ストレス関連疾患に対する統合医療の有用性と科学的根拠の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201232032A
報告書区分
総括
研究課題名
ストレス関連疾患に対する統合医療の有用性と科学的根拠の確立に関する研究
課題番号
H24-医療-一般-025
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
岡 孝和(九州大学大学院 医学研究院心身医学)
研究分担者(所属機関)
  • 金光 芳郎(福岡歯科大学 総合医学講座、心療内科学分野)
  • 守口 善也(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神生理研究部)
  • 松下 智子(九州大学健康科学センター 臨床心理学・学生相談・心理健康学)
  • 有村 達之(九州ルーテル学院大学・人文学部・心理臨床学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
9,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
統合医療とは、現代医学と相補・代替医療(CAM)を統合した医療のことである。統合医療の必要性は叫ばれながらも、そのエビデンスは必ずしも多くはない。その一方で、ヨーガなどのCAMは、心身両面からの健康増進法として、主に健康な人の間で普及し実践されている。しかしながらCAM指導者が必ずしも十分な医学的知識を持ち合わせていないことに由来する弊害も指摘されている。したがって統合医療に関するエビデンス、安全性、経済性を検討する研究は急務である。
 本研究では、ストレス関連疾患に対する統合医療(現代医学的治療とヨーガ療法、自律訓練法といったCAM心身相関療法を統合した治療)の有用性、安全性、経済性を検討することを目的とする。
研究方法
研究実施施設での倫理委員会で承認を得た後、平成24年度から2年間で以下の4つの研究を行う。
 【研究1:臨床研究】①ストレス関連疾患に対する現代医学療法と自律訓練法の併用療法、②ストレス関連疾患の一つである慢性疲労症候群に対する現代医学療法とヨーガ療法併用療法の安全性、治癒促進効果、医療費削減効果について、それぞれ福岡歯科大、九州大学病院で検討する。
 【研究2:基礎(脳機能画像)研究】自律訓練法、ヨーガの奏効機序を明らかにするために、平成24年度は、自律訓練法、ヨーガなどの心身相関療法で重視される身体感覚を意識する意義について、両手に注意を向けることによって生じる脳活動の変化を調べることによって検討する。また、東洋の瞑想によって得られる境地の一つである「いろいろな感情がわきあがっても、それにとらわれることなく、自らの思考や感情に対して一定の距離をおいて観察(メタ認知)」できる時の脳の働きについて知るために、被験者に対して不快情動刺激を加え、わきあがってくる感情を抑制する時と、感情がわき上がっている自分をはなれて客観的に観察している時(メタ認知)の脳活動の違いを検討する。
 【研究3:調査研究】ヨーガによってどのような有害事象が、どのような頻度で生じるかという研究は皆無である。そこでヨーガ指導者、およびヨーガ教室受講者を対象に、ヨーガによって生じる有害事象の内容、重症度、頻度について調べる。
 【研究4:文献研究】自律訓練法、ヨーガの安全性、有用性、経済性に関して、国内外の文献を調べてまとめる。
結果と考察
【研究1】①自律訓練に関する研究は福岡歯科大学倫理委員会で承認を得、現在進行中である。②ヨーガに関する研究はパイロットスタディーを終えた。現代医学的な治療だけでは十分な改善が得られない慢性疲労症候群に対して、現代医学療法とアイソメトリックヨーガを併用する統合医療による治療は安全で、有用である(疲労感を改善する)ことが示された。
【研究2】身体に対して注意を向けるとき、不快な情動刺激に対してメタ認知的な対処を行なう時、前部島皮質が重要な役割を果たすことが示された。
【研究3】ヨーガ療法士約300名、ヨーガ教室受講者約3000名に対する調査をすでに終了した。現在、結果を解析中である。
【研究4】PubMedに収載されているヨーガに関する論文を、用いられているヨーガの種類、対象疾患、有用性、安全性に関する報告をまとめた。医学的有用性に関してはランダム化比較試験の結果を中心にまとめた。ヨーガは心理療法と併用されることもあるため、ヨーガがどのように心理療法と併用されているかに関して、psychINFOおよびPubMedに収載されている報告をまとめた。
本研究は2年計画の1年目であるが、すでに優れた成果をあげている。まず慢性疲労症候群に対する現代医学療法とヨーガを併用した統合医療の有用性に関するランダム化比較試験は世界で初めての研究である。東洋で行なわれてきたヨーガや瞑想で重視する、「身体への注意、意識化」、「離れて自分を観察する(メタ認知)」が島皮質の活性化と関連することを見いだしたことも意義深い。調査研究では、ヨーガによる有害事象の実態調査を、指導者と受講者の両方に行なった。このような実態調査は、これまで全く行なわれてこなかった。今回、3000人と言う人数で調査できたことは、統合医療に関する厚生労働行政を行なうにあたって、重要な資料となるだろう。
結論
 現在、ストレス関連疾患患者に対する統合医療の安全性、有用性、経済性に関して4つの観点から研究をすすめている。平成24年度の研究成果をもとに、平成25年度は現代医学的治療と自律訓練法、ヨーガ療法の併用療法を例とした「統合医療ガイドライン」と「利用マニュアル」を作成し、また統合医療に関する政策に対しても提言をまとめる予定である。

公開日・更新日

公開日
2013-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201232032Z