医療事故に対する医療機関内における包括的対応マネジメントモデルに関する研究

文献情報

文献番号
201232017A
報告書区分
総括
研究課題名
医療事故に対する医療機関内における包括的対応マネジメントモデルに関する研究
課題番号
H24-医療-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 英夫(名古屋大学 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 相馬 孝博(公益財団法人日本心臓血圧研究振興会 附属 榊原記念病院)
  • 兼児 敏浩(三重大学医学部附属病院)
  • 鳥谷部真一(新潟大学危機管理本部危機管理室)
  • 藤澤 由和(静岡県立大学経営情報学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,273,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、個別の医療機関が紛争に対して、包括的に対応しうるための具体的な方策や資源として、医療機関内において事故調査を実施するための標準化された調査プロトコル、それらによる結果を踏まえての医療事故調査委員会の実施および報告書作成のためのマニュアル、事故発生時から報告書の引渡しまでにわたって患者およびその家族に対する一貫した情報開示モデルなどからなる、医療事故に対する医療機関内における「事故対応」およびそれに関わる「情報開示」のあり方からなる、包括的対応マネジメントモデルの提示を本研究の目的とした。
研究方法
 本研究は、平成24から25年度の2年間において医療機関内における包括的対応マネジメントモデルを提示するために、「医療機関内において事故調査を実施するための標準化された調査プロトコル」「それらによる結果を踏まえての医療事故調査委員会の実施および報告書作成マニュアル」「事故発生時から報告書の引渡しまでにわたって患者およびその家族に対する一貫した情報開示モデル」の三点に関する検討を行い、それに基づいた具体的な成果構築の初年度相当部分を実施した。
 「医療機関内において事故調査を実施するための標準化された調査プロトコル」に関しては、標準化事故調査プロトコルの実際の適応に際しての論点の洗い出しとそれに基づく調整作業を実施し、「医療事故調査委員会の実施および報告書作成マニュアル」に関しては、院内事故調査委員会に関わる諸要素の適応範囲の確定とその論点の検証を実施した。また「事故発生時から報告書の引渡しまでにわたって患者およびその家族に対する一貫した情報開示モデル」に関しては、関係者への事故情報開示に関わる具体的なモデル構築とその具体的な適応に関する理論的な検討を実施した。さらにこれら三つの課題の統合的な課題である、医療機関内における包括的なマネジメントモデルに関しても、それを支えるガバナンスのあり方に関する観点から、検討を行った。
結果と考察
 初年度平成24年度においては、医療機関内において事故調査を実施するための標準化された調査プロトコルの確立に向けた作業として、プロトコルを具体的な事象に適応する際の課題と論点の検討、先行する研究を踏まえた医療事故調査委員会の諸要素とその適応範囲、さらには事故情報の開示に関しては先行する実践に関する理論的な検証を研究班および研究協力者らを含めた体制で実施した。これまでの成果として、想定している事故調査プロトコルは基本的に有効であるが、その適応範囲の明確化が必要であることが明らかとされた。最終的にこうしたプロトコルに対してどの程度までコンプライアンスを求め、どの程度までその医療機関独自の状況に合わせた柔軟性を認めるかという点が非常に大きな課題とされた。
 事故調査委員会の実施および報告書作成のためのマニュアルに関する検討においては、事故調査委員会の諸要素が検討されたのであるが、これらをどの水準において一般化すべきか、という点に関しては一義的な形での結論には至っていない状況にある。従って、その諸要素の適応範囲に関しては、本研究班内外において実施されている既存の事故調査委員会の現状と論点を明確化する中で、医療事故調査委員会を医療機関内部で実施する際の資源的制約という課題の検討が必要となるとされた。
 事故情報の開示モデルに関しては、先行する諸外国における理論的および実証的な論点の検証などを中心に行ったのであるが、我が国の医療機関における事故情報開示の適応における課題が一定程度明らかにされた。また当該モデルに関しては、これまで諸外国における試行的試みから、複数の論点が示されているが、我が国においてもこれらの論点が重要となることは当然であるが、それと同時に我が国の医療機関が置かれている状況をも加味する必要があることが重要であるとされた。
結論
 医療事故調査委員会を医療機関内部で実施する際の資源的制約という課題を解消するための方策としては、本研究班が提示することとなる事故調査委員会および事故報告書のためのマニュアルが有効なものであるとの結論に至った。
 さらに、医療機関内部の医療事故調査委員会などの当該委員会の実務担当者を支援する体制の必要性、および外部関係機関との調整に関しても視野に入れた支援体制の必要性とその具体的な方策が明確化された。
 ただし、こうした個別の事故対策は、それらがバラバラな形で実施された場合、その成果はかなり限定的なものとならざるをえず、こうした個々の対策を束ねる形で、包括的なマネジメントの体制の構築が求められる。さらにこうしたマネジメント体制の構築には、我が国の医療機関における新たなガバナンスの構築も必要であることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2013-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201232017Z