大学等における効果的な安全教育プログラムに関する研究

文献情報

文献番号
201233013A
報告書区分
総括
研究課題名
大学等における効果的な安全教育プログラムに関する研究
課題番号
H24-労働-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大久保 靖司(東京大学 環境安全本部)
研究分担者(所属機関)
  • 刈間 理介(東京大学 環境安全研究センター)
  • 森 晃爾(産業医科大学 産業医実務研修センター)
  • 福田 隆文(長岡科学技術大学 大学院技術経営研究科)
  • 大島 義人(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高等教育機関において安全意識・感度の高い人材の育成と社会への輩出を行うための、在学期間中における安全に関する教育の方策について検討し、提言を行うことを目的とする。
研究方法
安全な社会の基礎となる人材を育成するためには、1.有効な安全教育プログラム、2.安全教育の効果の評価方法の確立、3.国際化への対応が求められる。本研究では、1.学生を対象とした安全教育の実態(平成24年度)と好事例の収集(平成24、25、26年度)、2.安全教育を受けた学生の安全意識・感性に与える短期影響調査(平成24、25年、26年度)、3.社会人となった既卒生の後ろ向き追跡調査(平成24年度)、4.企業の大学教育に求めるニーズの聞き取り調査、5.大学における安全教育の日米比較検討(平成25年度)、6.安全衛生専門職育成における安全教育の実態(平成24年度)を調査し、加えて安全教育の効果と評価についての系統的文献調査により、安全教育についての情報及びエビデンスを集約する。この結果を基に、高等教育機関における安全教育のあり方と安全管理の基礎教育プログラムについて提言をとりまとめ、モデルとなる教育プログラム及びツールの開発を行い、これらをウェブ等を通じて公表する。
研究は、初年度と2年目に実態調査を主として事例の収集及び過去の知見の集約を行う。また、安全教育の効果の評価を行い。これらを基礎とした提言案を2年目にとりまとめる。3年目はその提言の修正補完を行うとともに、大学等における効果的な安全教育プログラムのモデルの開発を行いその効果の実証を行う。
結果と考察
1,安全教育の実態調査等では、予備調査として大学4校と企業の安全担当者に聞き取り調査を行った。その結果、研究等を対象とした安全教育は実施されていたが、安全意識等の育成は限定的であった。
2.大学在校生の安全教育の評価では、安全教育の実施事例として、大学院講義及び新潟大学での安全教育講習を取り上げ、体験型の教育が自主的なリスク認識の涵養に有効であることが示唆された。
3.卒業生の安全意識・感性への教育の効果では、体系的安全教育を行っている大学工学部の聞き取り調査の結果、実践的技術者としてのスキルの評価は困難であることが示された。web調査では、作業者は化学、電気電子回路工学等の専門教育を、安全担当者は、安全工学や法令が有用と考えていた。
4.労働衛生専門職養成機関における労働安全に関する教育の実態では、安全意識・感性を高めることを目的として体験型・参加型の教授法が導入されていることが確認された。一方でその実施には教育者の指導技能や教育設備などの条件を整えることが課題として挙げられていた
5.日本と欧米の大学における安全教育の比較については、英米の大学では研究者・学生に研究・教育を行うにあたり事前にリスクアセスメントを行わせ、それを通じて認識・知識・態度についての教育を行なっていることが明らかとなった。
6.文献調査では、「大学」「安全教育」をキーワードに系統的文献検索を行った。その結果、大学における講義形式の教育は安全行動への影響は少なく、体験型やプロジェクト型は安全行動、安全意識への影響が強いことが示された。一方、これらの教育の課題として、教員の負荷が大きいこと、教育効果は教員の教育スキルに依存するため教員への教育が不十分であることが挙げられていた。
結論
日本の大学等における安全教育は、実験などにおける安全に関する基礎知識を習得することに限定されており、安全に関する意識の向上や未知のリスクへの対応を行うためのリスクアセスメントスキルの習得のための教育ではない。安全に関する意識の向上や安全文化の醸成のためには、体験型、参加型の教育プログラムが有効と考えられることから、これらの教育プログラムの開発、また、欧米で普及している教育研究活動におけるリスクアセスメントについての理解の促進とその手法の習得のためのプログラムのが必要である。これらのプログラムの満たすべき要件について検討を行い、明らかにすること及びモデルとなるプログラムの開発が求められる。
 

公開日・更新日

公開日
2013-10-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201233013Z