被災地の再生を考慮した在宅医療の構築に関する研究

文献情報

文献番号
201232064A
報告書区分
総括
研究課題名
被災地の再生を考慮した在宅医療の構築に関する研究
課題番号
H24-医療-指定(復興)-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大島 伸一(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 鳥羽 研二(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 鈴木 隆雄(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 楽木 宏実(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 荒井 秀典(京都大学大学院 医学研究科)
  • 横手 幸太郎(千葉大学大学院 医学研究院)
  • 葛谷 雅文(名古屋大学大学院 医学系研究科)
  • 秋下 雅弘(東京大学医学部附属病院)
  • 神崎 恒一(杏林大学 医学部)
  • 堀江 重郎(帝京大学 医学部)
  • 橋本 正良(神戸大学大学院 医学研究科)
  • 服部 文子(広島大学大学院 医歯薬保健学研究院)
  • 園原 和樹(桔梗在宅往診クリニック)
  • 三浦 久幸(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 冲永 壯治 (東北大学病院)
  • 菊地 和則(東京都健康長寿医療センター)
  • 三澤 仁平(立教大学 社会学部)
  • 近藤 尚己(東京大学大学院 医学系研究科)
  • 山崎 幸子(福島県立医科大学 医学部)
  • 森田 明美(甲子園大学 栄養学部)
  • 粟田 主一(東京都健康長寿医療センター・研究所)
  • 辻 哲夫(東京大学高齢社会総合研究機構)
  • 百瀬 由美子(愛知県立大学 看護学部)
  • 大河内 二郎(介護老人保健施設竜間之郷)
  • 飯島 勝矢(東京大学高齢社会総合研究機構)
  • 後藤 百万(名古屋大学大学院 医学系研究科)
  • 武林 亨(慶応義塾大学 医学部)
  • 大川 弥生(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 寺田 尚弘(釜石ファミリークリニック)
  • 川島 孝一郎(仙台往診クリニック)
  • 武藤 真祐(医療法人社団鉄祐会祐ホームクリニック)
  • 永井 康徳(医療法人ゆうの森)
  • 大島 浩子(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 太田 秀樹(医療法人アスムス)
  • 和田 忠志(医療法人財団千葉健愛会あおぞら診療所)
  • 片山 壽(片山医院)
  • 遠藤 英俊(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 三上 裕司(日本医師会)
  • 武久 洋三(日本慢性期医療協会)
  • 川越 正平(医療法人財団千葉健愛会あおぞら診療所)
  • その他(当研究班の分担者は49名。その他の分担者については研究報告書を参照。)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
95,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
被災地の地域医療の困難性を抽出し、今後の被災地域における医療計画への参考資料を提供し、本邦全体の在宅医療の発展の可能性を探ることを主目的とする。  
1.我が国は、平均寿命が延伸し、大部分の人が長寿ののちに死に至るという状況を迎え、治す医療から治し支える医療にシフトしていくことが急がれる
2.すなわち、「治し、生活を支える医療により、長寿と生活の質両面での効果の最大化を目指す」在宅医療が求められている
3.我が国の在宅医療の需要については、患者側からのニーズが潜在的に大きいにもかかわらず、その伸びは停滞している。全国的に在宅医療を促進するためには、欠点部分を効率良く補うため、革新的研究を行う
研究方法
# 被災地の在宅医療、地域医療
被災3県の在宅医療ケアの利用、暮らしのWeb調査
仮設住宅健康調査
被災自治体住民調査(石巻、陸前高田)
被災地の医療支援(手配、事例検討)
# 在宅医療そのものの課題の検討
在宅医療のQOLに関して新しい指標を開発
在宅医療システムの課題を抽出(千葉医療圏、大阪医療圏、東京日野市、広島過疎地域)
大学病院の在宅医療への直接関与の試み
在宅で課題となる老年症候群への対応(排尿障害、難聴、視力障害)
在宅医学教育の仮題抽出(国際比較研究)
# 在宅利用の今後についての集学的議論
# 在宅医療の系統的知識、実践技術の実用的均てん化のテキスト作成
結果と考察
# 被災地研究
仮設住宅・みなし仮設等に居住する高齢者が支援を必要とする理由として、「身体機能の低下」、「認知症等精神疾患」、「閉じこもり」の3つが主因
Web調査で、8割以上の対象者が今後の生活に不安。1割の健康不安者で往診や訪問診療などの在宅医療を経験したことのある対象者は1.8%のみ。
仮設住宅での閉じこもりは、13.7%に認められ、平常時の地域高齢者の割合に比して高い傾向
在宅医療を継続し支えてゆく病院機能の重要性が示された。サービス情報を統合する被災地支援の多職種を統合するコーディネーターが必要
# 在宅医療そのものの課題
在宅医療をうける高齢者のQOLを評価・測定するためのアセスメントツールを開発
病院の在宅医療支援システムに登録した高齢者の追跡調査の結果から、登録後3年間在宅療養を継続できた高齢者は18%
千葉市医療圏:急変のリスクを伴う基礎疾患を有し、医療の必要性が高い患者は、在宅退院がより困難
大阪医療圏:実際85%の病院が在宅からの「レスパイト入院」を受け入れており、制度に実需が先行している現状が初めて明らかになった
日野市:肺炎、骨折、認知症による介護困難が多くを占めていた
広島過疎地:訪問看護・診療を実際に利用したり、内容を知っている人は全体の51.7%にとどまる。自宅での療養を希望する人のうち、46%は実現可能と答えた。
# テキスト作成
在宅医療看護テキストが完成し、班員の査読を終えて、このテキストの実地研修を95名の看護師に施行し、生徒による研修評価、テキスト評価を行った。
在宅医療のノウハウの可視化のために「はじめよう!在宅医療 今、医療の場は地域へ」DVD全3巻を完成。

被災地の在宅医療の実態は、超高齢社会の都市部の近未来でもある。医療福祉の不足、制度の硬直化と連携不足、コーディネータ不在など、在宅医療推進への貴重な調査となった。在宅医療のあり方について、医師会と行政が在宅医療を理解し地域包括ケアに位置付をしたうえで、在宅医療連携拠点となる機関(例 中小病院、診療所等)との連携・バックアップを行うこと、またその際、かかりつけ医が在宅医療に参入したくなるような在宅医療、医師を含めた多職種連携カンファランス等を含めた研修が必須であることが確認された。
在宅医療の推進のためには多職種の協働体制の構築と質の担保が必須であり、在宅医療を受けている患者、家族の満足度、不満点の把握などについてのモニター体制の構築、在宅医療に関わる機関の能力判定や質の評価を行う指標の開発など、未解決の課題について引き続き研究を持続発展する必要がある。
結論
本研究の利用と今後の展開
DVDは在宅医療拠点や地方自治体に配布して、均てん化に資する。
テキストは、引き続き在宅医療看護研修で改善利用し、均てん化に利用する。
研究から得られた知識は、在宅医療推進会議を通じて、国へ提言する。

公開日・更新日

公開日
2013-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201232064C

収支報告書

文献番号
201232064Z