職場における新たな精神疾患罹患労働者に対するメンタルヘルスのあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201233001A
報告書区分
総括
研究課題名
職場における新たな精神疾患罹患労働者に対するメンタルヘルスのあり方に関する研究
課題番号
H22-労働-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
廣 尚典(産業医科大学 産業生態科学研究所精神保健学)
研究分担者(所属機関)
  • 黒木 宣夫(東邦大学 医療センター佐倉病院精神神経医学)
  • 田中 克俊(北里大学 大学院医療系研究科産業精神保健学)
  • 渡辺 洋一郎(渡辺クリニック)
  • 鍵本 伸明(ナンバかぎもとクリニック)
  • 長見 まき子(関西福祉科学大学 健康福祉学部健康科学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
4,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年職場でみられているメンタルヘルス不調の多様化に適切に対応し、早期の事例の解決、収束を図るとともに、精神疾患による休業者の円滑な職場再適応を図るために、多くの職場で活用できるメンタルヘルス不調例への対応マニュアルと産業保健スタッフ・主治医の連携モデルの開発など、現場でのメンタルヘルス対策の実践に役立つツールや知見を得ることを目的とするものである。今年度はその3年目(最終年度)にあたり、計10の研究を行った。
研究方法
1.「メンタルヘルス不調者の対応類型表」の実務的有用性に関する検討―実際の事例への当てはめに関する議論を通じて―:産業医、産業看護職、心理職、人事労務管理スタッフ等のグループ討議によるメンタルヘルス不調事例の対応類型表(平成23年度版)への当てはめを行った。2.「メンタルヘルス不調者の職場における対応類型表(簡略版)」と「メンタル不調者の対応類型のパターンを決定する流れ図」の開発:2011年度の「メンタルヘルス不調者の職場における対応類型表(改訂版)」の内容、項目を再検討し、簡略版開発の可能性について検討した。また、職場におけるメンタル不調の対応の流れ図において主治医より意見が得られなかった時に職場で対応類型を決定するための流れ図の作成を試みた。3.「メンタルヘルス不調者の対応類型表」改版(2012)に関する検討:上記2つの研究によって明らかになった課題に関して検討を加え、対応類型表(2011)、対応の流れ図、対応類型表の使用方法について見直しを行った。4.EAP相談データに基づく若年者のメンタルヘルス不調および職場不適応の特徴と職場での対応の検討―産業保健スタッフ向け若年者事例類型表・対応表の開発―:過去事例の分析とグループ討議を通じて、2011年に開発した産業保健スタッフ向けの若年者のメンタルヘルス不調に関する事例類型表および対応表の有用性、課題を検討した。5.アルコール依存症における治療後の復職に関する研究:アルコール依存症患者を対象として予後調査を行い、飲酒行動だけでなく就労状況についても検討を加えて、復職に関わる要因を分析した。6.職場不適応をきたしている自閉症スペクトラムの労働者への対応と適切な支援方法に関する研究(その2):文献調査、産業医および精神科医に対するインタビュー調査およびデルフォイ法による分析を通じて、職場における自閉症スペクトラムを有する労働者への適切な対応、支援方法を検討した。7.双極性障害に対する心理教育の産業現場における活用可能性に関する研究―主に精神活性物質の乱用回避と規則正しい生活習慣に焦点を当てて―:双極性障害の臨床現場における集団教育の知見が職場での対応にどのように生かせるかを検討した。8.睡眠障害を抱える労働者の早期介入のための方法および課題に関する検討:職場における睡眠障害の対策に関して、介入の対象とすべき睡眠障害、その介入法としてのスクリーニングや睡眠教育・指導の内容、今後の課題を検討した。9.メンタルヘルス不調による休職者における職場再適応方法の検討~労働者の適性を重視した職場異動の有効性~(その2):メンタルヘルス不調者の復職後の追跡調査を通じて、適正検査とその結果に基づいた対応についての有用性を検討した。10.精神的不調による休職者の早期不適応的スキーマとその対処スタイルの検討:メンタルヘルス不調による休職者に対する認知行動科学的な評価を行った。
結果と考察
1.対応類型表の有用性が確認されるとともに、その見直しが望まれる点、使用にあたっての留意点が指摘された。2.対応類型表の簡略版および職場で対応類型を決定するための流れ図を作成した。3.対応類型表の改訂を行うとともに、対応の流れ図、対応類型表の使用方法についても、一部変更を加えた。4.若年者のメンタルヘルス不調に関する事例類型表および対応表を一部改訂した。5.アルコール依存症例の復職および職場再適応にとって、早期対応と適切な支援が重要であることが確認された。6.自閉症スペクトラムを有する労働者への適切な対応、支援方法をまとめた。7.検討を通じて得られた一般的な健康教育、メンタルヘルス教育における留意点を整理した。8.職場における睡眠障害の対応について、そのあり方、今後の課題をまとめた。9.メンタルヘルス不調者の職場再適応支援における適正検査とその結果に基づいた対応の有用性が確認された。10.メンタルヘルス不調者の復職を円滑にし、かつ再発を予防するために職場で行える支援のあり方に関する知見を得た。
結論
メンタルヘルス不調者の対応類型表をはじめとする、職場におけるメンタルヘルス不調者への対応およびその職場再適応に至るまでの支援のための方法論、ツールを開発した。

