文献情報
文献番号
201233008A
報告書区分
総括
研究課題名
石綿関連疾患の診断基準及び手法に関する調査研究
課題番号
H23-労働-一般-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
岸本 卓巳(独立行政法人労働者健康福祉機構岡山労災病院 アスベスト関連疾患研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 青江 啓介(独立行政法人国立病院機構山口宇部医療センター)
- 芦澤 和人(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 臨床腫瘍学)
- 荒川 浩明(獨協医科大学病院 放射線科)
- 荒木 雅史(独立行政法人労働者健康福祉機構香川労災病院 内科)
- 伊藤 秀美(愛知県がんセンター研究所 疫学・予防学)
- 井内 康輝(広島大学)
- 岡本 賢三(独立行政法人労働者健康福祉機構北海道中央労災病院 検査科)
- 加藤 勝也(岡山大学病院 放射線科)
- 玄馬 顕一(独立行政法人国立病院機構福山医療センター 呼吸器内科)
- 林 清二(独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)
- 藤本 伸一(独立行政法人労働者健康福祉機構岡山労災病院 呼吸器内科)
- 本田 純久(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
- 水橋 啓一(独立行政法人労働者健康福祉機構富山労災病院 アスベスト疾患センター)
- 由佐 俊和(独立行政法人労働者健康福祉機構千葉労災病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
11,122,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
低線量胸部CT撮影により、石綿ばく露者の肺・胸膜病変が一般人と比較してどのような特徴があるかについて検討する。石綿ばく露者の肺がん及び中皮腫の発生頻度を集計するとともにCT撮影群とCTを撮影しない群で肺がん診断率、生存期間等の比較検討を行う。中皮腫を発生した群における画像あるいは臨床的な特徴について検討する。石綿肺と慢性間質性肺炎をHRCT画像により鑑別するために画像と病理組織標本を比較検討して鑑別に有用な所見を明らかにする。
研究方法
平成24年度までに低線量胸部CTを撮影した2,126例と一般住民を対象としてCTを撮影したJapanese General Screening study for Asbestos-Related Diseases(JGSARD)研究班の758例について、胸膜プラーク及び肺の間質性陰影{Subpleural curvilinear shadows(SCLS), Dots, 蜂窩肺, すりガラス, 牽引性気管支拡張}の頻度を比較した。また、石綿ばく露者では過去4年間の肺がん発生について、上述のプラークおよび間質性陰影等の所見別による発生率について比較した。さらに、石綿ばく露者で胸部CTを撮影した群とCTを撮影しない比較読影群について確定診断された肺がんの治療法・生存期間等の臨床的特徴について検討した。
また、近畿中央胸部疾患センターにて石綿肺と診断されていた8例の剖検肺を画像と病理組織所見を比較することにより石綿肺あるいは慢性間質性肺炎と診断すべきか放射線科医3名と病理医2名が各々診断し、合議で最終診断した。また、これら8例は次亜塩素酸ソーダにより肺組織を溶解して、肺内石綿小体数を算定した。
また、近畿中央胸部疾患センターにて石綿肺と診断されていた8例の剖検肺を画像と病理組織所見を比較することにより石綿肺あるいは慢性間質性肺炎と診断すべきか放射線科医3名と病理医2名が各々診断し、合議で最終診断した。また、これら8例は次亜塩素酸ソーダにより肺組織を溶解して、肺内石綿小体数を算定した。
結果と考察
石綿ばく露者においては、対照とした一般人に比較して胸膜プラークのみならず、胸膜下点状あるいは線状陰影を含む間質性陰影が有意(p<0.001)に高頻度であった。また、間質性陰影を有する症例で肺がんの発生も頻度が高い傾向にあった。低線量CT検診による肺がん死亡率の低下を証明したNational Lung Screening Trial(NLST)での肺がん発生率が10万対645/人年であったのに対して、本研究での肺がん発生率は10万対1,112.7/人年と高かった。CT検診群と比較読影群の比較ではCT検診群で肺がん切除率が高いのみでその他には差はなかった。また、6例の中皮腫の発症が認められたが、全例に5mm以上の厚みのある胸膜プラークを有していた。
石綿肺の画像・病理の比較検討においてはSubpleural dots が肺中心部にも認められ、石綿肺診断における小葉中心性の線維化が石綿肺診断に重要であることが明らかとなった。また、蜂窩肺と牽引性気管支拡張は慢性間質性肺炎において高頻度に認められた。
肺内石綿小体数は、石綿肺と確定診断した症例では199,034~759,624本で、慢性間質性肺炎とした症例の5,811~85,845本に比較して多数の石綿小体を認めた。
石綿肺の画像・病理の比較検討においてはSubpleural dots が肺中心部にも認められ、石綿肺診断における小葉中心性の線維化が石綿肺診断に重要であることが明らかとなった。また、蜂窩肺と牽引性気管支拡張は慢性間質性肺炎において高頻度に認められた。
肺内石綿小体数は、石綿肺と確定診断した症例では199,034~759,624本で、慢性間質性肺炎とした症例の5,811~85,845本に比較して多数の石綿小体を認めた。
結論
石綿ばく露者では、一般人に比較して胸膜プラークや間質性陰影が高率に認められ、肺がんの発生頻度も高率であった。しかし、CT撮影をしない比較読影群との間には生存期間等には差がなく、肺がん切除率が高い傾向にあった。また、石綿肺の診断においては小葉中心性の線維化は胸膜直下のみならず肺の内部にも認められ、蜂窩肺や牽引性気管支拡張が特徴である慢性間質性肺炎との鑑別に有用であると思われた。
公開日・更新日
公開日
2013-10-31
更新日
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