東日本大震災の被災地における地域精神保健医療福祉システムの再構築に資する中長期支援に関する研究

文献情報

文献番号
201232062A
報告書区分
総括
研究課題名
東日本大震災の被災地における地域精神保健医療福祉システムの再構築に資する中長期支援に関する研究
課題番号
H24-医療-指定(復興)-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
樋口 輝彦(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤順一郎(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所社会復帰研究部)
  • 吉田光爾(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所社会復帰研究部)
  • 佐藤さやか(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所社会復帰研究部)
  • 池淵恵美(帝京大学医学部)
  • 西尾雅明(東北福祉大学総合福祉学部)
  • 田島良昭(社会福祉法人南高愛隣会(コロニー雲仙))
  • 大野 裕 (独立行政法人国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター)
  • 三品桂子(花園大学社会福祉学部)
  • 佐竹直子(独立行政法人国立国際医療研究センター国府台病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
38,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、東日本大震災からの復興を支えるための精神保健医療福祉分野における支援者支援、当事者・家族支援の一環として実施された。被災地における地域精神医療に関する臨床チームおよび支援者に対し、各地域のニーズにもとづいたコンサルティングや研修活動等を行い、1)被災地域における精神保健医療福祉システムの再構築をはかること、2)ケースマネジメントおよびアウトリーチ活動を発展させることを本研究の目的とした。
研究方法
被災地の地域精神保健医療福祉のシステムづくりに先行して取り組みを始めている地域や臨床チームを対象として計7地区(仙台市宮城野区、女川町、石巻地区、福島県全域、相馬市、宮古市、盛岡市)を選定し、各地区に支援のコンサルティング担当者をたて、支援活動を実施した。
各地区における支援活動の前後において、現地支援者とコンサルティング担当者、調査担当者を含めたフォーカスグループによるインタビュー(各サイトにおいて本年度計2回実施)を行った。各地区のコンサルティング担当者は、各地区のニーズにもとづいた支援計画をたて、コンサルティング活動や研修活動等の継続的・定期的な支援を実施し、年度末時点において、支援活動による成果と改善点についての共有を行った。
フォーカスグループ・インタビューにおいて収集した各地区の質的データは、研究機関の研究者により分析を行い、被災地に共通する中長期的支援におけるニーズや外部支援者による支援者支援における課題を整理した。
加えて、インタビューにおいて抽出されたニーズにもとづき、本研究班全体の活動として、外部支援者による支援者支援にかんする検討会や現地支援者の交流会(ワールド・カフェ方式により実施)を設定し、本研究の協力機関である被災地同士のネットワークづくりに向けた活動も実施した。
結果と考察
本年度の研究活動を通じ、各地区のニーズや地域性に応じた多様なコンサルティング・研修活動が実施され、活動による成果や意義・課題が記述された。継続的・定期的なコンサルテーションやスーパーバイズ、各地域のニーズに応じた研修会・交流会の実施は、機関や地域内外のネットワークづくりや現地支援者のケースマネジメントやアウトリーチ支援技術の向上において有用であることが示された。今後、現地支援者の研修疲れなどへの十分な配慮を行いながら、地域の具体的ニーズに応じた継続的なコンサルティング・研修活動の展開が重要であることが示唆された。
また、各地区における質的データ分析より、震災前後におけるニーズとして《要支援者の把握》、《医療上の支援》、《生活支援・保健対応》、《情報の断片化・集約化》、《事業の立て直し》、《支援者に対するコンサルテーション・サポート》、《ケアの継続性》、《ネットワーク・ネットワーク不足》の8要素が抽出され、災害直後のニーズと中長期的なニーズとが存在していることが明らかになった。中長期的な視点でのニーズに焦点化した分析から、被災地における中長期的な課題として《ネットワークづくりの重要性》、《研修の重要性》、《支援者のメンタルヘルス》、《現実的な問題》、《人材不足》、《外部支援者の受け入れ》、《活動のとりまとめ》の7要素が抽出された。今後、研究により抽出された要素をふまえ、交流会や研修会の設定等を通じた被災地同士の横のネットワークづくりが重要であることが示唆された。
本研究班全体の活動として位置づけ実施した検討会や現地支援者の交流会に関しては、各サイトからの参加者(現地支援者)より、非常に有意義であったとの声や、今後も継続した実施を期待する声も示された。今後、被災地の複数の地域を拠点として支援活動を展開している本研究班としての特徴を活かし、各地域における詳細の実態調査や研修・交流会の設定等、ネットワーク作りのためのさらなる活動の展開やより詳細な知見の蓄積が望まれる。
結論
本研究の活動を通じ、地域のニーズに応じた継続的・定期的なコンサルティング・研修活動は、被災地域における現地支援者のケースマネジメントやアウトリーチ等の支援技術の向上やメンタルヘルス、精神保健医療福祉システムの土台作りにおいて、有用なものであることが示された。本年度の活動により明らかになった知見にもとづいた支援活動の継続やニーズ調査等を通じたさらなる知見の蓄積等、被災地域における精神保健医療福祉システムの再構築に向けた中長期的な支援活動および研究活動の実施が必要である。
本研究による活動の記述は、東日本大震災被災地における今後の復興や今後起こりうる大規模災害の備えとして、あるいは、我が国における経験を他国と共有するという点においても、有用な知見を与えるものである。

公開日・更新日

公開日
2013-05-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201232062C

収支報告書

文献番号
201232062Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
50,000,000円
(2)補助金確定額
50,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,108,685円
人件費・謝金 17,455,402円
旅費 6,462,204円
その他 8,439,040円
間接経費 11,538,000円
合計 50,003,331円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-06-08
更新日
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