公開日・更新日

公開日
2013-10-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201233001B
報告書区分
総合
研究課題名
職場における新たな精神疾患罹患労働者に対するメンタルヘルスのあり方に関する研究
課題番号
H22-労働-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
廣 尚典(産業医科大学 産業生態科学研究所精神保健学)
研究分担者(所属機関)
  • 黒木 宣夫(東邦大学 医療センター佐倉病院精神神経医学)
  • 田中 克俊(北里大学 大学院医療系研究科産業精神保健学)
  • 渡辺 洋一郎(渡辺クリニック)
  • 鍵本 伸明(ナンバ鍵本クリニック)
  • 長見 まき子(関西福祉科学大学健康福祉学部健康科学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、産業保健スタッフなどの職場関係者が、近年職場でみられているメンタルヘルス不調の多様化に適切に対応して、早期の事例の解決、収束を図り、精神疾患による休業者の円滑な職場再適応の支援を行うために活用できるメンタルヘルス不調例への対応マニュアル類と産業保健スタッフ・主治医の連携モデルを開発するとともに、現場でのメンタルヘルス対策の実践に役立つ知見を得ることを目的とするものである。
研究方法
平成22年度~24年度の3年間にわたって、特に産業現場でのニーズが高いと考えられる以下の領域について、計30の研究を行った。それらは、以下のようにまとめることができる。1)職場におけるメンタルヘルス不調者の対応アルゴリズムおよび対応類型表等の開発:文献レビュー、企業関係者に対する質問票調査、産業保健スタッフおよび精神科領域の医療職による議論などを行い、メンタルヘルス不調者に対して、主治医との連携を図りながら、職場で適切な対応を円滑に行っていくための方法論を構築し、そのために活動できるツールを検討した。2)病態別にみたメンタルヘルス不調者の対応のあり方に関する検討:文献レビュー、産業医、精神科医を対象とした質問紙調査、面接調査、リワークプログラムに従事している専門職による議論を通じて、最近職場で話題になっているいわゆる「新型うつ」、双極性障害および自閉症スペクトラムに該当する労働者の対応のポイント、留意点を検討した。また、それ自体の問題の大きさのみならず、他の精神疾患との併存が注目されているアルコール依存症についても、患者調査を通じて、職場復帰およびその後の職場再適応に影響を与える因子を探索した。3)職場におけるメンタルヘルス不調者の対応における留意点に関する検討:産業現場での事例対応、医療機関での復職支援プログラムにおける事例検討を通して、メンタルヘルス不調者と彼らが起こす問題に対する産業保健スタッフの関わりの優先順位、留意点をまとめた。4)メンタルヘルス不調者の職場復帰支援に関する研究:メンタルヘルス不調者の職場復帰記録の後方視的および前方視的調査によって、既存の適性検査を利用した職場復帰支援の効果を検討した。また、繰り返し休業者・難治例への対応の留意点について検討した。心理テストの結果および認知行動科学的アプローチから、メンタルヘルス不調者への対応のあり方についてもまとめた。5)メンタルヘルスに関する教育研修のあり方の検討:文献レビュー、介入研究などによって、睡眠障害、双極性障害を標的とした小集団の教育研修、個別保健指導の内容、効果的な進め方を検討した。
結果と考察
1)主治医と連携して対応を進めるためのアルゴリズムを作成した。その過程で活用するために開発した「メンタルヘルス不調者の対応類型表」は、これまでにない視点をもった実践ツールである。職場での対応を7つの類型に分類して、各類型の特徴を明らかにした。主治医からの情報が得られない場合に職場で類型の当てはめを行うための手順も開発した。さらに、「対応類型表」の活用にあたっての留意点をまとめ、同表の短縮版も作成した。近年若年労働者に多くみられるメンタルヘルス不調例に特化した詳細な検討も行い、それに基づく対応類型表も開発した。2)職場におけるいわゆる「新型うつ」、双極性障害、自閉症スペクトラムを有する労働者の適切な対応法について、要点および留意点をまとめた。アルコール依存症については、早期発見・早期対応の重要性を明らかにした。3)職場の中で、専門医の紹介にとどまらず、産業保健スタッフが手がけるべき活動とその重要性を明らかにした。また、主治医との連携、職場関係者の関わりなどにおける課題も整理された。4)職場復帰およびその後の職場再適応の支援において、適性検査を有効活用し、その詳細な結果分析を踏まえて配置転換を行うことの有用性が確認された。繰り返し休業例の特徴、支援のあり方も整理された。5)睡眠障害に関して、職場で対象とすべき種類、スクリーニングのあり方を含む標準的な教育プログラムを作成した。双極性障害に関しては、一般的な健康教育にも活用できる教育の留意点をまとめた。
結論
メンタルヘルス不調者の対応アルゴリズム、対応類型表をはじめとする、職場においてメンタルヘルス不調者への対応およびその職場再適応に至るまでの支援を適切に行うための方法論、ツールなどを開発した。

