在宅拠点の質の向上のための介入に資する、活動性の客観的評価に関する研究

文献情報

文献番号
201232045A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅拠点の質の向上のための介入に資する、活動性の客観的評価に関する研究
課題番号
H24-医療-指定-038
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大島 伸一(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 鳥羽 研二(独立行政法人国立長寿医療研究センター )
  • 三浦 久幸(独立行政法人国立長寿医療研究センター )
  • 大島 浩子(独立行政法人国立長寿医療研究センター )
  • 遠藤 英俊(独立行政法人国立長寿医療研究センター )
  • 辻 哲夫(東京大学 高齢社会総合研究機構)
  • 池上 直己(慶應義塾大学 医学部)
  • 武林 亨(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本事業は、在宅拠点の質の向上に資するために、在宅医療連携拠点の活動性を量的・質的に評価し、終末期ケアに関する在宅療養支援診療所における患者の意思決定促進要因・阻害要因を明らかにすることである。具体的には、下記2点を検討する。
1.在宅医療連携拠点活動における面展開に必要な要因の抽出と評価指標を検討すること
2.消化器医師と在宅療養支援診療所医師の胃瘻造設に関する実態を明らかにすること
研究方法
1.在宅医療連携拠点活動における面展開に必要な要因の抽出と評価指標の検討
(1)量的評価:拠点の活動性の評価
全105の拠点を対象に質問紙調査を実施し、事業初期と終了期の活動状況の把握と検討を行った。
(2)質的評価
1)面展開に必要な要因の検討
74拠点を対象に訪問によるヒアリング調査と、拠点からの電話相談の内容から、面的な連携構築ができる要素を検討した。また、訪問と電話による助言を行った。
2)医師を中心とした拠点活動モデルの整理
拠点が開催した研修会を基に、かかりつけ医の在宅医療参画研修会の方向性を検討した。また、4拠点の地域の医師を対象に24時間往診体制の負担軽減策を検討した。
3)域医療連携推進における地区医師会の役割に関する事例研究
地区医師会である1拠点の関係者15名を対象に、在宅医療に必要な地域連携マネジメントと医師会の役割についてインタビュー調査を実施した。
2.終末期ケアに対する対応
日本消化器内視鏡学会の専門医(以下、消化器医)2,000人と東京都内の全在宅療養支援診療所1,449ヶ所(以下、在宅医)を対象に、胃瘻造設に関する質問紙調査を実施し、全国の胃瘻のレセプトデータセットから年間胃瘻造設患者数を推定した。
結果と考察
1.在宅医療連携拠点活動における面展開に必要な要因の抽出と評価指標の検討
(1)量的評価:拠点の活動性の評価
初期より終了期の、課題抽出と解決活動、24時間対応体制の構築、効率的多職種連携、住民啓発・人材育成活動は有意に高かった。一方、市町村・医師会からの補完機能、在宅看取り、かかりつけ医の参入活動は低かった。これらの活動は、拠点単独では十分解決できないことと、医師会、行政が拠点を全面的に支えて面展開に向かう必要性が示唆された。
(2)質的評価
1)面展開に必要な要因の検討
面的な連携構築ができる要素に、下記の4つの要件を満たすことが重要と考えられた。
・地域の関係者に信頼が得られやすい組織と基盤を持つ
・地域の実情に精通し、地域ニーズに基づいた助言や支援が提供できる
・拠点事業所内で、決定機関や決定者とも対等に意見交換ができ、地域や関係者の流れに適応した柔軟な判断ができる
・中立的立場を保持することができる
行政や医師会が拠点の場合、有効な連携の橋渡し役となる可能性が高い事が示された。行政、医師会との良好な関係構築が面展開に寄与するか検討が必要である。
2)医師を中心とした拠点活動モデルの要素の整理
・かかりつけ医の在宅医療参画を促す研修会として、地域単位とする効果的・汎用的研修について、構造面、内容面の要件を明らかにした。
・一般開業医の24時間往診体制の負担軽減策として、5つの対応対策を類型化した。これら、両者の取り組みが車の両輪のように機能することが重要であろう。
3)地域医療連携推進における地区医師会の役割
医師会による「顔の見える関係」を重要視した多職種の連携の場の設定と情報共有システム(Net4U)等の活用が円滑な連携に寄与していた。
2.終末期ケアに対する対応
・消化器医と在宅医の間に、認知症の進んだ患者への胃瘻の適応の知識や態度に、有意な差はなかった。
・年間胃瘻造設患者数は約17-19万人、うち、認知症と思われる患者は約12-14万人(75%)、院外から紹介の患者数は6,5-7,5万人と推定された。
結論
1.在宅医療連携拠点活動における面展開に必要な要因の抽出と評価指標を検討
(1)量的評価:拠点の活動性の評価
事業終了期の拠点の活動性は高かった。一方、市町村・医師会からの補完機能、在宅看取り、かかりつけ医の参入の活動性は低く、医師会、行政による支援の必要性が示唆された。
(2)質的評価
1)拠点の面的連携の構築には、4つの要件を満たすことが重要である。行政や医師会の拠点は、有効な連携の橋渡し役となる可能性が高い事が示された。
2)拠点活動モデルとして、地域単位での効果的・汎用的研修会の構造的・内容的要件を示し、5つの24時間対応体制の類型例を示した。
3)医師会の拠点は顔の見える関係性をつくる場の設定を行う役割がある。
2.終末期ケアに対する対応
消化器医と在宅医に、認知症の進んだ患者への胃瘻の適応の知識や態度に違いはなかった。年間胃瘻造設患者数は約17-19万人と推定された。

公開日・更新日

公開日
2013-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201232045Z