薬剤アレルギー情報の医療標準化への取り組み

文献情報

文献番号
201232038A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤アレルギー情報の医療標準化への取り組み
課題番号
H24-医療-一般-031
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
中山 雅晴(東北大学 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 隆輔(東北大学 病院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
2,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
H23年度において標準化仕様では「薬剤・アレルギー」に該当する項目はなく、グランドデザインで「目指すべき将来の姿」に記されている「利用者に関わる情報(持病、アレルギー、急変時の対応等)が円滑・安全に伝達され、利用者の安全確保に役立てることができる」という記述に齟齬を生じていた。現在はアレルギー項目も包含されることとなったが、その取り扱い方は個々の医療機関さらには個々の医療従事者に任されている実状がある。そこで、本研究では、アレルギー情報を標準化するために必要な現状と問題点の把握を行い、将来的に電子化情報として有効活用されるために必要な仕様を提供することを目的とする。
研究方法
600床以上の病院におけるアレルギー表示の取り扱いに関してアンケートを行う。得られた回答より代表的なパターンに分け、いくつかの回答病院から詳細に話をきく。どのような形態が、直接的に医療行為へ結びつくか明らかにすることを主眼とし、実現を阻む要素を明快にする。
(倫理面への配慮)
患者や事象に関する情報が特定できないように、また本研究で取り扱われた内容により患者やその家族、医療従事者、医療機関に被害が及ばないよう厳重に対処する。
結果と考察
<結果>
アンケートは送付病院に対して回答群では、国公立大など大学系の病院の比率が有意に高かった。またペーパーレス電子カルテが3分の2を占めた。
アレルギー情報は選択式、テキスト式のいずれかまたは両方で入力し、入力はほぼ全職員というところが多かったが、実際に入力をするのは当然ながら医師・看護師が中心であった。展開すると情報が閲覧できるが一見して該当薬剤がわかるという例は稀で、視認性に課題を残した。曖昧な情報はできるだけ忠実に入力することが多いようである。該当薬剤の入力でコードから自動的に同種薬剤に対しても警告対象となることは少ない。アレルギー薬に対する抑止機能は大部分が警告のみであった。重症度に応じたアラートの変化にはほとんど対応していない。また、警告に対する承認の記録もなされていないことがほとんどである。造影剤に対するアレルギーアラートも過半数で紐づいていないため、入力時にアレルギー情報の入力を必要とする。アレルギー情報は自院のみでなく、他院や過去歴の情報が必要であるが、他院からの紹介に関しては全て情報提供がなされるわけではないようであった。
院内の取り組みとしてはアレルギー・禁忌に対する準備に取り組んでいるところが過半数を占めた。さらに、多くの施設で検討中や改良中という回答が多かった。またルール策定やその他の工夫を取り入れている施設もある。一方、警告システムが完璧であるのは不可能なので自動警告を止めた施設もあった。
<考察>
アレルギーの情報の取り扱い方についての現状がよく表れている結果となった。ルールの策定は病院内で作成しているところ、検討中のところが大部分である。一方で、難しさゆえに扱いを単純化したり、予算等補助がないと対策は困難ということもあった。アレルギー情報に関してまだまだ議論が必要であることが明らかである。社会全体の画一的な仕組みや国レベルの対応を求める声もあった。まずは本研究が少しでも統一見解を産む素地となってくれれば幸いである。
結論
アレルギー情報に関して統一的な取り扱い方は未だ存在しない。全国アンケートにより、定義や入力方法、表示や警告の方法など問題点が多数存在することが明らかとなった。来年度は引き続き、それらの問題点を一つ一つ検討していく。アレルギー情報が重要であるという認識は得られており、国への対応を求める声もある。本研究が標準化へつながるための提言ができるよう研究をすすめていく。

公開日・更新日

公開日
2013-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201232038Z