食品中残留農薬等の急性暴露評価及び汚染実態把握に関する研究

文献情報

文献番号
201234005A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中残留農薬等の急性暴露評価及び汚染実態把握に関する研究
課題番号
H22-食品-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
米谷 民雄(静岡県立大学 食品栄養科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 吉池 信男(青森県立保健大学 健康科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
8,160,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)FAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR)では多くの農薬に急性参照用量 (ARfD) が設定され、設定の原則も確立されているが、わが国での設定は2農薬のみである。また、適切な作物残留試験データに乏しく、短期暴露評価が困難となっている。そこでJMPRでARfDが設定され、わが国で登録のある農薬を対象に、1点推定法による短期経口暴露量の試算を行い、かつ、確率モデルによる暴露量試算の基礎的な検討を行った。
2)厚生労働省の農薬摂取量調査ではマーケットバスケット法を採用しているが、各食品群内で多食品を混合し分析するため、効率的だがほとんどの農薬は検出されず、安全は確認されるが残留実態は不明である。そこで、残留農薬の摂取で注目される食品や、加工により農薬消長が考えられる食品につき、個別食品での農薬の残留実態を調査した。
研究方法
1)平成23年度の検討をさらに進め、作物残留試験で必要な例数の統計的解析を行い、試算では確率モデルの適用方法について検討を行った。
2)農薬の検出濃度の季節変動を調査するための卸売市場品での通年野菜の分析、道の駅等の直売所で購入した野菜・果実の分析、茶の加工工程における農薬の消長の検討を実施した。
結果と考察
1)作物残留試験で必要な例数としては8例以上が望ましく、最低6例が必要と考えられた。確率モデルによる暴露量試算を容易に行うために、自動計算可能なツール(エクセルシート)を作成した。また、必要な摂取量のパラメータ等を整備した。その際、小児及び季節変動並びに地域差が確認出来るようなデータ構造とした。これらを用いて、ARfDに対して短期経口暴露量が高いと予想されたビフェントリン、ジフェノコナゾール、ピラクロストロビンについて試算を行った。また、平成23年度に引き続き、JMPRがARfDを勧告しており、国内で登録のある15農薬について、1点推定法による試算も行った。
2)卸売市場品の残留農薬実態調査では、71試料中43試料から67農薬が検出されたが基準値を超えた試料はなく、農薬のADIと農産物の摂取量からみると問題のないレベルであった。1検体あたりの検出農薬数が約1農薬であったため、検出濃度の季節変動を見るだけのデータ数は得られなかった。道の駅などでの直売所品の調査は関西地区で実施し、8品目について異なる3地域の製品を等量混合した試料について分析をしたが、いずれの品目も農薬の残留レベルは低かった。茶の加工による農薬の消長については、原料の生葉から各種製品への加工を行う段階で、各農薬の減衰が認められた。浸出液への農薬の移行では農薬の水溶性の程度により有意差が認められ、水溶性の高い農薬ほど移行率が高かった。一方、煎茶の粒度の違いによる有意差は認められなかった。また、保存による農薬の消長では、保存期間が長くなるほど、農薬の減衰量が多くなった。
結論
1)今後、わが国においてARfDの設定が進み、それに伴う短期経口暴露評価の作業の中で、1点推定法に加えて、確率モデルによる試算も併せて行われ、暴露評価が精密化されることが予想される。本研究では、そのための基礎的データの整備と検討を行い、また、試算のためのツール作成を行った。
2)卸売市場品および直売所品とも、農薬の残留レベルは低く、農薬のADIと農産物の摂取量からみて、残留は問題ないレベルであった。茶の加工においては、加工条件や農薬の物性の違いにより,農薬残存率に違いがでることが示唆されたが、本研究は茶中残留農薬の暴露評価の精密化に資するものと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201234005B
報告書区分
総合
研究課題名
食品中残留農薬等の急性暴露評価及び汚染実態把握に関する研究
課題番号
H22-食品-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
米谷 民雄(静岡県立大学 食品栄養科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 吉池 信男(青森県立保健大学 健康科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)FAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR)では多くの農薬に急性参照用量(ARfD)が設定され、設定の原則も確立されているが、わが国での設定は2農薬のみである。また、適切な作物残留試験データに乏しく、暴露評価が困難となっている。そこでJMPRでARfDが設定され、わが国で登録のある農薬を対象に、短期経口暴露量の試算を行い、また、暴露量試算の際に用いるモデルについて基礎的な検討を行った。
2)厚生労働省の農薬摂取量調査ではマーケットバスケット法を採用しているが、各食品群内で多食品を混合し分析するため、効率的だがほとんどの農薬は検出されず、安全は確認されるが残留実態は不明である。そこで、残留農薬の摂取で注目される食品や、加工により農薬消長が考えられる食品につき、個別食品での農薬の残留実態を調査した。
