チーム医療の時代の看護基礎教育の内容と方法の充実に関する研究

文献情報

文献番号
201232048A
報告書区分
総括
研究課題名
チーム医療の時代の看護基礎教育の内容と方法の充実に関する研究
課題番号
H24-医療-指定-041
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小山 眞理子(学校法人日本赤十字学園日本赤十字広島看護大学 看護学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、チーム医療の時代において看護の専門性を発揮し役割を担うことができる看護師を育成するため、看護の機能と役割を明確にし、それらの役割を果たすための基盤としての新たな看護師の基礎教育カリキュラムに必要な教育内容と方法を明らかにすることを目的に2年計画で実施する。24年度は初年度として、①看護の機能と役割を演繹的、帰納的に明確にすること、②「看護教育の内容と方法に関する検討会報告書」で示された看護実践能力を育成するために看護基礎教育において必要な知識を明らかにすることを目的とした。
研究方法
1. 看護基礎教育で用いられている計81冊のテキスト及び9冊の看護理論の書籍を対象に、看護の定義、看護の機能・役割、看護の専門性、チーム医療について内容分析を行った。
2. 他職種との連携・協働している看護実践者30名に対して、インタビューガイドを用いた半構成的面接を行い、看護実践者に認識されている看護の機能(働き)とチーム医療における看護の専門性を明らかにした。
3. 文献検討の結果と面接調査の結果を照合し、両方に共通する内容やいずれかのみに見出された内容について分析した。
4. 平成23年厚生労働省「看護教育の内容と方法に関する検討会報告書」に示された「看護師に求められる実践能力と卒業時の到達目標」の73項目を達成するために、必要と思われる知識を研究メンバー全員で列挙した。さらに、「看護師になるために、これらの知識をどのように学ぶべきか」の視点から検討し、卒業時の到達目標を達成するための「看護にとって必要な知識」を文献から明らかにした。

結果と考察
1. 看護基礎教育で用いられているテキストの分析の結果、専門的能力を持ち生活を支えること、対象者を多角的な視点からアセスメントした上での健康への支援、問題解決に向けた教育・相談、対象者の権利の擁護、チーム内のコーディネートなどが看護の主な機能としてカテゴリーかされた。しかし、「看護の機能」および「チーム医療」の概念、内容や定義は統一されておらずテキストにより異なっていた。
2. 看護実践者への面接調査の結果、看護の機能(働き)は、多角的な視点から患者をアセスメントした上での援助、患者の自立した生活への支援、患者の希望・思いや苦痛を表出する支援、円滑なチーム医療、患者の精神的な支援、患者・家族の代弁者としての支援、治療の確実な実施への支援、家族への支援、人の尊厳を大切にした支援、病気の悪化の予防、患者への継続的な支援、患者のQOL向上を目指した支援の12のカテゴリーが挙げられた。看護実践者は、患者を生活者として多角的な視点からとらえ、患者自身が自立して健康やQOLの向上へと向かうように継続的に支援することも看護の機能(働き)として重要と認識していた。
3. 「看護師に求められる実践能力と卒業時の到達目標」の枠組みに明記されている到達目標の各々について必要な知識のマトリックスを作成した。看護基礎教育において学生が学ぶべき「看護にとって必要な知識」は、生活と発達段階の視点が重要であると思われた。
以上の結果より、今日の看護基礎教育で用いられているテキストに書かれている看護の機能や役割の定義やチーム医療の概念が統一されていないのは、医療現場で看護に期待される役割が多様化してきたことや業務の複雑化等によるものと推察される。また、看護の機能と膨大な量の看護実践能力の育成に必要な知識を看護基礎教育カリキュラムにどのように整理するかが今後の課題である。
結論
本研究の結果、看護には多くの機能(働き)と役割があることが明らかになった。しかし、「看護の機能」について明文化していたテキストは非常に少なかった。看護実践者が語った看護の機能(働き)は、これからの患者中心のチーム医療を実践するうえで看護者の重要な役割が多く含まれていた。 看護の機能(働き)を看護基礎教育のテキストで充実させることは今後の課題である。
文献検討と面接調査から出てきた要素は、看護の機能(働き)を意識して、チーム医療の中で看護者が専門職としての機能を発揮する要素が多く含まれている。これらの要素を吟味した上での看護基礎教育の科目構築が必要になる。
また、卒業時の到達目標ごとに、必要な知識を整理すると、重なる知識の内容も多く、それらを適切に配置していくこと、その過程で必要となる知識の過不足をなくすことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2013-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201232048Z