医療機関における患者個人への安全な情報提供に関する研究

文献情報

文献番号
201232037A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関における患者個人への安全な情報提供に関する研究
課題番号
H24-医療-一般-030
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
山本 隆一(東京大学 大学院情報学環)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 直樹(九州大学医学部附属病院医療情報部)
  • 田中 勝弥(東京大学医学部附属病院企画情報運営部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
11,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
診療情報の電子化は確実に進行しつつある。医療機関で問診、診察、各種検査で取得される診療情報は一般の患者が想定するよりきわめて多量である。従来は医療従事者の判断で省略・要約を行い簡潔な形式で提供することが多いが、これらの圧縮情報は医療従事者の主観を避けえず、かならずしも十分なものではないことも多い。一方で、電子カルテ自体を患者にWEB技術で公開するなど、急進的な情報開示も一部には見られる。将来は「どこでもマイ病院」構想のように行政または第三者による保管が普及する可能性はあるが、いずれにしても診療情報の主権者である患者の判断で行われなければならない。本研究の目的はこれらの問題点の克服の手段としての情報提供のあり方を求めるもので、技術的解決とともに制度的措置の可能性について提言をまとめることを目的とする。
研究方法
本研究は以下の5つのプロセスからなる。
1.現状の状況調査
ア)我が国の医療機関等における患者への情報提供に関する現状の調査および、政策的に誘導されている情報提供の現状の調査
イ)諸外国における医療機関等からの患者への情報提供の現状と問題点の調査
ウ)市民の医療情報を受領すること、および機微な情報を扱う上でのPCや携帯端末等に関する意識調査
2.上記調査で明らかになった現状と課題の分析
3.上記分析であきらかになった課題を克服するための技術的課題、制度的課題の抽出。
4.上記で抽出した課題の中で技術的課題への解決策の実証的な研究。
5.3の分析で明らかになった制度的課題に関する解決に関する試案を作成し、広く意見を募集した上で、提言を作成。
結果と考察
1に関しては研究代表者が主体となってウは、調査は終了し、ニーズと電子化医療・健康情報に関する意識が明らかになった。一定のITリテラシーを持つ国民の多くは自らの医療・健康情報を電子的に提供することを望んでおり、また、その情報の管理を行うためのPHRを何らかの規制の下に、あるいは公的基盤として整備されることを望んでいることが明らかになった。電子化情報のインターフェイスとしてはPCより、スマートフォンやタブレットなどより使いやすいデバイスを求めているが、セキュリティへの不安はあり、制度的、技術的対策を急ぐ必要があると考えられた。アは諸外国に関する文献ならびにインターネット上の情報の調査は資料収集が終わり、先進各国では一定の進展を見ていることが明らかになった。大規模医療機関の現状および医療従事者の意識調査は中島が担当し、大学病院を主体とする大規模医療機関に関しては、すでに患者等から電子的な情報提供の要求が実際にあり、対応に苦慮している状況が明らかになった。また医療情報学連合大会において、患者支援団体のCOMLの山口理事長と弁護士の木崎氏を加えてワークショップを開催し、議論を深めた。4は田中が主体となって実施し、研究代表者をはじめとして研究班全体で協力をし、タブレットなどのモバイル端末の問題点を整理することができた。本研究でも最終年度において指針等の制度的提案や技術的課題解決の実例を提示することが求められている。
結論
医療・健康情報を医療機関等から本人へ電子的に安全に提供することのニーズは明確になり、またPHRの整備の必要性をある程度明らかに出来た。モバイルデバイスの安全な運用にはまだ課題があり、その解決策の一部を提示する見込みがたった。

公開日・更新日

公開日
2013-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201232037Z