調査、国産缶詰食品中のビスフェノールA含有量の調査及び検討を行った。いずれの結果も安全性に懸念は認められなかった。
結論
 以上の研究成果は、我が国の器具・容器包装及び玩具の食品衛生行政の発展に大きく貢献するとともに、安全性向上に大きく寄与するものと考える。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201234012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまで報告があまりない6価クロム、イソシアネート類、芳香族第一級アミン類、1,3-ブタジエン、アクリロニトリルなどの試験法を開発し、各種器具・容器包装及び玩具中の残存量や擬似溶媒への溶出量などを分析した。
臨床的観点からの成果
我が国の器具・容器包装及び玩具について、各種化学物質等の汚染の実態を明らかにした。また、我が国の缶詰食品中のビスフェノールAやナノ銀抗菌剤使用製品の実態、シリコーン製調理器具から食品へのポリジメチルシロキサンの移行等についても明らかにした。
ガイドライン等の開発
食品、添加物等の規格基準(告示370号)に収載される合成樹脂製及びゴム製器具及び容器包装の規格基準について、蒸発残留物試験を中心に大幅な見直しを行い、広範囲に及ぶ改正原案を作成して提案した。
その他行政的観点からの成果
平成22年度に開発したシリコーンゴム製器具・容器包装中のカドミウム及び鉛の試験法は、現行法で試験が困難であったことから、平成23年度の薬事・食品衛生審議会で審議され、平成24年12月28日付厚生労働省告示第595号により器具及び容器包装の規格基準に収載された。
その他のインパクト
缶詰食品中のビスフェノールA含有量についてアメリカ化学会で発表したところ、欧州食品安全機関(EFSA)より2013年6月に行われるビスフェノールAのリスク評価に使用したいとの連絡があり、研究結果を提供した。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
19件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
5件
シンポジウム、学会、セミナーなどで講演を行い、研究内容をもとに啓発活動を行った。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ohno, H., Kawamura, Y.
Residual analysis of acrylonitrile, 1,3-butadiene and related compounds in acrylonitrile butadiene styrene copolymers for kitchen utensils and children’s toys by headspace gas chromatography/mass spectrometry
Journal of AOAC International , 93 (6) , 1965-1971  (2010)
原著論文2
尾崎麻子,大嶋智子,大垣寿美子,河村葉子
ポリ乳酸製器具・容器包装の規格試験及びその他溶出物質の検討
食品衛生学雑誌 , 51 (5) , 220-227  (2010)
原著論文3
六鹿元雄,山口未来,大野浩之,河村葉子
ナイロン製品からのモノマー及び芳香族第一級アミン類の溶出
食品衛生学雑誌 , 51 (5) , 228-236  (2010)
原著論文4
大野浩之,鈴木昌子,河村葉子
4種擬似溶媒による合成樹脂製食品用器具の蒸発残留物量の検討
食品衛生学雑誌 , 52 (1) , 66-70  (2011)
原著論文5
六鹿元雄,建部千絵,平原嘉親,河村葉子
洗浄剤中のメタノール試験法
食品衛生学雑誌 , 53 (1) , 28-32  (2012)
原著論文6
金子令子,羽石奈穂子河村葉子
塩素系ゴムの2-メルカプトイミダゾリン分析法の改良
食品衛生学雑誌 , 53 (1) , 52-56  (2012)
原著論文7
六鹿元雄,山口未来,平原嘉親,河村葉子
洗浄剤中のヒ素試験法および鉛試験法
日本食品化学学会誌 , 19 (2) , 88-93  (2012)
原著論文8
Ohno, H., Mutsuga, M., Kawamura, Y.
Identification and quantitation of volatile organic compounds in poly(methyl methacrylate) kitchen utensils by headspace gas chromatography/mass spectrometry
Journal of AOAC International , 96  (2013)
原著論文9
Abe, Y., Yamaguchi, M., Mutsuga, M., Akiyama, H., Kawamura, Y.
Volatile Substances in Polymer Toys made from Butadiene and Styrene
American Journal of Analytical Chemistry , 4  (2013)
原著論文10
岸 映里,尾崎麻子,大嶋智子他
マイクロウェーブ分解およびICP-MSを用いた合成樹脂製器具・容器包装中の有害元素の迅速分析法
日本食品化学学会誌 , 20  (2013)
原著論文11
Mutsuga, M., Yamaguchi, M., Kawamura, Y.
Analysis of N-nitrosamine migration from rubber teats and soothers
American Journal of Analytical Chemistry , 4  (2013)

公開日・更新日

公開日
2014-06-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201234012Z