食品中残留農薬等のスクリーニング分析法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201234004A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中残留農薬等のスクリーニング分析法の開発に関する研究
課題番号
H22-食品-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
根本 了(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
  • 坂井隆敏(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品に残留する農薬等に関するポジティブリスト制度の導入に伴い、規制対象となる農薬等は現在830品目を超える。食品中の残留農薬等の安全性を確保するためには、このような膨大な数の品目について農産物及び畜水産物中の残留濃度を精確かつ迅速に測定する必要があり、そのためにはより効率的で信頼性の高いスクリーニング分析法の開発が不可欠である。そこで、本研究では、食品に残留する農薬等のより効率的な検査の実施に資するスクリーニング分析法を開発するために、1)新規分析技術を用いた農産物中残留農薬のスクリーニング分析法の開発及び2)畜水産物中残留動物用医薬品及び農薬の包括的スクリーニング分析法の開発を行った。
研究方法
1)本年度は、液体クロマトグラフ・タンデム型質量分析計(LC-MS/MS)では測定が困難な低極性化合物への対応として、ガスクロマトグラフ・タンデム型質量分析計(GC-MS/MS)で測定可能な中~低極性の101農薬を対象にSFE(超臨界流体抽出)法を用いた果実・野菜中の残留農薬一斉分析法を検討した。確立した方法で農産物を用いて添加回収試験を行うとともに、農薬が残留した試料を用いて分析値を溶媒抽出法と比較し、SFE法の残留農薬分析への適用性について検討した。
2)検査機関におけるより効率的な検査態勢の確立を目的として、畜水産物に基準値が設定されている残留動物用医薬品及び農薬の包括的スクリーニング分析法の開発を試みた。平成24年度は、昨年度までに開発した分析法について、種々の畜水産物に対する適用性を評価することを目的として、畜水産物10食品(牛の筋肉、鶏の筋肉、牛の肝臓、牛の脂肪、牛乳、鶏卵、ウナギ、サケ、しじみ及びはちみつ)を用いた添加回収試験を実施した。
結果と考察
1)SFE条件(抽出圧力、抽出温度、抽出時間、モディファイヤーの種類及び量)やSFE試料の調製方法について最適化し、試料をSFE後、PSAミニカラムで精製してGC-MS/MS測定する簡便なスクリーニング法を確立した。果実・野菜を用いて添加濃度0.1及び0.01 ppmで5併行の添加回収試験を行った結果、検討した農薬の大部分は真度(目標値:70~120%)及び併行精度[目標値:<15%(添加濃度0.1ppm)、<25%(添加濃度0.01ppm)]の目標値を満たした。農薬が残留した試料を用いてSFE法と溶媒抽出法の分析値を比較した結果、一部の農薬を除き、両者でほぼ同等の結果が得られ、SFE法は残留農薬スクリーニング法として有用であることが示された。
2)多くの対象化合物/対象食品の組合せにおいて回収率50%以上の結果が得られ、かつ測定時の試料マトリックスの影響を大きく受ける化合物/食品の組合せは少なかったことから、本研究で開発した分析法は、種々の畜水産物中の残留動物用医薬品及び農薬の包括的スクリーニング分析法として有用であると考えられた。また、回収率70%~120%、かつ併行精度も良好であった化合物/食品の組合せも多く、これらの組合せについては、残留基準値の適合判定を行うための分析法としても使用できると考えられた。
結論
1)GC-MS/MSで測定可能な101化合物を対象にSFE法の果実・野菜中の残留農薬一斉分析への適用について検討し、試料をSFE後、PSAミニカラムで精製してGC-MS/MS測定する簡便なスクリーニング法を確立した。農薬が残留した試料を用いてSFE法と溶媒抽出法の分析値を比較した結果、両者でほぼ同等の結果が得られた。確立したSFE法は、ミニカラム精製を追加した以外は、H23年度に開発したLC-MS/MSで測定可能な農薬を対象とした方法と、試料調製方法やSFE条件が同じである。従って、本法はLC-MS(/MS)またはGC-MS(/MS)で測定可能な高極性~低極性の広範囲の農薬に適用可能な方法であり、果実・野菜中の効率的な残留農薬スクリーニング法として有用であると考えられた。
2)平成24年度は、平成23年度までに開発した分析法に改良を加え、種々の畜水産物に対する適用性を評価した。その結果、多くの対象化合物/対象食品の組合せにおいて良好な回収率が得られ、測定時の試料マトリックスの影響を大きく受ける化合物/食品の組合せも少なかったことから、本研究で開発検討した分析法は、種々の畜水産物中の残留動物用医薬品及び農薬の包括的スクリーニング分析法として有用であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201234004B
