医療情報と法:医療サービス向上に向けた患者情報の利用をめぐる法的課題の研究

文献情報

文献番号
201232036A
報告書区分
総括
研究課題名
医療情報と法:医療サービス向上に向けた患者情報の利用をめぐる法的課題の研究
課題番号
H24-医療-一般-029
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
岩田 太(上智大学 法学部国際関係法学科)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤智晶(東京大学 政策ビジョン研究センター)
  • 溜箭将之(立教大学 法学部)
  • 畑中綾子(東京大学 政策ビジョン研究センター)
  • 井上悠輔(東京大学 医科学研究所・大学院新領域創成科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,今後日本で喫緊な対応が求められる医療情報の保護法制の見直し作業を見据え,医療サービスの質の向上と発展を目指した医療情報の利活用を促進するための法的論点の洗い出しを行い,そして,あるべき保護法制策定に必須の,諸外国についての基本的資料の提供を目指す.そのため,医療情報の保護と利活用をめぐって,合衆国などの諸外国における制度の全体像および最新動向を整理し,具体的な論点を明確化することを目標とする.
研究方法
本研究では,医療情報の利活用の促進を支援するための保護法制という視覚を意識しつつ,以下の2つの観点から分析を行う. 第1は,医療情報に特化したHIPAA 法プライヴァシー規則を持つ合衆国の現状および最新動向を中心としつつ,他の英米法諸国との比較も念頭に置きながら,医療情報の保護法制および実態に関する文献研究を可能な限り網羅的に検討する(平成24年度). 第2は,第1 の文献調査などから明らかになった疑問点を解消するべく実態について実地調査を行い,運用実態の正確な把握に努める(平成25年度). 以上2つの検討から,医学研究場面も十分射程に入れた,日本における医療情報の保護法制の見直しに資する諸外国の保護法制や最新の論議に関する基礎的な資料の提供を目指している.
結果と考察
研究結果: 初(平成24年)度に,医療情報に特化したHIPAA 法プライヴァシー規則を持つ合衆国の現状および最新動向を中心としつつ,他の英米法諸国との比較も念頭に置きながら,医療情報の保護法制および実態に関して主として文献研究によりながら研究を行い,第2(平成25)年度には,それらを前提に実態調査を行い,医学研究場面も十分射程に入れた,日本における医療情報の保護法制の見直しに資する諸外国の保護法制や最新の論議に関する基礎的な資料の提供を目指している.これまでの研究は順調に進んでおり,初年度の文献調査においては,合衆国およびEUにおける医療情報の利活用をめぐる体制整備に関する最新の動向については順調に研究を進めてきた.今後は運用場面での論点などを中心に国内外の協力者からと連携をより深めなるべくそれらの諸国についても調査を進めたい.成果の活用に関して,「社会保障分野サブワーキンググループ及び医療機関等における個人情報保護のあり方に関する検討会」および担当部局(政策統括官付情報政策担当参事官室)への情報提供を,同検討会の作業部会のメンバーである佐藤智晶助教(研究分担者)などを通じて継続的に行ってきた.なお同記検討会は,医療情報の利活用をめぐる報告書(「医療等分野における情報の利活用と保護のための環境整備のあり方に関する報告書」)をまとめている.
考察: いうまでもなく医療は,過去の患者の治療の結果の積み重ねによって普段の見直しが行われ,それが現在の患者の医療の改善に繋がるという,本来的に情報の共有が要請される分野である.そのため本研究班は,医療情報の保護を行いつつも,十分利活用にもつなげることが重要であるという前提から,米国および欧州などでの医療情報の利活用をめぐる最新の議論の吸収に勉めてきた.本年度の研究の結果,欧米とも医療情報の利用を進めるために必要なプライヴァシー保護についてより精緻な議論を進めていることが明らかになった.例えば,これまで医療情報個別法を持つ米国と,それを持たない欧州は決定的に異なるとされてきたが,医療情報の定義,匿名化方法,違反行為の通知・公表,制裁の拡大は,欧米で共に導入なされようとしており,欧州における欧州の法改正が実現すれば,実質的には両者の法体制のあり方は大きく近づく形となり,従来の差異は形式的なものとみることも可能となるような状況である.日本においても医療情報の利活用促進に向けた体制整備が進められており,このような欧米の動向は大いに参考になるものと考えられる.
結論
「考察」で見たように,本研究の本年度の成果からも医療情報の利活用をめぐる欧米の最新動向が一定程度明らかになった.次年度においては,最新動向ゆえまだまだ未確定の部分もあるため,継続的にフォローアップを行うとともに,医療情報の利活用のために求められる体制整備,また実態運用での論点の理解の深化を目指して研究を進め,近い将来に予定される医療情報の利活用の体制整備の政策実現の際に必要とされる基礎資料の充実を目指す.H25年度は,合衆国およびEUに関するH24年の研究過程で浮かんできた疑問点など現地の専門家などに確認するなど実態的な状況の正確な把握を行うとともに,医療情報の利活用に対する法整備のあり方に関する提言も含めて総合的分析を進める予定である.

公開日・更新日

公開日
2013-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201232036Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,850,000円
(2)補助金確定額
5,850,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,714,576円
人件費・謝金 707,100円
旅費 1,772,962円
その他 308,540円
間接経費 1,350,000円
合計 5,853,178円

備考

備考
【収支差額】
自己負担 3,178円

公開日・更新日

公開日
2017-05-25
更新日
-