公開日・更新日

公開日
2013-10-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201233001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
研究成果の一部を、日本産業衛生学会において、紹介・報告した。平成25年刊行の専門書「要説産業精神保健」(診断と治療社)で「職場におけるメンタルヘルス不調の対応の流れ図」および「メンタルヘルス不調者の対応類型表」を解説した。日本産業ストレス学会の機関誌「産業ストレス研究」23巻2号(111-118)の総説「疾病や障害の特性からみた対応類型分類と支援」において、「職場におけるメンタルヘルス不調の対応の流れ図」および「メンタルヘルス不調者の対応類型表」を取り上げ、解説した。
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
開発した「職場におけるメンタルヘルス不調の対応の流れ図」が職場におけるメンタルヘルス対策のガイドラインのひとつとしてみなされる。
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
メンタルヘルスサービス機関の情報誌で成果の一部が紹介された。平成25年度~27年度に開催された医師会等の産業医研修会でも、「職場におけるメンタルヘルス不調の対応の流れ図」および「メンタルヘルス不調者の対応類型表」を紹介・解説した。これらは、平成27年度から開始された労災疾病臨床研究事業においても基礎資料として用いられ、その最終成果物「事例性に着目したメンタルヘルス不調者の対応・支援ガイドライン」にも関連づけられる予定である。産業医科大学精神保健学研究室のHPにも、平成28年7月までに掲載する。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
「要説産業精神保健(診断と治療社,2013)」、「産業ストレス研究 23, 111-118, 2014」
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
第86回日本産業衛生学会(産業精神衛生研究会)で、「職場におけるメンタルヘルス不調の対応の流れ図」および「メンタルヘルス不調者の対応類型表」を紹介・報告した。
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
9件
メンタルヘルスサービス機関の情報誌で紹介。福岡産業保健推進センターの研修会で紹介。東京都精神科診療所協会の研修会で紹介。その他、医師会主催の産業医研修会で紹介。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
2017-06-08

収支報告書

文献番号
201233001Z