研究方法
1)一般住民対象の摂取量調査データ (①40,394人・日のデータセット(うち1-6歳16,194人・日)、②n=2,712人×12日=32,544人・日)を解析し、個々の農作物に関して、摂取者のデータから算出した多食者摂取量(97.5パーセンタイル;1歳以上及び1-6歳)につきデータベースを整備した。さらに、短期経口暴露評価で重要な農作物について、季節や地域などによる変動要因を検討した。
2)個別食品を調査する目的で、卸売市場品の調査、直売所品等の調査、茶の加工工程における農薬消長の研究を実施した。
結果と考察
1)確率モデルによる暴露量推定を容易に行うために、自動計算可能なツール(スプレッドシート)を作成した。確率モデルによる短期経口暴露量の推定方法や諸条件の検討では、1点推定法との比較、理論分布の設定方法、LOQ未満の残留データの取り扱い、試算に必要な作物残留試験データ数について検討した。作物残留データを理論分布に適合させると、暴露量推定結果がかなり異なる場合があり、利用可能な作物残留データが暴露量試算に大きな影響を与えていた。また、作物残留試験の例数としては8例以上が望ましく、最低6例が必要と考えられた。1点推定法による試算では、JMPRがARfDを勧告し国内で登録のある15農薬について試算した結果、ビフェントリン(260%;ブドウ、他)、カズサホス(260%; ゴボウ)、ジメトエート(170%; パイナップル)、ジスルホトン(550%; スイカ、他)、フェンピロキシメート(180%; ブドウ、他)等において、%ARfDを超える短期経口暴露量が試算された。
2)卸売市場品の調査では、22年度は皮ごと摂取可能あるいは生で摂取する野菜・果実の分析、23年度は複数の農薬暴露による相互作用の観点から重要と考えられる柑橘類の分析、24年度は検出農薬の季節変動の観点から重要と考えられる通年野菜の分析を実施した。その結果、一律基準を超えたものが1試料あり行政的に対応されたが、農薬のADIと農産物の摂取量からは問題ないレベルであった。その他には基準値を超えた試料はなく、GAPに従って適正に農薬が使用されていることが示唆された。総検査数当たりの農薬検出率は農産物に発生する病害虫の数や発生時期により異なったが、農産物の中でも発生する病害虫の数が多い柑橘類での検出率が他よりも高かった。道の駅等での直売所品(野菜・果実)では、できるだけ多くの農薬を検出する目的で、同一品目で異なる地域・生産者の3製品を等量混合して分析したが、検出された農薬はいずれも基準値以下と推定された。茶の加工による農薬の消長については、原料である生葉から製品となる加工茶、さらに茶浸出液に至るまでの過程での、農薬の減少を調べた。加工による消長は、加熱時間や発酵時間が長いほど、茶葉への熱伝導率が高いほど、農薬の減少が大きかった。さらに浸出液への農薬の移行では、水溶性の高い農薬ほど移行率が高かった。一方、粒度の違いによる減少には有意差は認められず、保存による消長では、保存期間が長くなるほど農薬減少量が多くなった。
結論
1)今後、わが国においてARfDの設定が進み、それにともなう短期経口暴露評価の作業の中で、1点推定法に加えて、確率モデルによる試算も併せて行われ、暴露評価の精密化が行われると予想される。本研究では、そのための基礎的なデータの整備と諸条件の検討、並びに試算のためのツール作成を行った。
2)卸売市場品および直売所品とも、農薬の残留レベルは低く、農薬のADIと農産物の摂取量からみて、残留は問題ないレベルであり、GAPに従い農薬が適正に使用されていることが示唆された。茶の加工においては、加工条件や農薬の物性の違いにより農薬残存率に違いがでることが示唆されたが、本研究は茶中残留農薬の暴露評価の精密化に資するものと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201234005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
急性暴露評価に用いる作物残留試験の例数は8例以上、最低6例が必要と考えられた。
茶葉から各種茶への加工による農薬の減少と茶浸出液での減少を調べたが、加工の加熱時間や発酵時間が長いほど減少が大きく、浸出液への移行は水溶性の高い農薬ほど移行率が高かった。データは茶中残留農薬の暴露評価の精密化に資すると考えられた。
臨床的観点からの成果
市販農産物から、ネオニコチノイド系農薬が多く検出された。最近、欧州ではネオニコチノイド系3農薬の使用が禁止されたことから、わが国での残留実態と健康影響について、詳しく調べておく必要があると考えられた。

ガイドライン等の開発
わが国において急性参照用量の設定が進み、それに伴う短期経口暴露評価の作業の中で、1点推定法に加えて、確率モデルによる試算も併せて行われ、暴露評価の精密化が行われると考えられる。本研究ではそのための基礎的なデータの整備と諸条件を検討し、確率モデルによる暴露量推定を容易に行うための自動計算可能なツール(スプレッドシート)を作成した。これにより、新に食品安全委員会で急性参照用量が設定されれば、現行残留基準や基準値案が急性参照用量からみて妥当かを評価できるようになった。

その他行政的観点からの成果
卸売市場と直売所の農産物につき残留農薬を分析したが、農薬のADIと農産物の摂取量からは問題ないレベルで、GAPに従って適正に農薬が使用されていることが示唆された。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
佐藤ななえ、岩部万衣子、吉池信男
乳幼児の食事摂取量を報告した論文における記述状況と活用可能性の検討
栄養学雑誌 , 70 , 38-48  (2012)

公開日・更新日

公開日
2014-06-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201234005Z