畜水産食品における動物用医薬品等の安全性確保に関する研究

文献情報

文献番号
201234006A
報告書区分
総括
研究課題名
畜水産食品における動物用医薬品等の安全性確保に関する研究
課題番号
H22-食品-一般-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 淳(国立大学法人東京農工大学 大学院農学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 梅村 隆志(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 鈴木 和彦(国立大学法人東京農工大学 大学院農学研究院)
  • 九郎丸 正道(東京大学 大学院農学生命科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
7,007,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
動物薬の発がん性に関して早期予測指標の探索や発がん機序の解明による安全性の評価法の確立を目指し、牛海綿状脳症の特定危険部位に関しては背根神経節の完全除去法の確立を目指す。
研究方法
24年度は、発がん予測指標分子の探索では、ラット発がんプロモーション過程早期に誘発される各種臓器の前がん病変や過形成病変について、短期発がん予測指標候補分子の免疫組織化学染色による分布解析を行った。ニトロフラン類の安全性評価法の確立研究では、雌雄のgpt deltaラットにnitrofurantoin (NFT)を投与し、腎臓での8-OHdGレベルの測定と突然変異のスペクトラム解析を行った。CYP1A inducerの複合投与によるラット肝発がん修飾作用の解明研究では、CYP1A inducerであるindole-3-carbinol (I3C)とCYP2B/1A inducerであるphenobarbital (PB)、あるいはPBと CYP2B inducerであるorphenadrine (ORPH) の併用投与によるプロモーション修飾作用を検討した。背根神経節の除去に関する研究では、と畜場における前方3/4の神経節の完全除去の可否と除去率の品種差・性差を検討した。
結果と考察
短期発がん予測指標候補分子の解析では、各臓器の前がん病変内及び過形成病変内に共通して、M期に停滞して染色体不安定性を示す細胞の増加が見出されたが、甲状腺ではさらに細胞周期チェックポイント機能の破綻が示唆された。NFTはラット腎に雌雄を問わず酸化的DNA傷害を引き起こし、雄ではα2u-globulin沈着に伴う細胞増殖活性亢進の腎発がん機序への寄与を明らかにした。PBとI3Cの組み合わせでは肝発がんプロモーション作用は増強されなかったが、PBとORPHの併用により酸化的ストレスが関与した相乗的な増強が認められた。背根神経節の除去率は平均92%であったが、100%の除去達成は10%に過ぎず、品種差・性差は認められなかった。
結論
短期発がん予測指標候補分子の発がん過程への寄与が判明した。NFTによる腎発がんに酸化的DNA傷害とα2u-globulin腎症の関与が見出された。誘導酵素の異なる発がん物質の併用投与では発がんは増強されないことが見出された。背根神経節の除去には更なる技術改良が必要である。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201234006B
報告書区分
総合
研究課題名
畜水産食品における動物用医薬品等の安全性確保に関する研究
課題番号
H22-食品-一般-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 淳(国立大学法人東京農工大学 大学院農学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 梅村 隆志(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 鈴木 和彦(国立大学法人東京農工大学 大学院農学研究院)
  • 九郎丸 正道(東京大学 大学院農学生命科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
動物薬の発がん性に関して早期予測指標の探索や発がん機序の解明による安全性の評価法の確立を目指し、牛海綿状脳症の特定危険部位に関しては背根神経節の完全除去法の確立を目指す。
研究方法
発がん予測指標分子の探索では、発がん物質のラット28日間反復投与により肝発がん物質に共通して反応した指標候補を抽出し、次に標的臓器の異なる発がん物質に対する反応性を検討した。更に、各臓器の前がん病変および過形成病変に対する反応性も検討した。CYP1A inducerの複合投与によるラット肝発がん修飾作用の解明研究では、CYP1A inducer同士、CYP1A inducerとCYP1A/2B またはCY2B/1A inducer及びCYP2B inducer同士の併用投与による発がんプロモーション修飾作用を検討した。ニトロフラン類の安全性評価法の確立研究では、gpt deltaラット及びp53遺伝子欠損gpt delta マウスを用いて、ニトロフラン類の化学構造に依存したin vivo 変異原性を検索した。背根神経節の除去に関する研究では、前方3/4の神経節のと畜場における完全除去の可否と除去率の品種差・性差を検討した。
結果と考察
短期発がん予測指標候補分子の解析では、28日間の投与で発がん標的細胞が増殖亢進を示した発がん物質はM期異常を反映した分子の発現変化を示し、増殖性病変の形成への関与も示唆された。CYP inducerの複合投与では、誘導するCYPが同じ化合物同士の併用投与での肝発がんプロモーション作用の増強が示唆された。Nitrofurantoin (NFT)はラット腎に雌雄を問わず酸化的DNA傷害を引き起こし、雄ではα2u-globulin沈着に伴う細胞増殖活性亢進の腎発がん機序への寄与を明らかにしたが、p53遺伝子型による変異原性に差異は見られなかった。背根神経節の除去率は平均92%であったが、100%の除去達成は10%に過ぎず、品種差・性差は認められなかった。
結論