報告書区分
総合
研究課題名
食品中残留農薬等のスクリーニング分析法の開発に関する研究
課題番号
H22-食品-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
根本 了(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
  • 坂井隆敏(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品に残留する農薬等に関するポジティブリスト制度の導入に伴い、規制対象となる農薬等は現在830品目を超える。食品中の残留農薬等の安全性を確保するためには、このような膨大な数の品目について農産物及び畜水産物中の残留濃度を精確かつ迅速に測定する必要があり、そのためにはより効率的で信頼性の高いスクリーニング分析法の開発が不可欠である。そこで、本研究では、食品に残留する農薬等のより効率的な検査の実施に資するスクリーニング分析法を開発するために、1)新規分析技術を用いた農産物中残留農薬のスクリーニング分析法の開発及び2)畜水産物中残留動物用医薬品及び農薬の包括的スクリーニング分析法の開発を行った。
研究方法
1)農産物中の残留農薬の迅速で効率的なスクリーニング分析法を開発するため、本研究では、農産物中の残留農薬を対象として「測定」と「抽出・精製」の両面から分析法の効率化・迅速化を図った。「測定」に関しては、食品マトリックス中から多数の農薬を効率的に検出するため、選択性の高いGC-MS/MS及びLC-TOF-MSの応用について検討した。「抽出・精製」に関しては、自動化が可能で選択性が高いSFEを残留農薬分析に応用し、抽出・精製の効率化・迅速化を図り、測定に関する検討と合わせて高効率なスクリーニング分析法の開発を行った。
2)畜水産物に基準値が設定されている残留動物用医薬品及び農薬(農薬等)を対象に、種々の畜水産物から可能な限り多くの農薬等を効率的に抽出可能な抽出法を検討し、次いで種々の畜水産物中の試料マトリックス成分を効果的に除去可能なミニカラム精製条件について検討した。抽出法及び精製法を組み合わせて畜水産物中の残留農薬等の包括的スクリーニング分析法を確立し、畜水産物10食品(牛の筋肉、鶏の筋肉、牛の肝臓、牛の脂肪、牛乳、鶏卵、ウナギ、サケ、しじみ及びはちみつ)を用いた添加回収試験を実施して、開発した分析法の種々の畜水産物に対する適用性を評価した。
結果と考察
1)平成22年度は「測定」における効率化を図るため、高~中極性農薬(約150化合物)を用いて残留農薬一斉分析に適したLC-TOF-MS測定条件を確立し、定量性や定量限界等を評価した。平成23年度は「抽出・精製」における効率化・迅速化を図るため、LC測定が可能な高~中極性農薬(約120化合物)について一斉分析に適したSFE条件(圧力、温度、時間、モディファイヤー等)やSFE用試料調製法を検討し、LC-MS/MS及びSFEを用いた一斉分析法を開発した。平成24年度は中~低極性農薬(約100化合物)を対象に、GC-MS/MSによる測定系を確立するとともに、SFEを用いた残留農薬一斉分析法を開発した。農薬残留試料を用いて、SFE法と溶媒抽出法との分析値の比較を行った結果、ほぼ同等の結果が得られ、SFE法はスクリーニング法として有効であることが示された。
2)平成22年度は抽出法について検討し、抽出溶媒にアセトンを用いることにより、融解・再固化した牛脂肪から幅広い物性の農薬等を効率的に抽出可能であることを示した。平成23年度は色素及び高極性夾雑物のミニカラム精製法について検討し、GCBミニカラム及びSIミニカラムを用いた効果的な精製法を確立した。平成24年度は抽出法及び精製法に改良を加え、これらを組み合わせた分析法を構築した後、畜水産物10食品を用いた添加回収試験を実施し、種々の畜水産物に対する適用性を評価した。その結果、多くの対象化合物/対象食品の組合せにおいて回収率50%以上の結果が得られ、測定時の試料マトリックスの影響を大きく受ける化合物/食品の組合せは少なかった。また、回収率70%~120%かつ併行精度も良好であった化合物/食品の組合せも多く、これらについては残留基準値の適合判定を行うための分析法としても使用できると考えられた。
結論
1)農産物中の残留農薬の迅速で効率的なスクリーニング分析法を開発するため、「測定」と「抽出・精製」の両面から分析法の効率化・迅速化を図った。「測定」に関しては、GC-MS/MS及びLC-TOFMSを用いた選択性の高い測定法、「抽出・精製」に関しては、自動化が可能なSFEを用いた効率的な抽出・精製方法を確立した。本法は、迅速かつ効率的な農産物中の残留農薬スクリーニング分析法として有効であると考えられた。
