看護師等の高度な臨床実践能力の評価及び向上に関する研究

文献情報

文献番号
201232046A
報告書区分
総括
研究課題名
看護師等の高度な臨床実践能力の評価及び向上に関する研究
課題番号
H24-医療-指定-039
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
福井 次矢(聖路加国際病院)
研究分担者(所属機関)
  • 大滝 純司(北海道大学大学院医学研究科)
  • 中村 惠子(札幌市立大学)
  • 山内 豊明(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 高橋 久美子(日本医科大学武蔵小杉病院)
  • 洪 愛子(公益財団法人日本看護協会)
  • 高橋 理(聖ルカ・ライフサイエンス研究所)
  • 池ノ上 克(宮崎大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
7,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究目的は、看護師が患者の安全性を確保しながら特定の医行為(特定行為)を含めた高度な看護実践を行うために必要な能力とそれらの修得方法、評価方法を明示すること、及び周産期のチーム医療の中で重要な役割を担う助産師が高度な臨床実践能力を発揮する(助産師が主体となる分娩を実践する)ために、陣痛発来から分娩終了までの一連の流れの中での医師とのより良い連携体制を明らかにすること、の2点である。
研究方法
文献検索、面談による情報収集、見学による情報収集、特定看護師や指導医師・施設などを対象としたアンケート調査、企画・施行した研修プログラムの施行後評価、特定看護師を対象とした半構造的面接などを用いた。
結果と考察
1.高度な臨床実践能力の維持・向上のための研修プログラムの開発
 米国(1965年にNPプログラムが開始された)、英国(1991年開始)、豪州(1990年開始)、オランダ(1997年開始)、シンガポール(2003年開始)ではいずれも修士レベルでの教育が行われていて、米国では2004年以降、博士課程が導入されている。シミュレーション教育(ロールプレイ、模擬患者を用いる方法、シミュレーターを用いる方法)が注目されている。わが国の研修医を対象とした中心静脈カテーテル挿入や救命救急士を対象とした気管挿管などの医行為の研修・認定プログラムを参考に研修プログラムの作成に着手した。
2.看護師の高度な臨床実践能力の評価法の開発-とくにOSCEの開発と汎用性の検討-
 14名の委員から成るOSCE評価開発検討委員会を設置し、OSCEの実施方法・内容等について調査するとともに、シミュレーション教育の概念、高度な看護実践能力の明文化、OSCEで測定できる能力などのテーマについて検討を行った。
 国内の看護師特定能力養成調査試行事業の養成課程およびCNS養成課程の専任教員(特定看護師3名、CNS2名)と修了者(特定看護師5名、CNS2名)を対象としたフォーカスグループインタビューを行った結果、養成課程の現状が明らかとなった。
3.一般看護師による高度な臨床実践能力獲得のための研修方法及びその評価方法の開発
看護師特定行為・業務施行事業を実施し、大学院修士課程で2年間の教育を修了したプライマリケア領域の研修生、指導医、看護責任者を対象として行ったアンケート調査や半構造化面接により、研修は最低1年間必要であること、プライマリケア領域で活動するためには、多様な症例を通して臨床推論のトレーニングを重ねられるような実践的研修プログラムが必要なことより、総合診療部、救急部の研修が有益であることがわかった。
プライマリ領域の平成22年度特定看護師(仮称)養成調査試行事業実施課程の修了者を対象としたアンケート調査や継続研修のモデルプログラムを企画・施行し、研修を強化すべき点や臨床現場でのニーズが明らかとなった。
4.助産師主体の分娩管理における医師との連携に関する研究
 全国の院内助産所・助産師外来を設置している施設を対象としたアンケート調査、および助産師主体の分娩管理を行っている6施設において医師が介入した理由・頻度・時期・分娩の転機・新生児の予後について調査した。
助産ケアの標準化の必要性、医師との連携・協働体制の整備、助産師の確保、勤務形態や体制の整備、医師の理解・協力を得るための対策等が必要なこと、助産師主体の分娩管理上、医師との連携が必要となる理由のうちもっとも頻度が高かったのは、胎児心拍数モニタリング異常であった。したがって、助産師の胎児心拍数モニタリング判読の能力向上が必要であり、その他にも微弱陣痛・回旋異常・分娩停止等の分娩進行に関わる異常を捉え医療介入の時期を適切に判断する能力、危機的産科出血への対応をすることの必要性が明らかになった。
結論
今後、これまで行われてきた看護師特定行為・業務施行事業の養成課程の修了者や教員の経験を踏まえて、幅広くシミュレーション技法などを導入した研修プログラムを開発するとともに、高度臨床実践能力の評価にあたってOSCEなどの手法を導入する必要がある。
助産師主体の分娩管理を行ううえで、助産ケアの標準化、医師との連携・協働体制の整備、助産師の胎児心拍数モニタリング判読能力、危機的産科出血への対応能力などの必要性が明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2013-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201232046Z