M期異常分子は短期発がん予測指標としての可能性が示唆された。CYP inducerの組み合わせによる発がん影響の変化が示唆された。NFTによる腎発がんに酸化的DNA傷害とα2u-globulin腎症の関与が見出された。背根神経節の除去には更なる技術改良が必要である。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201234006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究で見出されたM期異常分子は28日間反復投与試験の枠組みで発がんを予測し得る指標としての可能性が見出された。CYP inducerの組み合わせによる発がん影響の違いは複合暴露によるADIの設定に有用な情報を与える。NFTによる腎発がんに酸化的DNA傷害とα2u-globulin腎症の関与が見出され、ニトロフラン類のリスク評価に重要な基礎資料となり得る。
臨床的観点からの成果
今回の研究成果には、臨床的事項に該当する物は含まれていない。
ガイドライン等の開発
巨大核出現に関与する標的遺伝子の探索で見出された、細胞周期関連分子は発がん標的性の異なる発がん物質に共通して反応する短期発がん予測指標としての有用性が期待できる。
その他行政的観点からの成果
ニトロフラン類にin vivo変異原性が確認されたことより、ヒトにも潜在的な発がんリスクがある可能性が見出され、今後これらの物質のリスク評価の際に重要な基礎資料となり得る。また、CYP inducerの複合暴露は、酵素誘導性の組み合わせの違いにより発がんプロモーション作用への影響が異なることから、更なる検討により法則性が見出された場合、複合暴露によるADIの設定に有用な情報を与える。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
16件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yafune, A., Mitsumori, K., Shibutani, M., et al.
Expression patterns of cell cycle proteins in the livers of rats treated with hepatocarcinogens for 28 days.
Archives of Toxicology  (2013)
原著論文2
Yafune, A., Mitsumori, K., Shibutani, M., et al.
Aberrant activation of M phase proteins by cell proliferation-evoking carcinogens after 28-day administration in rats.
Toxicology Letters , 219 (3) , 203-210  (2013)
原著論文3
Hayashi, H., Suzuki, K., Mitsumori, K., et al.
Liver tumor promoting effect of omeprazole in rats and its possible mechanism of action.
The Journal of Toxicological Sciences , 37 (3) , 491-501  (2012)
原著論文4
Hayashi, H., Suzuki, K., Mitsumori, K., et al.
Threshold dose of liver tumor promoting effect of β-naphthoflavone in rats.
The Journal of Toxicological Sciences , 37 (3) , 517-526  (2012)
原著論文5
Hayashi, H., Suzuki, K., Mitsumori, K., et al.
Enhanced liver tumor promotion but not liver initiation activity in rats subjected to combined administration of omeprazole and β-naphthoflavone.
The Journal of Toxicological Sciences , 37 (5) , 969-985  (2012)
原著論文6
Morita, R., Suzuki, K., Mitsumori, K.
Liver tumor promoting effect of orphenadrine in rats and its possible mechanism of action including CAR activation and oxidative stress.
The Journal of Toxicological Sciences , 38 (3) , 403-413  (2013)
原著論文7
Morita, R., Suzuki, K., Mitsumori, K.
Enhanced liver tumor promotion activity in rats subjected to combined administration of phenobarbital and orphenadrine.
The Journal of Toxicological Sciences , 38 (3) , 415-424  (2013)

公開日・更新日

公開日
2014-06-02
更新日
2018-06-22

収支報告書

文献番号
201234006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,100,000円
(2)補助金確定額
9,100,078円
差引額 [(1)-(2)]
-78円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,109,640円
人件費・謝金 363,254円
旅費 276,820円
その他 2,257,364円
間接経費 2,093,000円
合計 9,100,078円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-06-20
更新日
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