2)畜水産物中の残留農薬等の分析に適した効率的な抽出法及び精製方法について検討し、種々の畜水産物に適用可能な方法を開発した。本法は、種々の畜水産物中の残留動物用医薬品及び農薬の包括的スクリーニング分析法として有用であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201234004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
「測定」に関してはGC-MS/MS及びLC-TOF-MSなどの選択性の高い測定法を活用し、「抽出・精製」に関しては自動化が可能なSFEを用いた効率的な抽出・精製方法を活用して分析法の効率化・迅速化を図り、農産物中の残留農薬の迅速で効率的なスクリーニング分析法を開発した。また、畜水産物中の残留動物用医薬品及び農薬の分析に適した効率的な抽出法及び精製方法について検討し、種々の畜水産物に適用可能な畜水産物中の残留動物用医薬品及び農薬の包括的スクリーニング分析法を開発した。
臨床的観点からの成果
なし。
ガイドライン等の開発
なし。
その他行政的観点からの成果
生活衛生・食品安全部基準審査課の事業として、開発したLC-TOF-MS法の残留農薬一斉試験法(農産物)への適用検討を野菜・果実(25年度、約200農薬)、茶(26年度、約150農薬)及び穀類・豆類(27年度、約150農薬)について実施した。また、開発した畜水産物中残留動物薬及び農薬の包括的スクリーニング分析法の妥当性評価試験を25年度(30化合物)、27年度(40化合物)、28年度(40化合物)に実施した。当該分析法は、妥当性評価終了後に公示試験法として通知する予定である。
その他のインパクト
なし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shizuka Saito, Satoru Nemoto, Rieko Matsuda
Multi-residue Analysis of Pesticides in Agricultural Products by Liquid Chromatography Time-of-Flight Mass Spectrometry
Food Hygiene and Safety Science , 53 (6) , 255-263  (2012)
原著論文2
Shizuka Saito-Shida, Satoru Nemoto, and Rieko Matsuda
Multiresidue Analysis of Pesticides in Vegetables and Fruits by Supercritical Fluid Extraction and Liquid Chromatography-Tandem Mass Spectrometry
Food Hygiene and Safety Science , 55 (3) , 142-151  (2014)
原著論文3
Shizuka Saito-Shida, Satoru Nemoto, and Rieko Matsuda
Simultaneous determination of acidic pesticides in vegetables and fruits by liquid chromatography-tandem mass spectrometry.
J Environ Sci Health B , 50 , 151-162  (2015)
原著論文4
Saito-Shida S, Nemoto S, Teshima R, Akiyama H
Quantitative analysis of pesticide residues in vegetables and fruits by liquid chromatography quadrupole time-of-flight mass spectrometry.
Food Additives & Contaminants: Part A , 33 (1) , 119-127  (2016)

公開日・更新日

公開日
2014-06-02
更新日
2018-06-21

収支報告書

文献番号
201234004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,000,000円
(2)補助金確定額
6,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,942,435円
人件費・謝金 0円
旅費 572,020円
その他 485,936円
間接経費 0円
合計 6,000,391円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-