福島第一原子力発電所事故復旧作業のストレスが労働者のメンタルヘルスに及ぼす影響

文献情報

文献番号
201233011A
報告書区分
総括
研究課題名
福島第一原子力発電所事故復旧作業のストレスが労働者のメンタルヘルスに及ぼす影響
課題番号
H24-労働-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
重村 淳(防衛省防衛医科大学校 精神科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 谷川 武(愛媛大学大学院 医学系研究科 公衆衛生・健康医学)
  • 野村 総一郎(防衛省防衛医科大学校 精神科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、2011年3月11日の東日本大震災を端緒として発生した東京電力株式会社福島第一原子力発電所(以下、第一)事故の復旧作業にあたる労働者において、(1) メンタルヘルス(以下、MH)の実態を調査し、生じる精神障害およびそのリスク者の割合、リスクに与える要因の検証など、労働者の包括的なMH対策への知見を高めること、(2) 復旧作業従事者を対象としたMHケアの実態を調査し、向こう数十年と続く復旧活動に向けてMH資源提供への課題の調査、の2点を目的とする。
研究方法
1) 震災2~3ヶ月後、東京電力株式会社所属の福島第一原発・福島第二原発職員(計1,495名)を対象として、自記式用紙を用いて調査した。独立変数として、属性(年齢、性別、管理職、持病の有無)、東日本大震災・第一事故に関連する体験の有無を測定した。従属変数として、心理的苦悩(general psychological distress: GPD)とPTSD反応(posttraumatic stress response: PTSR)を、K6、日本語版IES-Rを用いて測定した。GPD・PTSRが高得点(それぞれ13点以上、25点以上)となる(すなわちMHの高リスクとなる)ことに関連する因子を解析した。
2) 震災・第一原発事故後、復旧作業従事者の各方面の関係者から一次・二次情報を聴取し、復旧作業従事者のMH体制の現状と課題をまとめた。
結果と考察
1) 第一、第二所員は、業務・被災・悲嘆関連のストレスを複合的に体験し、その割合は第一でより高かった。GPD・PTSRの高リスク群は第一により多かった(GPD:第一 47%、第二37%。PTSR:30%、第二19%)。差別中傷体験を経験した者は、そうでない者と比べて2~3倍高いGPD・PTSRを示した。社会的責務を負う作業従事者たちが社会的批判を受けると、ストレスからの回復に大きな支障となることが示唆された。そのストレス改善にあたっては、MH専門家がエビデンスに基づいた情報発信をすることが重要であることが示唆された。
2) 相双地区は震災前からMH専門家が希少だった上、震災で地域医療が甚大な打撃を受けていた。調査時点では、福島第二原発、広野町のJビレッジにおいて、それぞれ月1回の外部支援が展開されていたが、自前の専門家雇用には至っていなかった。周辺地域の生活・医療事情の改善なしでは、復旧作業者向けのMHサービスを自前で提供することは年単位で困難で、外部支援者のMH支援体制が続かないとサービス提供ができなくなることが予測された。
結論
1)電力会社職員の発災後2~3か月後のMHには、差別・中傷が多大な影響を及ぼしていた。
2)原発事故が相双地区に与えた打撃は甚大である。周辺地域の生活・医療事情の改善なしでは、復旧作業者向けのMHサービスを自前で提供することは年単位で困難で、外部支援者のMH支援体制が続かないとサービスが提供できなくなることが予測された。

公開日・更新日

公開日
2013-10-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201233011Z