文献情報
文献番号
201233007A
報告書区分
総括
研究課題名
リスク評価のためのバイオロジカル・モニタリング手法の開発に関する研究
課題番号
H23-労働-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
圓藤 吟史(大阪市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 山中 健三(日本大学薬学部環境衛生学)
- 山野 優子(昭和大学医学部衛生学)
- 市場 正良(佐賀大学医学部社会医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、経皮吸収が関与している可能性があるアルシンおよびジメチルアセトアミド(DMAC)について、リスク評価に有用となるバイオロジカルモニタリング(BM)法の開発を実施する。
そのため平成24年度は、①マウスならびにマウス血液試料を用いたアルシン曝露による溶血機序ならびにヘモグロビン(Hb)との相互作用に関する検討、②マウスのアルシン全身曝露による溶血とそれにともなう腎毒性機序などを病理組織学的に明らかにする。③DMACの生物学的許容値は代謝経路をふまえた測定対象物質の選択と測定法の吟味を行う。
そのため平成24年度は、①マウスならびにマウス血液試料を用いたアルシン曝露による溶血機序ならびにヘモグロビン(Hb)との相互作用に関する検討、②マウスのアルシン全身曝露による溶血とそれにともなう腎毒性機序などを病理組織学的に明らかにする。③DMACの生物学的許容値は代謝経路をふまえた測定対象物質の選択と測定法の吟味を行う。
研究方法
in vitro 曝露実験では、ICR雄性マウスの保存血に、in vivo アルシン曝露実験では、Hos: HR-1 ヘアレスマウスに、容積約2.5 Lの曝露装置内で発生させたアルシンを曝露させた。in vivoでは5分間曝露の直後、3時間後に尾静脈よりへパリン処理Ht管に血液を採取し、6時間後には心臓尖刺により採血した。得られた血液サンプルを用い、経時的にHtを測定し、曝露6時間後の血液は、ICP-MSで全血中のヒ素濃度の分析も行った。また6時間後には肺、肝臓、腎臓、脾臓を摘出し、中性ホルマリン固定した。パラフィンブロック作成後、ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色および、ヘモグロビン(Hb)免疫染色を行った。動物実験に関する倫理審査を日本大学において受け、承認された。
DMACのBMの検討では、引き続きDMACの尿中代謝物測定法、測定事例に関して文献調査を行った。国内におけるN-methylacetamide(NMAC)測定状況と濃度レベル調査を会員7機関に対し行った。現行測定手法による施設間差比較(クロスチェック)を実施した。代謝物一斉測定手法の検討のため、クロロぎ酸アルキルを用いた誘導体化、4-(4,6-Dimethoxy[1,3,5]triazin-2-yl)-4-methylmorpholinium (DMT-MM)を用いた誘導体化を試みた。高速液体クロマトグラフによる尿中代謝物一斉分析のために紫外吸収(UV)検出器と質量分析計(MS)を用いて検討を行った。
DMACのBMの検討では、引き続きDMACの尿中代謝物測定法、測定事例に関して文献調査を行った。国内におけるN-methylacetamide(NMAC)測定状況と濃度レベル調査を会員7機関に対し行った。現行測定手法による施設間差比較(クロスチェック)を実施した。代謝物一斉測定手法の検討のため、クロロぎ酸アルキルを用いた誘導体化、4-(4,6-Dimethoxy[1,3,5]triazin-2-yl)-4-methylmorpholinium (DMT-MM)を用いた誘導体化を試みた。高速液体クロマトグラフによる尿中代謝物一斉分析のために紫外吸収(UV)検出器と質量分析計(MS)を用いて検討を行った。
結果と考察
アルシン曝露では、①in vitro 曝露したマウス血液試料では溶血作用を示し、グロビン蛋白部分でのHb-ヒ素(As)付加体形成の可能性が示唆された。Hb-As付加体は曝露後速やかに生成し、時間経過によりほとんど変化しなかった。マウスへの約300 ppm5分間全身曝露では顕著な溶血が認められ、in vitro系での結果と同様に、Hb-As付加体形成が観察されたが、約300 ppm 5分間の経皮曝露では溶血は認められず、血球中HbへのAs付加体形成も見られなかった。③病理組織学的検査では、経皮曝露マウスは各臓器とも変化が認められなかったが、全身吸入マウスには腎臓、肝臓および脾臓に変化がみられた。腎臓では、近位尿細管曲部の上皮の細胞質内にエオジン好性の球状物質が多量に沈着し、尿細管の内腔にも貯留がみられた。同様に肝臓のクッパー細胞と脾臓の赤脾髄内の網内系細胞にも認められたが、沈着の程度は腎臓が最も顕著であった。エオジン好性物質はいずれの臓器もHb免疫染色に陽性であり、Hbの沈着であることが確認できた。なお、これらの臓器に壊死性の変化は認められなかった。また、肺組織には特に変化は認められなかった。④国内においてDMAC代謝物であるNMAC測定は3社が受託し、ACGIHのBEIである30㎎/g cr以上の検体が11.9%存在していた。これらは、昨年よりも高い数値である。④NMFとNMACの混合試料でクロスチェックを行った結果、変動係数は、低濃度ばく露尿で14.5%、これ以外の試料では10%前後であり昨年より改善した。
結論
この研究からアルシンの経皮吸収性について評価ができる。アルシンのin vivoとin vitroでの曝露実験から、経皮吸収の有無、溶血の機序、Hb-As付加体の形成、障害を受ける臓器が明らかになった。このことから、救急医療での指針を提供できる。DNAC曝露による尿中NMAC測定は有用であり、分離能の高い精度が得られた。
公開日・更新日
公開日
2013-10-31
更新日
-